《追加 2017年7月22日》【「日本は既に移民国家」=受け入れ拡大、人口対策のカギに−みずほ総研】時事ドットコムニュース (http://www.jiji.com/jc/article?k=2017072100845&g=eco)
<みずほ総合研究所は21日、日本の人口動態に関し、予想を超える外国人流入によって「既に移民国家と言っていい」状況にあり、「移民受け入れ拡大が長期的な人口対策の鍵である」とするリポートをまとめた>
* *
日本の人口減少対策はこの6年間にも、小手先の“対策案”が次々に提出されてきただけで、抜本的な施策はまったく実施されてきていません。
安倍・自民党政府のアベノミクスとやらが、その思惑通りに機能しない最大の理由は、日本がすでに人口減少社会=経済縮小社会に突入しているという事実に頬被りして、その政策が進められているところにあるはずです。
<2017年4月11日に追加>
朝日新聞 社説 「新人口推計 政策にどう生かすか」(http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_gnavi)
日本経済新聞 社説 「人口推計に向き合い一層の少子化対策を」(http://www.nikkei.com/article/DGXKZO15147370R10C17A4EA1000/)
*
そこで「苦言熟考」は 【第143回 “少子化”で国が傾く】(初稿2010年)を再掲載することにしました。
−
−
日本の政治家というのは(マスコミ同様に)ずいぶん視野がせまく、遠望もきかない人たちの集まりのようです。
国の将来に目をやったとき、いま一番真剣に考え、対策に乗り出さなければならないのは、米軍普天間基地の移転問題でも、もちろん、鳩山首相の政治献金問題でもありません。日本の少子化についてです。基地の移転が多少遅れようと日米が敵国同士になることはありえませんし、かりに(自民党にはその力がないので、マスコミが大騒ぎして)鳩山首相を辞職に追い込んだところで(その人物が優秀かどうかはともかく)新しい首相はすぐに決まります。日本が大きく傾くことはありません。
だが、少子化を軽視しつづけると…。
自民党長期政権による最大の失政は(利権関係を全土に張り巡らせて税金を無駄に使いつづけてきたことなどではなく!)少なくとも1970年代以降はその傾向が顕著になっていたのに<日本の少子化を防ぐためのに必要な対策をほとんど打ってこなかった>ことかもしれません。
一方、期を画する政権交代を実現した民主党も、そのマニフェストで少子化問題に触れてはいたものの、政権獲得後の動きを見る限りは、事の深刻さをちゃんと自覚しているようには見えません。必要な危機感を抱いているとは思えません(情けないことに、マスコミは政権交代の後も前も、目の前に出現した個々の問題の枝葉末節をただ針小棒大に取り扱うことしかできない、進取の気とバランス感覚に欠けた怠け者でありつづけています)。
厚生省が発表している統計によると ①1973年に生まれた子の数は209万人 ②2006年は109万人 ③出生率は1971年には2.16 ④2006年には1.32(人口を維持するために必要な出生率は2.07)
2002年に発表されたほかの調査は ⑤2000年の人口は1億2,693万人 ⑥2060年の推定人口は1億59万人 ⑦2050年の推定年齢構成比は:子ども人口11%、働き盛り人口54%、高齢人口36% などと述べています。
日本の将来がどうなるかを考えると、いずれも、きわめて深刻な数字です。2060年には総人口は2000年より2600万人も減少しているだろうというのです。労働生産性の向上などでは絶対に追いつけない類の減少です、これは。
国民を豊かに保つための生産を誰が担うのでしょうか。農業の後継者は?生産した物をだれが消費する?国を動かすのに必要な税金はだれが納める?高齢者を誰が看護・介護する?
上の統計や調査・研究に見られるような急激な人口の減少は、間違いなく、国を傾けるのです。
国の経済的な繁栄を保つためには適度な人口増とインフレイションがなければならないはずです。自民党は昨年秋の衆院選で<経済成長政策がない>と民主党を非難しましたが、自らは何十年ものあいだ、その経済成長に欠かせない人口増加(少なくとも、減少防止)のための手を、事実上、何も打ってきていません。
自民党政権時代の貧弱な経済政策が引き起こした税収不足に足を取られている民主党も<こども手当て>や<高校無償化>などを何らかの形で実現しようとしてはいますが、少子化をどう防ぐかという長期的なヴィジョンは描いていません。
人口対策には即効薬はないのですから、政権を担当するのが何党であれ、国の指導者は数十年先を見つめながら、国民の目に見える形で、何かに着手しなければならないというのに……。
*
将来の人口を増やすための方策は二つしかないように思えます。
1.若い世代に引きつづいて子を、一夫婦当たりで平均2人以上生んでもらう
2.日本への移民を積極的に受け入れる
*
・一夫婦当たりで平均2人以上生んでもらう
2人以上生んでもらうためには何をすべきか?保育所などを増やし、充実させて、子を産みやすい環境を作る?育児休暇をもっととりやすくする?子を持つ家庭に養育費を支給する?高校までの授業料を無償化する?
