第335回 「人口減」対策についてはこんな意見も

  日本の「人口減」にどう対処するのか−−。
               *
  内閣府のホームペイジに「少子化対策」という項があります。政府はそこで<我が国の人口は、平成17年に減少局面に入り、少子化問題は、社会経済の根幹を揺るがしかねない、待ったなしの課題となっています。子どもは社会の希望であり、未来の力です。次代の社会を担う子どもを安心して生み、育てることができる環境を整備し、子どもが健やかに育つことができる社会の実現のために、内閣府では、総合的な少子化対策に取り組んでいます>
               *
  この「少子化対策」の中では「将来の日本の人口構造」についても触れられています。
  <まず年少人口(0〜14歳)では、2010年の1,684万人から、2015(平成27)年に1,500万人台へと減少し、2046(平成58)年に1,000万人を割って、2060年には791万人の規模になる。総人口に占める割合は、2010年の13.1%から低下を続け、2025(平成37)年に11.0%となり、2060年には9.1%となる>
  <生産年齢人口(15〜64歳)については、2010年の8,173万人から減少し続け、2060年には4,418万人となる。総人口に占める割合は、2010年の63.8%から低下し続け、2017(平成29)年には60%を下回り、2060年には50.9%となる>
               *
  「少子化対策」の項は「 共生社会政策」の中の「少子化対策 / 子ども・子育て支援新制度」を述べた個所に含まれています。つまり、この「 共生社会政策トップ > 少子化対策 / 子ども・子育て支援新制度 > 少子化対策 」という一連の説明は、総合的な「人口減」対策の中でなされているのではない、ということです。
  たとえば、「日本 人口減 対策」をインターネット上で検索してみてください。日本政府が「少子化対策」以外ででも「人口減」に対処しようとしていることを示す記事が見つかりますか?
  政府の基本的な「人口減」対策の中からは「移民(受け入れ)」ということが事実上、すっかり排除されているようです。日本政府の公式「人口減」対策は「少子化」対策に限定されているのですね。
               *
  2013年6月27日にウォールストリート・ジャーナルのオピニオン欄にジョセフ・スターンバーグという人(同紙コラム「ビジネス・アジア」の編集者)のこんな意見が掲載されていました。
  【アベノミクスに欠けている矢―移民政策】 JOSEPH STERNBERG (http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424127887324873304578570873239626416) 
 <新たな消費者や労働者を輸入する形になる移民は、企業による国内の設備投資を刺激する上できわめて重要である。納税人口の基盤が拡大すれば、日本政府の財政状況も改善される。移民には国外からの直接投資を推進し、生産性を高める効果もある>
  <日本の人口統計上の非常事態が経済に及ぼした悪影響を過小評価すべきではない。2005年以来、死亡数が出生数を上回り、外国人流入のペースも減速しつつあるなか、日本の総人口は2年連続で縮小している。人口の高齢化もますます進んでいる。日本の人口に占める年少人口(0-14歳)と生産年齢人口(15-64歳)の割合は、それぞれ13.2%と63.8%で先進国では最低である。内閣統計局の推定によると、2050年にはその割合がさらに低下し、それぞれ9.7%と51.5%になるという>
  <人口の減少は消費者の減少を意味している。日本企業が国内投資に消極的な理由はいくつかあるが、これもその1つである。人口の減少は労働者の減少も意味している。日本の労働者1人当たりの生産性を(年間3-4%という先進国では異常な水準まで)劇的に高められなければ、安倍首相が約束した国内総生産GDP)成長率2%の持続が不可能になるという影響も出てくる>
  <移民政策研究所の坂中英徳所長によると、日本が人口の自然減を相殺するためには、2050年までに1000万人もの移民が必要だという。安倍首相が掲げる他の目標の多くも、最終的には移民にかかっている。たとえば安倍首相の計画は、母親の仕事復帰を促すために開設される数千もの託児所で働き手が確保できるのかという疑問に答えていない。その最も妥当な解決策は移民であろう>
  <新たな移民の受け入れであれ、小さな農地の統合や高齢農業従事者の引退であれ、新しい企業の設立や古い企業の破たんであれ、重要な改革には必ず大きな混乱が付きまとう。アベノミクスのどさくさのなかで誰もが聞き忘れたのは、日本が成長を再開させるに必要な大変動を本気で求めているかどうかということである。日本がそうした変化を進んで受け入れるようになるまで、アベノミクスは現実よりもむしろ願望に近い
               *
  「特定秘密保護法の制定」「集団的自衛権の解釈変更」をめぐってもそうであったように、安倍政権には「こここそが真の問題点だというところは隠し通す」という際立った特徴があります。「人口減」対策としての移民政策については事実上何も語らないというのもその一つです。
  政権維持のための政策を喧伝するだけで、真に日本のためになることは何一つやろうとしない安倍氏にいつまでも政権を委ねていてはなりません。
               *