第368回 「報道の自由度、日本の転落止まらず」

  2016年4月21日午前に、「国境なき記者団」「ベンジャマン・イスマイール」「デービッド・ケイ」「報道の自由度」などの文字を「YOMIURI ONLINE」の「記事検索」に打ち込んでみましたが、すべてが「(たとえば、報道の自由度に)一致する情報は見つかりませんでした」といった結果になってしまいました。
   つまり、上のような字句を用いてしか書けないニュースを、“自民党安倍政権の応援紙”である「読売新聞」はまったく報じなかったということなのでしょう。
  「報道の自由」ということに関する「読売新聞」のどこまでも否定的な姿勢が「一致する情報は見つかりませんでした」に、見えすぎるほど見えていますよね。
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  [2016年5月4日 追加]
  「天声人語」 朝日新聞 【香港と日本の報道界】2016年5月4日05時00分(http://digital.asahi.com/articles/DA3S12341424.html?rm=150
  <ひと昔前まで、香港の新聞や雑誌は「報道の自由」の旗を高く掲げ、中国共産党や財界の不正に果敢に切り込んだ。だが近年は様子が違う。本土の影響が強まり、親中派の意向が経営陣の顔ぶれや報道内容に色濃く表れるようになった▼先月末、ある香港紙の編集幹部がいきなり解雇された。租税回避の実態をあばいたパナマ文書をログイン前の続き詳報した当日のことだ。あの文書には党中央が神経をとがらせている▼ラジオでは、鋭い政府批判で人気の司会者が降板させられた。「香港政府が局に圧力をかけた。放送免許更新という魔の呪文に局がひざまずいた」と司会者は明かした。親中派企業は占拠デモの参加者ら民主派に近いメディアへの広告を急減させた▼驚いたことに先日発表された国際調査では、そんな香港よりも、日本の方が「報道の自由」度が低いと判定された> 
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  【報道の自由度、日本の転落止まらず 海外から厳しい指摘】 朝日新聞 青田秀樹=パリ、乗京真知 2016年4月20日20時17分 (http://www.asahi.com/articles/ASJ4N5RZHJ4NUHBI01V.html
  <日本の「報道の自由」が後退しているとの指摘が海外から相次いでいる。国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)が20日に発表したランキングでは、日本は前年より順位が11下がって72位。国連の専門家や海外メディアからも懸念の声が出ている>
  <国境なき記者団は、180カ国・地域を対象に、各国の記者や専門家へのアンケートも踏まえてランキングをつくっている。日本は2010年には11位だったが、年々順位を下げ、14年は59位、15年は61位だった。今年の報告書では、「東洋の民主主義が後退している」としたうえで日本に言及した>
  <特定秘密保護法について、「定義があいまいな『国家機密』が、厳しい法律で守られている」とし、記者が処罰の対象になりかねないという恐れが、「メディアをまひさせている」(アジア太平洋地区担当のベンジャマン・イスマイール氏)と指摘した。その結果、調査報道に二の足を踏むことや、記事の一部削除や掲載・放映を見合わせる自主規制に「多くのメディアが陥っている」と報告書は断じた。「とりわけ(安倍晋三)首相に対して」自主規制が働いているとした
  <日本の報道をめぐっては、表現の自由」に関する国連特別報告者のデービッド・ケイ氏(米カリフォルニア大アーバイン校教授)が調査のため来日。19日の記者会見で「報道の独立性が重大な脅威に直面している」と指摘した
  <海外メディアも、米ワシントン・ポスト紙が先月の「悪いニュースを抑え込む」と題した社説で、政府のメディアへの圧力に懸念を表明。英誌エコノミストも「報道番組から政権批判が消される」と題した記事で、日本のニュース番組のキャスターが相次いで交代したことを紹介した。(青田秀樹=パリ、乗京真知)>
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  【報道の自由度、日本は72位 国際NGO「問題がある」】 朝日新聞 パリ=青田秀樹 2016年4月20日13時03分(http://www.asahi.com/articles/ASJ4N0SHDJ4MUHBI02M.html
  ■報道の自由度ランキング (カッコ内は前年順位)
  フィンランド(1) :オランダ(4) ノルウェー(2) デンマーク(3) ニュージーランド(6) 
  16:ドイツ(12) 18:カナダ(8) 38:英国(34) 41:米国(49) 45:フランス(38) 72:日本(61) 77:イタリア(73) 148:ロシア(152) 176:中国(176) 177:シリア(177) 178トルクメニスタン(178) 179北朝鮮(179) 180エリトリア(180)
  数年のあいだに、自民党安倍政権による日本の中国化、北朝鮮化がここまで露骨に進んだということです
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  【「表現の自由」国連報告者、高市総務相との面会かなわず】 朝日新聞 編集委員・北野隆一 2016年4月20日05時02分 (http://www.asahi.com/articles/ASJ4M4GBTJ4MUTIL02Q.html
