第10回 英語のカタカナ表記を変えよう!! 2008/05/13 閲覧(449+962)  再掲載三度目

 =2007年9月26日に(ステアク・エッセイ 第10回から)再掲載したエッセイを再度掲載します=



  そうする気になったのは−

  今年(2008年)1月31日づけの朝鮮日報(インターネット版)に<ハングルによる英語表記法を変えるべき>と題した記事があったことを思い出したからです。

  韓国語にも日本語と同様の問題が(まあ、当然といえば当然ですが)あったのです。

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  英語(外国語)の発音が自国の現在の表記法ではうまく書き表すことができない!

  <ハングルによる英語表記法を変えるべき>だと主張しているのは淑明女子大学の李慶淑(イ・ギョンスク)総長です。

  1960年代に米国留学したときの経験がそうさせているようです。

  「米国で“オレンジ”(orange)と言っても、誰も聞き取れなかった。“オルェンジ”と言ったら分かってくれた」

  そこから「発音はできるのに表記が間違っているため、それ(発音)に慣れていない外国人も聞き取れないし、韓国人も気後れする」のだと総長は考えたのです。

  最近の例としても、総長には「先日、わたしが“press-friendly”(メディア親和的)という言葉を使ったら、どこのメディアも(ハングル文字で)“プレス・プレンドリ”と書いていた」という体験があります。「fの発音は(“プ”ではなく)“フ”が正しい」のに。

  この記事を書いた記者は<これまでも一部の言語学者や一般の人々が「r」「f」「v」「th」「z」といった現在の韓国語の発音にはない英語の音を表現できる新たな表記法を考え出したり、中期韓国語の唇軽音(唇を経て発音される軽い音)を復活させようと主張してきた。だが、これまで国語院は「言葉の規定が随時変われば、言語生活に混乱を招き、巨額の国家予算や民間コストが必要となる」という見解を示していた>と伝えています。

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  そこで、日本語については、カタカナでの表記に関する<ステアク>の提案をもう一度皆さんに知っていただきたい−と考えたわけです。

  興味がある人はぜひ最後まで読んでください。

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  『カタカナにコレが付されていれば 従来の日本語にはない発音をしてください』 と指示する(画期的な!)記号を普及させませんか?

  「カタカナ英語は厄介です」という話(第9回)のつづきです

  1911(大正8)年生まれの母は、アメリカ漫画のBETTYのことをいつも「べテーさん」と呼んでいました。母が教育を受けたころには「ティー」という発音は日本ではまだ一般的ではなかったようです。

  1950年代の後半に日本でも放映されて人気番組になっていた「RIN TIN TIN」は邦題では<名犬リンチンチン>となっていました。覚えていますか?

  あのころでもまだ「TIN」は「ティン」というふうには発音されていなかったのですね。

  わたしが小学生だったころ、PTAはふつう「ピー・テー・エー」か「ピー・チー・エー」と呼ばれていました。

  いまの日本ではどうでしょう?若い親たちはちゃんと「ピー・ティー・エー」と言っているのではありませんか?

  昔はBUILDINGを「ビルジ(ヂ)ング」と表記していましたよね。いまでは「ビルディング」と書くのが当たり前だと思いますが…?

  つまり、外来語の表記と発音は時の流れとともに少しずつ変化してきているわけです。

  「だったら、もうちょっと大胆に変えてもいいのではないだろうか」というのが、きょうのエッセイの動機になっています。

  翻訳に関する著書が多い別宮貞徳(べっく さだのり)さんがかつて(「翻訳はウソをつく」という本の中で)「いくら表記をくふうしても読者がきちんと読んでくれるとは限らないし、またいくら苦心してもカタカナ表記が本来の外国語発音の正確なうつしにならないのは、たしかにその通り。しかし、だからといって、それが無用ということにはなるまい」と書いていました。

  カタカナ英語で思いのほか苦労したわたしは、言うまでもなく、別宮さんのこの考えに大賛成しています。

  そこで、わたしが考案した(!!)のが<『カタカナにコレが付されていれば従来の日本語にはない発音をしてください』と指示する記号>です。

  その記号は二つで、「--」と「-」いう簡単、単純なものです。

  この短い点線記号をそれぞれのカタカナの上に付して新しいカタカナを創り、新しい読み方をするようにしようではないか、というわけです。

  

  手書きでなら、その文字を一つひとつここに書いて、皆さんに見ていただけるのですが、このエッセイはコンピューターで書いていますから、それができません。

  ですから、ここでは「--」が付加されたその<新作カタカナ>を【 】に、一方、「-」がついたものを[ ]入れて表わすことにします。

  皆さんは、【 】に入った(従来の)カタカナを見たら、<ああ、この文字の上(頭)には「--」が乗っかっているのだな>、また、[ ]に入ったカタカナに出合えば、<この文字の上(頭)には「-」が付されているのだな>というふうに了解してください。

  たとえば、「ラ」に「--」が付されていれば(「【ラ】」)、この文字は、ちょっと見には「フ」の上に横棒が二本引かれているように見えるかもしれませんが、上の線はあくまでも「--」で、「RA」を示すわけです。

