第136回 フィリピンで旅行ヴィザを延長する

  前回は運転免許証の更新について書きました。今回は、どういうふうに旅行ヴィザを延長してもらうかについて報告しましょう。

  移民と非移民のヴィザの扱いについてメトロマニラとその周辺地域を管轄するのは、マニラの旧城塞都市イントゥラムロスの中にある移民局の本部です。

  移民局のビルに入る前−

  自分の自動車を運転して行くと、移民局の建物の周辺の通りに駐車することになります。通りには多くの男性たちがたむろしていて、車を乗りつけると、そのうちの何人かが「ここにパークしろ」と声をかけてきます。そのうちの一人に従って駐車すると、まず“駐車料金”を請求されます(空きスペイスを見つけてやったのだからといって、別の人物からティップを求められることもあります)。料金は普通は(駐車時間の長さには関係なく)30ペソ=60円ですが、外国人には多い目に吹っかけてくる傾向があるようです。男性たちが受け取るこの“駐車料金”は「あんたがここにとめているあいだは俺が見ていてやる」という意味のもので、どうやら裏料金のようです。男性たちの“縄張り”をだれがどう決めているのかについては調べたことがありません。
  ちゃんと領収書を渡してくれる公の駐車管理係員が居合わせれば、当然ながら、その人物が料金を受け取ります。
  雨の日でなければ、そのあと必ず「車を洗わせてくれ」と言われます。前日に洗ったばかりだと言っても、男性たちは簡単には引き下がりません。男性たちは洗車の収入で家族の生活を支えているのでしょうから、まあ、それも当然なのかもしれません。承諾すると、次には洗車料金を交渉することになりますが、ここでも、外国人には高めの料金を要求してくるようです。わたしがこれまでに払った料金は70ペソから130ペソ=260円です。高いと感じたらはっきりと断ることにしてます。どこかで買い物や食事をするたびに“外国人向け”の値段や料金を押しつけられたら、こちらの生活が成り立たなくなるではないか、それと同じだ、という理屈をつけて−。
  雨の日に傘を持っていないと、傘を差しかけてくる男性と出会います。移民局の入り口まで送ってやってティップを求めようというわけです。利用したことがないのでこの“サーヴィス料金”の額は知りません。おそらく20ペソから30ペソというところでしょう。

  警備員たちが目を光らせている玄関の金属探知機を通って移民局の建物に入ると−

  まずは、正面の受付に行ってヴィザの延長申請書(無料)をもらいます。これに必要事項を書き込んだあと、パスポートの個人情報のペイジと最新の入国スタンプが押されたペイジを、(自宅でそうしてきても構わないのですが)建物内の業者にコピーしてもらい(有料)、それらを揃えて受付(RECEIVING)窓口に差し出します。
  フィリピンでは、日本人なら、最初の21日間はヴィザなしで滞在できますが、原則としては、2か月ごとにヴィザの延長手続きをすませなければなりません(最初の手続きでは38日間の延長となります。21日+38日=59日)。
  提出したものに間違いがないと受付窓口が認めれば、次に延長手数料を支払います(CASHIER)。以前は、何度目の更新かによって手数料が異なっていましたが、いまは、初回の延長が3030ペソ=6060円、その後は2か月ごとに等しく1850ペソ=3700円になっているようです(ただし、移民局のホームペイジにきょう現在で掲げてある料金表には、まだ書き換えられていないのか、最近わたしが支払ってきたものとは異なる額が示されています。初回2010ペソ、その後二回は5160ペソ、6か月以降は4050ペソ)。
--ホームペイジの額が正しいものでした。2009年12月9日 確認--
  パスポート、コピー、申請書とその領収書をまとめて、再び受付窓口に提出すると「1時間ほど待て」と指示されます(ヴィザのスタンプが押されたパスポートは別の窓口=RELEASINGで受け取ります)。大規模な改装工事が行われる前の移民局では「承認印を押す係り(上司)がまだオフィスに来ていない」といったような(“お役所”ならではの)理由で、この「1時間」が1時間半にも2時間にもなったことがありましたが、いまはかなり能率的で正確に仕事が行われていて、時間はまず守られます。
  待合室も改装前は実に狭くて、申請者やその同伴者、代行業者(トゥラヴェル・エージェント)、職員、警備員などであふれかえっていましたが、いまはいつでも、だれでも座ることができる数の申請者用の椅子があるし、エアコンも十分すぎるぐらいに機能しています。フィリピンにしては(と言ってしまってはいけないのでしょうが)これは“たいへんな改善”だと感じます。
  以前は、移民局の職員と思われる人物から「ティップ(賄賂)をくれれば、オフィス内の者と図って超特急で処理する」などと半ば大っぴらに声をかけられたものです。通常なら数時間はかかる手続きを1時間ですませるというわけです。ティップの額は(「あんたの好きなように」と言われますが、相場は)1000ペソ=2000円でした。この1000ペソを、声をかけた者とオフィス内の者とで分けているようでした。
  この申し出を断ると−。新しいヴィザを受け取るまでの時間を故意に引き延ばされそうな気がしませんか?オファーを断るのは“ちょっと勇気がいること”でした。
  不法なティップを求める職員はいまもいますが、監視カメラが多く備えられたこともあって、かなり減っているようです。これも大きな改善だと言えます。

  さて、現行法では、ヴィザの延長は1年まで。1年の期限が切れる前に外国人は一度フィリピン国外に出なければなりません。外国での滞在がたとえ1日間だけでもニノイ・アキノ国際空港の入管は再入国を認めるということです。
  滞在が半年間以上になったあとに出国する場合は、移民局で事前に「出国許可書」(EXIT CLEARANCE)を取得する必要があります。犯罪歴がないかどうかなどが調べられます。手数料は500ペソです。延長の際と異なるのは、顔写真を(いまは3枚)提出しなければならないこと。撮影してくれる業者が数人、建物内で待機しています。料金は4枚で100ペソです。この書類は、空港の出国審査の窓口に提出しなければなりません。
  この手続きでは、少し離れた別のオフィスに出向いて、そこでサインをもらう必要があるのですが、係りの職員が「ティップを出してくれれば、すべてをわたしがすませてやる」と言ってくることがあります。その(非合法)ティップの額は500ペソ程度です。

  車に戻ると、洗車をした男性が近づいてきます。ちゃんと洗ってあるかどうかを見て納得すれば、前に交渉していた額の料金をここで払います。
  ここまでにかかる時間は大方2時間。
  エンジンをかけ、帰路につくとやっと「次は2か月後」ということになります。

  =フィリピンには退職者のための移住プログラムがあって、これを利用して永住権を手に入れれば、2か月に一回のこの手間は省けますし、出国許可書も不要だということです=