  <放送法をめぐっては「政府に放送局を直接規制する権限を与えた放送法のうち(政治的公平性などを定めた)第4条を廃止し、政府はメディア規制から手を引くべきだ」と提言。高市早苗総務相が番組の公平性を理由に放送局の「電波停止」に言及した発言をめぐって、滞在中に高市氏との面会を希望したが「国会会期中との理由で会えなかった」と明かした>
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  【「特定秘密保護法は報道に重大な脅威」 国連報告者が初調査】 東京新聞 2016年4月20日 朝刊 (http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016042002000111.html
  <=国連の特別報告者= 特定の国の人権状況やテーマ別の人権状況について事実調査・監視を行う。国連人権理事会が任命する。いかなる政府、組織からも独立した資格で調査に当たる。金銭的報酬はない。北朝鮮やイラン、ミャンマーの人権問題、子どもの人身売買やポルノ問題、集会や結社の自由に関する人権状況などの報告者がいる。デービッド・ケイ氏は国際人権法や国際人道法の専門家>
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  ◆国連報告者メディア調査 詳報
  <国連のデービッド・ケイ特別報告者の暫定調査結果の詳細は以下の通り>
  <【メディアの独立】 放送法三条は、放送メディアの独立を強調している。だが、私の会ったジャーナリストの多くは、政府の強い圧力を感じていた>
  <政治的に公平であることなど、放送法四条の原則は適正なものだ。しかし、何が公平であるかについて、いかなる政府も判断するべきではないと信じる>
  <政府の考え方は、対照的だ。総務相は、放送法四条違反と判断すれば、放送業務の停止を命じる可能性もあると述べた。政府は脅しではないと言うが、メディア規制の脅しと受け止められている
  <ほかにも、自民党は二〇一四年十一月、選挙中の中立、公平な報道を求める文書を放送局に送った。一五年二月には菅義偉(よしひで)官房長官がオフレコ会合で、あるテレビ番組が放送法に反していると繰り返し批判した>
  <政府は放送法四条を廃止し、メディア規制の業務から手を引くことを勧める
  <日本の記者が、独立した職業的な組織を持っていれば政府の影響力に抵抗できるが、そうはならない。記者クラブ」と呼ばれるシステムは、アクセスと排他性を重んじる。規制側の政府と、規制される側のメディア幹部が会食し、密接な関係を築いている
  <こうした懸念に加え、見落とされがちなのが、表現の自由を保障する)憲法二一条について、自民党が「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」との憲法改正草案を出していること。これは国連の「市民的及び政治的権力に関する国際規約」一九条に矛盾し、表現の自由への不安を示唆する。メディアの人たちは、これが自分たちに向けられているものと思っている>
  <【歴史教育と報道の妨害】 慰安婦をめぐる最初の問題は、元慰安婦にインタビューした最初の記者の一人、植村隆氏への嫌がらせだ。勤め先の大学は、植村氏を退職させるよう求める圧力に直面し、植村氏の娘に対し命の危険をにおわすような脅迫が加えられた
  <中学校の必修科目である日本史の教科書から、慰安婦の記載が削除されつつあると聞いた。第二次世界大戦中の犯罪をどう扱うかに政府が干渉するのは、民衆の知る権利を侵害する。政府は、歴史的な出来事の解釈に介入することを慎むだけでなく、こうした深刻な犯罪を市民に伝える努力を怠るべきではない
  <【特定秘密保護法】 すべての政府は、国家の安全保障にとって致命的な情報を守りつつ、情報にアクセスする権利を保障する仕組みを提供しなくてはならない>
  <しかし、特定秘密保護法は、必要以上に情報を隠し、原子力や安全保障、災害への備えなど、市民の関心が高い分野についての知る権利を危険にさらす
  <懸念として、まず、秘密の指定基準に非常にあいまいな部分が残っている。次に、記者と情報源が罰則を受ける恐れがある。記者を処分しないことを明文化すべきで、法改正を提案する。内部告発者の保護が弱いようにも映る>
  <最後に、秘密の指定が適切だったかを判断する情報へのアクセスが保障されていない。説明責任を高めるため、同法の適用を監視する専門家を入れた独立機関の設置も必要だ>
  <【差別とヘイトスピーチ】 近年、日本は少数派に対する憎悪表現の急増に直面している。日本は差別と戦うための包括的な法整備を行っていない。ヘイトスピーチに対する最初の回答は、差別行為を禁止する法律の制定である>
  <【選挙の規制】 (略)>
  <【デジタルの権利】 インターネット上の自由の分野で、日本がいかに重要なモデルを示しているか強調したい。政府の介入度合いが極めて低いのは、表現の自由への政府のコミットメントを表している>
  <政府は盗聴に関連した法律やサイバー空間のセキュリティーの新たな取り組みを検討しているが、自由の精神や通信の安全、オンライン上の革新性が保たれることを望んでいる>
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 【市民デモを通じた表現の自由】 日本には力強く、尊敬すべき市民デモの文化がある。国会前で数万人が抗議することも知られている。それにもかかわらず、参加者の中には、必要のない規制への懸念を持つ人たちもいる。

 沖縄での市民の抗議活動について、懸念がある。過剰な力の行使や多数の逮捕があると聞いている。特に心配しているのは、抗議活動を撮影するジャーナリストへの力の行使だ。
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