  さて、例を挙げていきましょう。

  「KITCHEN SINK」(台所の流し)と「THINK TANK」(頭脳集団」の二つはこれまでのカタカナ表記ではともに「シンク」と書かれます。

  それを、「流し」の「シンク」は「スィン[ク]」、「頭脳集団」の「シンク」は「【シ】ン[ク]」と書きます。「【シ】」で「THI」を表わそうというわけです。

  野球の球種「SINKER シンカー」は「スィンカー」で、考える人(THINKER)は「【シ】ンカー」になります。

  「R」と「L」については…。

  「R」の発音がもともとの日本語にはないわけですから、「R」を表わすカタカナにはすべて「--」をつけます。

  「RADIO」は「ラジオ」ではなく「【レ】イディオ」と書きます。これで、このラ行の文字が「R」を示していることが分かるわけです。

  自動車レース(RACE レイス)は「【レ】イ[ス]」、レース編みの「レース(LACE レイス)」は「レイ[ス]」になります。

  ちなみに、「RACE」でも「LACE」でも、従来「ス」と書かれていた部分は(ローマ字表記で「SU」という発音ではありませんから、「[ス]」(従来の「ス」の上に「-」が付された新文字)に書き換えましょう。

  上の「スィン[ク]」と「【シ】ン[ク]」の場合でも、この「ク」は「KU」ではなく「K」ですから、「従来の日本語にはない発音」として「ク」の字の上に「-」を加えた“新カタカナ”で表記するようにしましょう。

  同様に、たとえば、「BED」は「ベッド」ではなく「ベッ[ド]」、「MILK」は「ミルク」ではなく「ミ[ル][ク]」になります。

  思いつくままにもう少し…。

  「プレミアショー」(PREMIER SHOW)は「[プ]【レ】ミアショー(ショウ)」

  「ロードショー」(ROAD SHOW)は「【ロ】ー[ド]ショー(ショウ)」

  「イベント」(EVENT)は「イヴェン[ト]」

  込み入ったところで…。「サラブレッド」(THOROUGHBRED)は「【サ】【ロ】ー[ブ]【レ】ッ[ド]」

  野球やゴルフの「スイング」(SWING)は「W」が入っていますから、「スゥイン[グ]」

  ですから、この新しいカタカナ表記法では、基本的には…

  「 THA 」(THANK)は「【サ】」 「 THI 」(THINK)は「【シ】」 「 THU 」(ENTHUSIASUM 熱中 意気込み)は「【ス】」 「 THE 」(THEORY セオリー)は「【セ】」 「 THO 」(AUTHORITY オソリティー)は「【ソ】」

  「 TH 」が(従来)ザ行で発音されている単語は「【ザ】」や「【ズ】」などと(THAT, CLOTHES)

  「 RA 」は「【ラ】」 「 RI 」は「【リ】」 「 RU 」は「【ル】」 「 RE 」は「【レ】」 「 RO 」は「【ロ】」

  と表わし、

  「C」(PACIFIC) 「D」(BED) 「F」(ROOF) 「G」(BAG) 「K」(BOOK) 「L」(LOCAL) 「M」(DAM) など英語の単語が子音で終わる単語、あるいは、「GAME」や「DATE」のように母音で終わっていてもその母音を発音しない単語の最後のカタカナ(「ム」や「ト」)にはすべて「-」をつけて(「[ク]」「[ド]」「[フ]」「[グ]」「[ム]」「[ト]」などと)書く

  ということになります。

  また、「PREMIER」の「P」、「GREEN」の「G」、「GOLD」や「MILK」の「L」のように、単語の初めや中ほどにあって、あとに子音がつづく文字も(上に示したように)「[-]」をつけて表記することにしましょう。「[プ]【レ】ミア」、「[グ]【リ】ーン」、「ゴー[ル][ド]」、「ミ[ル][ク]」というわけです。

  そう書いておけば、いざ英語として発音するときには「GO - LU- DO」「MI - LU - KU」とやる可能性が小さくなります。

  つまりは…。

  この表記法が普及すれば、カタカナで学んだ英単語でも、いざというときにその発音に窮する恐れが小さくなるだろう、ということです。

  普及して、それが小さくなることを、わたしは(「そんなことが起こるわけはない」と思いながらも、一方では、実は、ひそかに)期待しているわけです。

  ところで、この表記法では(前回のエッセイで取り上げた)「シアーズ SEARS」は「スィアー[ズ]」、「ベランダ VERANDA(H)」は「ヴェ【ラ】ンダ」と書くことになります。

  

  では、最後に、「サンキュー」は?

  これはもとが「THANK YOU」ですから、新しい表記では「【サ】ンキュー」になります。

  (最後まで読んでくださった方、いやいや、お疲れさまでした)


  ==2008年5月26日 補足==

  リヴァー(RIVER)やスーパー(SUPER)、ファースト(FIRST)、上に出したスィンカー(SINKER と THINKER)などの「母音+R」の部分はふつうは<ー>で表しますが、「ああ」ではありません。舌があごの上下に当たらない英語独特の発音です。

  したがって、この<ー>の上も「--」をつけることにします  【ー】。

  スーパーの「スー」の「ー」とは異なる文字になります。

  RIVER は 【リ】ヴァ【ー】       

  SUPER は スーパ【ー】

  FIRST は ファ【ー】ス[ト]

  THINKER は 【シ】ンカ【ー】

  SINKER は スィンカ 【ー】 

  TORNADO は ト【ー】ネイドウ