第176回 鳩山さん、恥ずかしくないのですか?

  鳩山由紀夫という人物はどこまで自分を落とすつもりなのでしょう?
  首相だったときには、沖縄の米軍基地の移転をめぐって肯定的なことは何もできなかっただけではなく、最後には、知れば知るほど、沖縄にいる米軍の抑止力の大きさ(大事さ)に気づくようになった、だから、移転先はできれば国外に、悪くとも沖縄県外に、とのこれまでの考えを撤回する、といった趣旨の、自分の不勉強=無知=怠惰さをさらけ出す言い訳発言をしゃあしゃあとして日本国民をすっかり呆れさせましたよね。でも、あの人はその程度のことでは気がすまないようで、首相の座を離れてからも次つぎと愚鈍な考えを公にしています。

  最も新しいところでは…。
  朝日新聞の社説はこう書いてます(2010年10月26日)。
  <次の総選挙に立候補せず、政界を引退すると表明していた鳩山由紀夫前首相が、衆院議員を続ける意向を明らかにした。「党の状況が思わしくない」ので、まだ自分に果たしうる役割がある、というのがその理由だ>
  <あれれ、と思う。そもそも、民主党が「思わしくない」状況を招いたのには、小沢一郎元幹事長とともに鳩山氏自身も重い責任があるのではないか>
  その通りですよね。

  鳩山由紀夫というのは、自分が何をしているのか、何を言っているのかが分からない人物のようです。
  尖閣諸島近くで日本の巡視船に船首を体当たりさせてきた中国漁船の船長を(そのことを中国政府との交渉材料とすることなく)民主党政府が釈放し、帰国させたあとになって、鳩山氏は唐突に、自分には中国要人とコネがあった、自分が首相だったのなら、その要人と電話会談をして、もっとうまく事を進めていたはずだ、というようなことを、まるで小学生の後追い強がりでもあるかのような“奔放さ”で言い放っています。
  もう首相ではないのだから電話をかけなかった?
  事の展開に着いて行けずに困りきっていたのは、鳩山さん、あなたがついこのあいだまで首相だった国、あなたが党首だった党ですよ。中国要人と直接に、いつでも電話会談ができるほどの力があったのなら、なぜ、国と党を助けるために動かなかったのでしょう?
  何もしないでおいて、恥ずかしげもなくこんな自慢話ができる前首相?

  あなたの無思慮、無責任な発言で、国民=有権者に恥ずかしい思いをもうこれ以上させないでください、鳩山さん。
  近頃のあなたの、知性や道義性に欠けた言動は、国民にとって、恥以外の何物でもありません。
  朝日新聞の社説はこうも言っています。<鳩山氏は政権交代前にも、自民党森喜朗安倍晋三両元首相を念頭に、「総理まで極めた人」のふるまいが「政治の混乱を招いている」と批判し、自らはその道は採らないと述べていた。それは、確固たる信念ではなかったのだろうか>
  鳩山氏が「確固たる信念」の持ち主ではないことに国民はとうに気づいていましたが、朝日新聞のこの、嘆きにも似た疑問には多くの国民が改めて共感していることでしょう。
  鳩山さん、あなたが(小沢一郎氏とともに)政界に何らかの影響力を行使できた時代はもう終わっています。自覚してください。
  歴史的な政権交代民主党の新時代が到来!
  そうであったはずなのに…。旧来の自民党色を拭い去れずに、民主党は悪戦苦闘させられています。
  小泉、安倍、福田、麻生とつづいた無責任極まりない、オレがオレがの自民党世襲議員首相たちのあとを、あなた程度の(愚かで身の程知らずな、やはり世襲議員である)人物がついだというのは、皮肉なことです。
  日本の不幸です。
  鳩山さん、自分の身の振り方をこれ以上間違えないでください。自分をこれ以上落とさないでください。国民のために。
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  こんな記事がありました。
  <<鳩山氏が首相の対応批判 日中会談見送り>> 2010/10/30 17:17 【共同通信
  <民主党鳩山由紀夫前首相は30日、ハノイで29日に予定されていた公式な日中首脳会談が見送られたことに関し「私と温家宝首相は信頼関係を築き、先方から心を開いてくれただけに大変残念だ。首脳同士で何度でも繰り返し会うことが大事だ」と述べた。菅直人首相の日中関係改善に向けた対応をやんわりと批判した発言だ>
  「先方から心を開いてくれた」ですって?どこまで“お坊ちゃん”なのでしょうね、鳩山さんは。アノ北朝鮮ミャンマーの最高の友好国である中国を相手にしての話ですよ、これは。民主主義も公正の感覚もない、共産党による一党独裁の、にわかに経済大国となって拳を振り上げることに快感を覚えているとしか思えない、危険な国なのですよ、いまの中国は。
  尖閣諸島をめぐって日中の対立が強まり、中国国内で反日デモが拡大している中で温首相は、デモ参加者の気持ちを逆なでしてでも「心を開いてくれた」はずだと、鳩山氏は無邪気に信じているのでしょうね。
  この困難な時期に、国際政治にここまで無知で無防備な人物が首相でなくなっていたことを日本国民は幸いだと思うべきです。
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  きょうはこんな記事を読みました。
  <<ツイッターで前原氏批判?=鳩山氏>> 2010/11/02-02:29 時事通信
  <民主党鳩山由紀夫前首相は1日、自身のツイッターで詩人の吉野弘氏の「祝婚歌」を引用する形で前原誠司外相の外交姿勢を批判したと受け取れる書き込みを行った><鳩山氏は「正しいことを言うときは少し控えめにするほうがいい 正しいことを言うときは相手を傷つけやすいものだと気付いているほうがいい」という祝婚歌の一節を引用し、「外交交渉の要諦(ようてい)はここにあると、昨今の外交案件をみてつくづく思う」とつぶやいた>
  詩人の上の一説は、心の奥では互いに〔気心が知れた仲〕同士であると信じる日本人と日本人のあいだでは通用する、鳩山氏が愛してやまない〔友愛の精神〕に基づく、美しい信条なのかもしれませんが、異なる価値観がせめぎ合う国際政治の世界ではあまりにも常識離れした甘い認識だと思います。
  戦略上あるいは戦術上のテクニックとしてあることを言わないでおくという選択は当然にあり得ることですが、「外交交渉の要諦」は基本的には〔言うべきことを言う〕であるべきです。それがなければ、そもそも相手国が日本を理解しません。日本に敬意を抱きません。すでに80歳を超えていた母親から毎年数億円も貰いつづけていてそれに気がつかなかったらしい“お坊ちゃん”鳩山氏には、取るか取られるかの外交世界のことがまったく理解できないようです。
  自分自身のことを鳩山氏は振り返ってみるべきです。その〔要諦〕にのっとって鳩山氏は、沖縄の米軍基地移転問題をどう解決しました?「トラストミー」発言でオバマ米大統領の信頼を大きくしました?
  最友好国であるアメリカとの関係さえ良好に保つことができなかった鳩山氏に中国やロシア、北朝鮮などとの外交について口出す資格はまったくありません。