そういう個々の対策も必要で、ある程度は有効でしょう。だが、いままでできていなかったことをやろうというのは、あくまでも現状の“繕い”です。そこには子育ての“将来像”がまったく見えていません。
40年後、50年後には日本はこうなっています(こういう国になろうといま最大限の努力をしています、だから安心して家族を持ってください、子を産み、育ててください)という“像”がないのです。親に、あるいは親になろうという世代に、明るい展望を与えていないのです。
これからの路線として自民党がいま真剣に考えているのは正統保守への回帰(?)だそうです。政党としては、それは勢力回復方策の一つではありえるかもしれませんが、こんな路線をどう高らかに謳い上げようと、これで若い世代が子育てに希望を抱くとは思えません。そこには明るい未来像がないのですから。
一方の民主党もそれを示したことがありません。鳩山首相の<友愛>精神は国際社会での日本のあり方や、人間同士のつながり方を理想主義的に語っているのでしょうが、子をどう育てていくかという、日本の親の世代が直面している厳しい現実を良い方に変えていく力はありません。
政治はいま、分かりやすい言葉で、若い世代に“夢”を与えなければなりません。
−
・移民を積極的に受け入れる
アメリカが長い間にわたって世界一の国力を維持できてきた理由の一つは、間違いなく、外国人の移民を(積極的に)受け入れてきたことにあります。白人至上主義者や極端な保守主義者が極度に嫌う移民が実は生産・消費・労働・納税などの下支えをしてきたからアメリカの長期繁栄があったのです。
ヨーロッパの先進各国も移民を受け入れることなしには国が動かなくなってきているようです。犯罪の増加などの多くの問題を抱えながらも、否応なしに“多民族国家”への道を歩ませられているようです。
さて、日本。移民の受け入れをどうするかについて真剣に発言している政治家やマスコミはまだいません。
「苦言熟考」はこれまでに、看護士・介護士の国家試験を外国人が英語で受けられ(合格者が増え)るようにすべきだと訴えています。移民受け入れを肯定する意見です。この辺りから始めるべきだと考えているわけです。
政治家(とマスコミ)は移民受け入れへの意見を真剣に語り始めるべきです。移民受け入れに反対する者は、それなしでもこの国は将来やっていけるという根拠を示すべきです。
*
多くの民族系の人々が住み合うなかで自らを鍛え行く……。日本人はそんな覚悟をしなければならなくなっている−と思います。
日本は<数十年後に国が傾くかどうか>の分岐点に差し掛かっています。何かを始めなければならないときに来ています。
* * *
[2016年1月10日 追加]
【受け入れ拡大へ向け総合戦略を】日本経済新聞 2016年1月10日 (http://www.nikkei.com/article/DGXKZO95971320Q6A110C1PE8000/)
* *
[2016年1月6日 追加]
毎日新聞 社説 1月6日 【人口減少と経済 タブーにも「挑戦」の時】(http://mainichi.jp/articles/20160106/org/00m/070/007000c)
<生産活動を担う現役世代一人一人のパフォーマンスは、米国をはるかにしのいでいたことになる。にもかかわらず、日本全体が伸び悩んだ背景には、この世代の数の急減があった。00年以降の13年、15〜64歳の人口は米国で12・9%増加したが、日本では8・5%も減少した>
<14年2月に内閣府が発表した試算によると、出生率が30年に、第2次ベビーブーム期に匹敵する2・07まで回復し、維持できた場合で、60年の人口は9800万人だ>
<現状のままだと、今の20歳が高齢者の仲間入りをする60年には、65歳以上の1人を現役世代1・3人で支えなければならない計算になる>
<長年タブー視されてきた「政策としての外国人の受け入れ」という選択肢も視野に入れる時ではないか>
<外国人労働者や移民の受け入れには、批判や反対がいまだに根強い。日本らしさが失われる、犯罪が増える、さらに最近ではテロリストが入ってくる、といった不安が理由として挙げられよう>
<しかし、労働力不足が深刻化する中、現実には外国人の流入は徐々に進んでいる>
<先月、浜松市で「外国人集住都市会議」が開かれた。外国人=出稼ぎというとらえ方ではなく、人口減少社会の中で「外国人市民の多様性をどう生かすかを考える段階に入った」(鈴木康友浜松市長)との発信がなされた>
<「未来へと果敢に挑戦する1年とする」−−。年頭記者会見で安倍晋三首相は「挑戦」を連呼した。人口問題ほど、果敢な挑戦が求められているものはない>
* *