第232回 「失われた20年」は次の「もっと失われた40年」の始まり

  <政局中心の思考しかできなくなっている政党と政治家たちがそんな“危ない”日本をますます崖っぷちに追い込んでいます><目の前で起こっていることしか見えない報道機関が、将来を見渡すときに必要な思考能力を日々日本人から奪い去っています><いま、何よりも先に日本人が総力を挙げて取り組まなくてはならないのは、少子高齢化問題です><1990年代前半のいわゆる“バブル崩壊”からあとの経済不振の原因は、歴代政府の経済政策が間違っていたからでも、日銀の金融政策が甘かったからでも、産業界がなすべき努力をしてこなかったからでもないはずです>
  <「日本の経済不振は構造的なものだ」「少子高齢化という、すでに始まっている人口構造の変化が、現在のデフレ経済をはじめとする、日本が抱えている諸問題の最大の原因だ」。学者や識者のさまざまな意見の中ではこの説が最も説得力を有しているように思えます><少子高齢化に真剣に、ただちに取り組まないと、多くの問題を抱えたまま、日本は世界の二流国に落ちてしまうに違いありません>
  「苦言熟考」が上のように主張したのは、ほぼ一年前の2011年2月8日づけの【第189回 日本の低迷はつづく】(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20110208/1297126815)においてでした。
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  数日前(2012年2月24日)の韓国紙「中央日報」(インターネット日本語版)に【日本の「失われた20年」の原因は別のところに?】と題した記事がありました(http://japanese.joins.com/article/622/148622.html?servcode=300§code=300)。一部を抜粋して紹介しますと…。
  <フィリピンが世界16位の経済大国に浮上する。 なんと27階段も順位が上がった結果だ。 ペルーも20階段(46位→26位)上がる。 最上位圏も版図が変わる。 中国、インドが世界1、3位に浮上し、米国(1位→2位)、日本(2位→4位)は体面を汚す。 韓国は11位から13位に落ちる。 HSBCが展望した2050年の世界経済の姿だ>
  <研究を主導したカレン・ウォードHSBC選任グローバルエコノミスト中央日報とのメールインタビューで、「100年後に過去を振り返れば、今の世界経済がむしろおかしく見えるだろう」と述べた。 「人口が少ない国が世界国内総生産(GDP)の大きな部分を占める時代は終わった」ということだ>
  <「生産に投入される人口が増えるほど、成長しやすくなるのは当然だ。 日本を例に挙げてみよう。 多くの人は日本の‘失われた20年’の原因に、1980年代のバブル経済当時に増えた負債を返そうとして消費が減った点を挙げている。 しかし日本の1人当たりのGDPは他の先進国と似たペースで増えてきた。 この15年間、労働人口が減少したのが本当の‘犯人’ということだ」>
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  日本人はただちに頭を切り替えるべきです。数十年先を見据えるべきです。
  日本がここまで追い込まれているときに「次の選挙で勝つ(負けない)」などの目先のことしか考えられない政治家や、政局の(的外れな)分析ぐらいしかできない報道関係者はすぐにも第一線から退いて、先が見える=将来のことを熱く語ることができる者たちにその職、仕事、任務を譲るべきです。
  「苦言熟考」が<日本に(特にこれから)必要なのは外国人の看護師や介護福祉士だけではありません。日本は、分野を問わずに、幅広く、“知的”外国人の移民を受け入れるべきです。日本人への外国語教育を含めて、そうするための準備、制度づくりに、日本政府はただちに取りかかるべきです>と書いたのは前々回の「読売新聞が追いついてきた」(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20120210/1328826510)でのことでした。女性が安心して働くことができる社会づくりととともに、いま日本人に求められている最も重要な課題です。
  日本の総人口は、2060年ごろには、9000万人を下回るところまで減少するだろうと予測する専門家もいるようです。いまの人口の三分の一近くが“消失”しているはずだと考えられているわけです。
  労働者一人当たりの生産性を向上させて埋め合わせることができる程度の“消失”には見えません。
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  【第143回 “少子化”で国が傾く】(2010年1月1日)http://d.hatena.ne.jp/kugen/20100101/1262298470
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 【コラム】日本の財政悪化は誤った統計のため?
   2012年03月02日16時52分 [中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/820/148820.html?servcode=100§code=140
  < 先日、日本で会った土居丈朗慶応大教授は急に統計の話を持ち出した。土居教授は日本最高の財政専門家だ。日本の財政が悪化した理由を尋ねると、こういう言葉が返ってきた。「失われた10年、すなわち成長の停滞とみるよりも人口推計を誤った。特に出生率予測値を誤ったのが決定的だ」。日本は5年ごとに人口統計を出す。しかし5年後に検証すると、実際の出生率は予測値よりいつも低かった。社会的な衝撃を意識して予測値を機械的に出したためだ。こういうことが何度か重なり、20−25年間に人口構造が完全によじれたということだ。結局、年金収入は予想より少なく、年金支給ははるかに多くなった。土居教授は「故意的な嘘ではないが、結局は誤った統計が国家災難を招いた」と述べた>
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  【移民政策でダイナミズムを喚起せよ=カーティス・ミルハウプト教授】(ロイター 2012年 03月 2日)  
http://jp.reuters.com/article/jpopinion/idJPTYE82101620120302  <日本の閉塞感は、移民政策の推進や外国人の登用などを通じて世界に門戸を大きく開くことで今よりもはるかに解消されると、企業法や企業統治の研究で知られるコロンビア大学法科大学院のカーティス・ミルハウプト教授は強調する>
  <日本の未来は国際社会と密接に結び付いており、国際社会に対して偏狭なアプローチを取るのであれば、日本が十分に繁栄することはできないだろう。国際化や新しいやり方を受け入れることが必要だ。それには痛みや代償も伴うだろうが、日本には外国からの影響を取り込み独自の発展を遂げてきた歴史がある>
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  【大前研一 ニュースの視点】2012年3月9日
  <経済が回復するための、もう1つのキーとなるのが「移民」です。既存の人間だけでは、どうしても新しいエネルギーが足らないという面があり、ある程度の数の移民が必要なのです><もちろん、移民の数が多すぎると国内で賄うのが大変ですし、既存の人たちの雇用が奪われてしまうのでバランスは必要です><2050年まで現在の経済を維持するためには、ドイツでは移民を1100万人、イタリアでさえ900万人が必要だと試算されています><私が以前から計算しているところでは、日本の場合、年間39万人程度の移民を10年ほど受け入れ続ける必要があります。少子高齢化の社会ですから、じっとしていれば衰退国になるのは明らかです>