第64回 ベイスボール(野球):日本にあってアメリカにないもの? 一般 2007/11/13 閲覧(462)

  <野球アジアシリーズ>で中日ドラゴンズが優勝して2007年の日本の野球シーズンが終わりました。
  第一戦で敗れた韓国SKを決勝で破った(6−5)中日の落合監督は試合後、「勝ってほっとしている。安堵(あんど)感の方が先」と語ったそうです。アジアでの<野球先進国>日本のティームがどんなプレッシャーの中に置かれているかが知れますね。
  さて、今回は、そんな日本の野球にあってアメリカのベイスボールにはないものをいくつか挙げて、両国間の違いを見てみることにしましょう。
  まずは<セットアッパー>。
  救援中継ぎで<クローザー>の前に投げるピッチャーを日本ではこう呼んでいるようですね。ですが、アメリカにはこう呼ばれる役割がありません。
  いえ、同じ役割のピッチャーは、当然、いるのですが、彼らは<セットアップ・メン>(複数)と呼ばれているのです。
  なぜか?
  ここからは野球のではなく英語の話になります。
  ピッチ(PITCH)する人がピッチャー(PITCHER)、キャッチ(CATCH)する人がキャッチャー(CATCHER)、ゲイムを締めくくる(CLOSE)人がクローザー(CLOSER)だから、セットアップ(SET UP)する人はセットアッパーだろう‐と日本の野球界は考えているようですね。
  ところが…。
  <SET UP>では、<SET>は<PITCH>や<CLOSE>と同じく動詞で(ヴァレーボール VOLLEYBALLで使われる)<SETTER>の形になりますが、<UP>の方は、動詞について意味を強調する副詞だと考えられます。
  そして、その副詞は<er>を取って変形することがありません。形容詞にある<upper>という形はないのです。
  ですから、英語では<set-upper>ではなく<set-up man>としか名づけられないわけですね。
  野球には、当然ながら、英語があふれています。しかし、その英語の多くが日本風に歪められてしまっています。ここにも英語を学ぶ機会があるのにと思うと、残念でもったいなことです。
  日本でもいくらか知られているでしょうが…。
  <デドボール DEAD BALL>もアメリカにはありません。
  <DEADEND(行き詰った)>などで普通は<デッド>と発音される<DEAD>が日本の野球では<デド>と言われていること‐ではありません。
  <デドボール>はあめりかでは<ヒット・バイ・ピッチ HIT BY PITCH>です。なぜ<デドボール>ではいけないのかというと…。
  <DEAD BALL>というのは、試合中にボールが<DEAD 死>状態になった状況を指す用語で、そこでは、審判が次に「プレイ」の声を上げるまで、どんなプレイも中断されます。
  ピッチャーが投げたボールがバッターに当たれば、審判はプレイを停止させますね。あの状態が<DEAD BALL>で、プレイ中のボールがダッグアウト(ベンチ)に入っても、観客席に入っていないボールを観客が触っても、そこで審判は<DEAD BALL>を宣言します。
  <DEAD BALL>は本来<LIVE BALL>(生きている、プレイ中のボール)に対する言葉で、<デドボール 死球>だけを意味するものではなのです。
  <ホワボール>というのもアメリカにはありません。
  <ベイス・オン・ボールス BASE ON BALLS>と言います。<ボールが(四つ)重なったので得たベイス>というわけですね。
  日本でも、数を数えるときにはワン・ツー・スリー・フォーと発音することがほとんどなのに、野球になると<ホワ>になるのも、おかしな現象だと言えます。
  アメリカには<バックネット>も<バックスクリーン>もありません。
  <バックネット>は、ネットがグラウンドから直接ではなく、コンクリートの壁などから張られていることも多いからでしょうか、もっと広く<BACK STOP>と呼ばれます。
  <バックスクリーン>は、ヤンキー・スタディアムのように、そもそも<スクリーン>自体がない球場も多く、それがある場合でも、特別な呼称はないようです。
  ついでに言えば、<バックスクリーンに入った>というのも変に聞こえます。<スクリーン>というのは平べったい構造物で、それに<当たる>ということはあっても<入る>ということはありえないわけですから…。
  日本では、キャッチャーの後ろとセンターの後ろをともに<バック>と呼んでいるわけですが、日本語よりはうんと論理的だと思える英語の使用者たちは一つの球場に<二つのバック>があることに違和感を抱くかもしれません。
  外野の<フェンス>もアメリカにはないようです。
  <ウォール WALL>と呼ばれています。
  アメリカン・フットボールでは観客が<D>という文字と、家庭の庭先にあるフェンス(FENCE 柵)を形取った切抜きを振りかざして応援する光景をよく見かけます。<DEFENSE ディフェンス 防御>をしっかりやってくれ‐というわけですね。
  アメリカ人にはふつう、ああいう隙間のある遮断物がフェンスで、球場の<フェンス>のように隙間のないものは<ウォールWALL>と感じられるのでしょうね。
  ほかにもたくさん例を挙げられそうですが、今回はこんなところで。

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