憲法記念日:「苦言熟考」第278回を再掲載

2013-05-30
  【第278回 憲法改変草案 自民党の正体】
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  2013年5月11日の共同通信香港発の記事にこういうものがありました。
  <11日付の香港各紙によると、中国当局はこのほど、北京や上海の大学に対し、「報道の自由」や「公民権」、民主や人権の尊重を意味する「普遍的価値」など7項目について授業で教えてはならないとする指示を出した><中国では、貧富の格差拡大や環境汚染などに対し若者を中心に不満が高まっており、当局は思想や言論の統制を強化する狙いとみられる><ほかに禁じられたのは「公民社会」「共産党の歴史的誤り」「司法の独立」>
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  自民党憲法(改変)草案を発表しました。

・・・第一章 天皇・・・・・

  =第3条(国旗及び国歌)=
  【現行憲法】(なし)
  【自民草案】1 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。 2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。

・・・第2章 【現行憲法】戦争の放棄  
  【自民草案】安全保障・・・・・
  =第9条の2=(国防軍
  【現行憲法】(なし)
  【自民草案】1 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。 2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。 3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。 4 前2項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。 5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。
  =第9条の3(領土等の保全等)=
  【現行憲法】(なし)
  【自民草案】国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。

・・・第3章 国民の権利及び義務・・・・・

  =第12条(国民の責務)=
  【現行憲法】この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
  【自民草案】この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。国民は、これを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。
  =第13条(個人の尊重等)=
  【現行憲法】すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
  【自民草案】全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。
  =第20条=
 【現行憲法】3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
 【自民草案】3 国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。
  =第21条=
  【現行憲法】1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

 【自民草案】1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。 2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
  =第25条の3(在外国民の保護)=
  【現行憲法】(なし)
  【自民草案】国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。
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  森永卓郎という経済アナリストが「自民党憲法改正案の本質」(http://www.magazine9.jp/morinaga/120523/)というエッセイの中に書いています。
  <結局、秩序優先、公益優先で、権力者の意向次第で、国民の基本的人権は制約されるというファシズム、極右の世界観が、この憲法草案の基本理念なのだ>
  <戦争で人命が失われることは、悲惨なことだ、しかし、それ以前に、集会、結社、言論、出版などの自由が失われることは、事実上命を失うに等しい苦痛を国民に与える><ファシズムの時代に戻るのか否か、日本人はいま大きな分岐点に立たされているのだ>
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  どうです?
  現行憲法自民党憲法改変草案を比べて、あなたはどう感じますか?
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  冒頭の記事にある中国政府の「指示」を読み直してください。
  要するに、この憲法改変草案を通して自民党が実現したがっているのは、基本的人権を大きく制限する軍事強権国家、つまりは「日本の中国化」だということです。
  自由が厳しく制限された、息苦しい、中国(あるいは北朝鮮)のような国に日本をしたいと、あなたは考えますか?
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