第334回 少子化対策:無策のまま時が過ぎて

  「苦言熟考」が【第143回 “少子化”で国が傾く】を掲載したのは2010年の1月1日でした。
  残念なことですが、日本の“少子化”への対応は、この5年のあいだにも、まったく前進していないようです。
  【第143回】の数個所をここに引き写してみます。
  〔国の将来に目をやったとき、いま一番真剣に考え、対策に乗り出さなければならないのは、米軍普天間基地の移転問題でも、もちろん、鳩山首相の政治献金問題でもありません。日本の少子化についてです〕
  〔自民党長期政権による最大の失政は(利権関係を全土に張り巡らせて税金を無駄に使いつづけてきたことなどではなく!)少なくとも1970年代以降はその傾向が顕著になっていたのに<日本の少子化を防ぐためのに必要な対策をほとんど打ってこなかった>ことかもしれません〕
  〔一方、期を画する政権交代を実現した民主党も、そのマニフェスト少子化問題に触れてはいたものの、政権獲得後の動きを見る限りは、事の深刻さをちゃんと自覚しているようには見えません。必要な危機感を抱いているとは思えません(情けないことに、マスコミは政権交代の後も前も、目の前に出現した個々の問題の枝葉末節をただ針小棒大に取り扱うことしかできない、進取の気とバランス感覚に欠けた怠け者でありつづけています)〕
  〔2060年には総人口は2000年より2600万人も減少しているだろうというのです。労働生産性の向上などでは絶対に追いつけない類の減少です、これは〕
  〔国民を豊かに保つための生産を誰が担うのでしょうか。農業の後継者は?生産した物をだれが消費する?国を動かすのに必要な税金はだれが納める?高齢者を誰が看護・介護する?〕
  〔国の経済的な繁栄を保つためには適度な人口増とインフレイションがなければならないはずです。自民党は昨年秋の衆院選で<経済成長政策がない>と民主党を非難しましたが、自らは何十年ものあいだ、その経済成長に欠かせない人口増加(少なくとも、減少防止)のための手を、事実上、何も打ってきていません〕
  〔将来の人口を増やすための方策は二つしかないように思えます。1.若い世代に引きつづいて子を、一夫婦当たりで平均2人以上生んでもらう 2.日本への移民を積極的に受け入れる〕
  その「2」について「苦言熟考」は次のように述べていました。
  〔アメリカが長い間にわたって世界一の国力を維持できてきた理由の一つは、間違いなく、外国人の移民を(積極的に)受け入れてきたことにあります。白人至上主義者や極端な保守主義者が極度に嫌う移民が実は生産・消費・労働・納税などの下支えをしてきたからアメリカの長期繁栄があったのです〕
  〔ヨーロッパの先進各国も移民を受け入れることなしには国が動かなくなってきているようです。犯罪の増加などの多くの問題を抱えながらも、否応なしに“多民族国家”への道を歩ませられているようです〕
  〔さて、日本。移民の受け入れをどうするかについて真剣に発言している政治家やマスコミはまだいません〕
  〔政治家(とマスコミ)は移民受け入れへの意見を真剣に語り始めるべきです。移民受け入れに反対する者は、それなしでもこの国は将来やっていけるという根拠を示すべきです〕
  〔多くの民族系の人々が住み合うなかで自らを鍛え行く……。日本人はそんな覚悟をしなければならなくなっている−と思います〕〔日本は<数十年後に国が傾くかどうか>の分岐点に差し掛かっています。何かを始めなければならないときに来ています〕
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  細野豪志民主党元幹事長が、今年早々に行われる同党代表選挙に立候補する意思を表明しています。
  【「民主党、明確に過去と決別しなくては」民主・細野氏】 朝日新聞 2014年12月22日
  (BSフジの番組で)細野豪志民主党元幹事長 〔安倍政権は民主主義の仕組みに対する理解や報道の自由、国民の権利に対する理解が十分ではない。だからこそ野党がしっかりしなければならないが、いまそれがほとんど存在していない。(民主党代表選に出馬するのは)これを立て直さなければならないという危機感が一番強い〕〔民主党は明確に過去と決別しなくてはならない。そこが一番のポイントだ。決別しつつも、もう一度理念をみんなで練り直し、人を結集して、そこに入れる人がいたらできるだけ集まってもらう。堂々と旗を立てて自民党に臨むのが進むべき道だ〕               *     *
  経営コンサルタント大前研一氏がそのブログ「ニュースの視点 #549 2014/12/26」で、民主党へのこんな助言をしています。 
  「民主党・法人増税・地方創生〜民主党少子化対策や移民政策を議論せよ」〔民主党代表選に立候補を表明した細野豪志元幹事長は19日、野党再編について「争点にならない。党の自主再建を実現したい」との考えを示しました〕〔細野氏を圧倒的に支持する理由があるわけではありませんが、「手垢がついてない」という意味で、一人しか該当者がいないということです〕〔そして民主党が取り組むべき問題も、明白です〕〔少子化対策、移民政策は、安倍総理が最も嫌いな領域であり、これを議論すべきです
