第135回 フィリピンで運転免許証を更新する

  10月23日にフィリピンで初めて運転免許証を更新しました。日本の更新とはかなり違った様子を報告します。

  23日にわたしが利用したのは陸運局(LAND TRANSPORTATION OFFICE)のマカティ・シティー運転免許証更新センターです。メトロマニラの幹線道路EDSAの上を走る軽鉄道(MRT)のアヤラ駅の改札口のそばにあって、多くの利用者には足の便がとてもいいロケイションになっています。

  ただ、問題はひどく狭いこと。

  所持中の運転免許証を提出するだけで更新手続きを始めることができます。陸運局の最初の窓口で<前回手続きした際の領収書を持っているか>ときかれましたが、持っていなくてもかまいませんでした。
  今回の手数料(417ペソ63センタボ)が書き込まれた申込書をここで受け取ると、隣に行ってドラッグテストと身体検査を受けろと支持されます。

  ---このドラッグテストについては、ドラッグ常用者は免許証の取得や更新の何日も前から使用をやめておくだろうし、実際に、使用者発見率もすこぶる低くて、意味がない、という下院議員が、テストを廃して事務の流れを能率的にすべきだ、と提案したことが少し前にありましたが、テストを廃止するのに十分な支持を集めることができなかったようです---

  この<隣>というのは<JNW DRUG TESTING CENTER>という会社です。
  ここでなされるテストは四段階に分かれています。
  ステップ1はテスト手数料400ペソの支払い。長い行列に加わってこの窓口にたどりつくまでに、わたしの場合は30分間ほどかかったはずです。
  2は尿の採取。テスト手数料を支払ったあと、簡単な書類に記入しながら10分間ほど待ったあと、プラスティックの小さなボトルを渡されて、トイレに入り、尿を採るわけですが、多数の(男女)更新者がいる前で(少なくとも男は)ドアーを開いたままで採尿せよ、と言われます。道路脇や自分が運転する車のかげで放尿する習慣がまだ残っているフィリピン人男性にはどうということもないのかもしれませんが、そんな習慣がない外国人には“ちょっと気後れしてしまう”採尿です。
  3は身体検査。(おそらく10平方メーター以下の)細長い小部屋で、医者と助手による視力検査、身長・体重、血圧の測定、体調に関する簡単な質問がなされます。書類に何かを書き込んでいるあいだに助手が血圧を測るといった調子で、測定は厳密なものではありませんが、ここの込み具合を考えれば、仕方がないのでしょう。
  ステップ4は、記録として残すための顔写真撮影と指紋採取です。両手の親指の指紋が採られました。

  さて、<狭い>というのはこのテスティング・センターのことです。
  通路に当たる部分は幅が、広い個所でも2メートルはなさそうです。狭い個所は1メートル以下。鉤型の通路の全体の長さは12〜13メーターぐらいでしょうか。この通路の広い部分には10席ほど椅子が備えられていて、実は、この狭い通路がが待合室も兼ねているのです。
  ステップ1と2に行く人たち、3と4に進む人たちが、この狭い通路兼待合室に二列に並んで(立って)待つのですが、この列のあいだの(あるとも思えない)スペースを、それぞれのステップ担当者に何かを尋ねようと人が行き来します。皆が横向きにならないと、この人たちは行き来ができません。

  エアコンはどこかで動いていたはずです。ですが、それだけのスペイスにしてはあまりの人の多さ(40〜50人)のためにほとんど効いてはいません。扇風機だけでは人いきれを消すことができません。
  自分の番がやって来るのは辛抱強く並んで(人によっては額に汗をにじませながら)待っている人たちに尋ねてみました。<なんでこんなに狭苦しいところで更新するの?>
  答えはやはり<足の便がいいから>。
  <待つ時間は長いが、それぞれのステップはさっと終わるから>という人もいました。

  このテストセンターでの手続きが終わると隣の(エアコンが効いた、待つための椅子もある)陸運局のオフィスに戻ります。ここで免許証に載せる写真が撮られ、手数料を払い、やっと新しい免許証が発行されます。
  手数料は二個所の合計で817ペソ63センタボ(1600円ほど)かかりました。

  ---2007年春にカリフォルニア州の免許証をフィリピンのものに切り替えたのは陸運局のケソン・シティー本部でした。そこでは、初めての切り替えだったこともあって、代行人に一切の手続きを任せたために、総額で3000ペソほど取られました。代行人は<オフィス内に親戚の者がいるから、そのコネで手続きが早く終わる>と自慢していましたが、はたしてそうだったかどうか---

  新しい免許証を受け取るまでに2時間半がかかりました。そのうちの2時間15分間ほどは待ち時間だったような気がしています。
  アジアの多くの国々では、人々が押し合い圧し合いして生きています。フィリピンも例外ではありません。汗をかく人はいましたが、更新者たちには、この狭さ、込み合いは何ということのないことのようでした。
  しかしながら、広大なカリフォルニアに20年間ほど住んでいたからでしょうか、わたしには、この狭さが苦痛に感じられました。待ち時間を考慮して持ち込んでいたペイパーバックもほとんど読めませんでした。
  だから、かどうかは知りようもありませんが、外国人だと見える人物はわたし以外には一人もいませんでした。

  新しい免許証で2012年まで運転することができます。
  発展途上国ではどこでもそうであるようですが、フィリピン人の運転ぶりはけっして<秩序ある>ものとは言えません。信号・車線の無視、車頭の突っ込みあい−。
  事故に合わないように、事故を起こさないように運転していきたものです。