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  「苦言熟考」は2008年8月11日づけで【第91回 民主党は分かっていないようですね】と題するエッセイを書いています( 2008/08/11)。
  〔先の参院選有権者民主党と他の野党に過半数議席を与えた理由が鳩山氏にはどうも分かっていないようです〕〔あの選挙で有権者が言いたかったのは、枠を大きく広げて言えば<自民党政権のこれまでのやり方では日本=自分たちの暮らしはおかしくなってしまいそうだ>ということでした〕 〔大勝したあの参院選からここまで、有権者=国民が<ああ、さすがに民主党だ>と感心するようなことを、民主党は何かやったでしょうか?〕〔<今度こそ民主党に政権を>と国民が考える=有権者が期待するようなことを民主党はほとんど何もやってきていないのです〕
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  大前研一氏の上の助言に賛同します。民主党はいま、移民受け入れを含めた総合的で確固とした少子化対策を練り上げ、それを国民に向かって堂々と訴えるべきです。
  アベノミクス程度の金融経済政策では、日本が直面している深刻な少子化にはまったく太刀打ちできないことを、国民に明確に示すべきです。
  いえ、いえ、これは、どの政党が政権を握るかという問題ではありません。日本の衰退をどう防ぐかという、つまりは、国の存亡が懸かった大問題なのです。
   このことに関しては自民党がまったくの無策であることはすでに明らかになっています。ですから、代わりに誰かが取り組まなければなりません。
  民主党はいま、その“代わり”を務める意思を固めるときに来ています。
  細野豪志氏が「堂々と旗を立てて自民党に臨むのが進むべき道だ」というときの「旗」には“少子化と戦うことで日本を衰退から救う”というような文言が記されているべきです。
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  【人口1億人維持へのビジョンと戦略、正式決定】 2014年12月27日 読売新聞 (http://www.yomiuri.co.jp/politics/20141227-OYT1T50079.html)を読んでみてください。
  〔政府は27日の臨時閣議で、地方創生の方針や人口減対策を盛り込んだ「長期ビジョン」と、2020年までの数値目標を示した「総合戦略」を正式決定した〕〔目標とする「50年後に1億人程度の人口維持」実現に向け、国と地方の取り組みが本格的に動き出す〕〔総合戦略は「東京圏への転入超過を解消する」ことを当面の目標に、地方への企業移転を促す税制優遇、農林水産業の成長産業化などにより地方で若者の雇用を30万人創出するとした。東京圏転入を13年比で年6万人減少させ、転出を4万人増やすことも目指す〕〔長期ビジョンでは、若い世代が希望通りに結婚・出産できれば合計特殊出生率(13年は1・43)は1・8程度に上昇するとした。30〜40年頃に人口が一定となる「人口置換水準」の2・07まで出生率を回復させれば、60年には1億人程度の人口を維持できるとした
  「数値目標を示した」そうですが、「目標はないよりはある方がいい」という程度の、実は何の意味もない「戦略」のようです。「ではどうする?」という問いに答えた、実効性がある「戦略」だとは見えません。
  しかも、この「戦略」は、“排外主義者”安倍晋三氏を頭とする政府にふさわしく、移民受け入れについてはまったく触れていないようです。
  “絵に描いた餅”でもかまわないから、とにかく何かを口にしておこう、というような魂胆しか見えない、無責任な「戦略」です。
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  【「生産手段から需要主体へ」〜人口減克服に必要なのは「生産性」ではなく「人」に対する認識転換である】 近藤駿介 2014年12月28日 (http://blogos.com/article/102363/
  〔要するに、「生産性の向上」は、人口減による経済規模の縮小を防ぐ解決策にはならないということです。それは、経済成長の鈍化の根本的原因が「生産性」にあるのではなく、「人口減による需要減」にあるからです〕
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【日本が移民拒否を続ければ国は亡びる=シンガポール李光耀元首相】(http://www.focus-asia.com/socioeconomy/photonews/338841/3/) 2013年03月23日
  <移民政策については「質をコントロールし、優秀な外国の人材を取り込む必要がある」と述べた>
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