<朝鮮日報>(インターネット版)がこんなタイトルの社説を掲載したことがあります(2008年1月28日)。
<10年かけても使い物にならない英語教育に終止符を>
カリフォルニアに住んでいたときもそうでした。
新たに出会ったり知り合ったりする人たち(の中でそんなことに関心がある人)は、5人中4人以上の割合で、わたしに「あなたはコーリアン(韓国人)か?」と尋ねたものです。
韓国人の進出が目覚しいここフィリピンでもほぼおなじです。
「わたしは顔つきが韓国人ふうなのだろう」とずっと思っていました。…「なぜそう思う?」と問い返すわたしへの答えとして、何人ものフィリピン人から「いや、日本人は(ふつう、あなたほど)英語がしゃべれないから」という説明を聞かせられるまでは。
<日本人は英語が話せない>という“知識(先入観・偏見)”はフィリピン人のあらゆる層に広がっています。
「あんたは日本人のくせになんで英語がしゃべれるのか?」とさえ尋ねられたことも一度や二度ではりません。
多くのフィリピン人は<英語力に関しては、日本人よりも韓国人の方が上だ>と感じているわけですね。
その韓国の一流新聞が社説で<10年かけても使い物にならない英語教育に終止符を>と訴えています!
<今のような英語教育を10年間受けたところで、外国人の前に出ても照れ笑いをするのが関の山であり、そんな英語教育は金や時間の無駄でしかないということだ>というのです。
フィリピン人の受け取り方はどうであれ、英語教育に関する韓国の実情は、どうやら、日本のそれとあまり違いはないようですね。
<朝鮮日報>は四つの提案をしています。
1)小学校における英語教育時間を増やすこと(中国では小学校1−2年から年間75−105時間ずつ、マレーシアでは小学校1−3年から年間116時間英語の授業が行われている)
2)有能な英語教師を増やすこと(英語学校の教師や海外在住歴のある人などのうち、資格のある人を教師として採用するとともに、現役教師の研修にも力を入れるべきだ)
3)レベル別のクラス分け(海外で生活したことのある子どもや、幼いときから英語を勉強している子どもと、これから始める子どもを一緒に教えようとすると、授業の効率が下がってしまう)
4)幼いころから常に英語に接する環境を整備すること(英語の映画やドラマ、ドキュメンタリーを吹き替えなしで放送するテレビチャンネルを開設することだ)
社説はほかに<マレーシアは2003年から小学校の数学や科学の授業を英語で行っている>という事例も紹介しています。
南カリフォルニアでの韓国系コミュニティーの成長ぶりを反映して、1990年代の半ばごろから<ロサンジェルス・タイムス>紙には、韓国とその文化・社会を紹介する記事がしばしば掲載されるようになっていました。
例えば…
*アメリカ国内で生まれた者は(移民法上で親の状態がどうであれ)アメリカ国籍を取得することができる−という法規を活用し(息子に将来の兵役を避けさせ)ようと、出産直前の(富裕)韓国人女性が最近多数来米してきている
*韓国内では手軽に美容整形手術を受ける(特に)女性が急増していて、その分野の医院が大繁盛している
…というような記事です。
さて、英語に関してはこういうのがありました。
*韓国人が英語の<r>と<l>をちゃんと区別して発音できないのは口の中−特に舌−の構造に問題がある−舌が短い−という“学説”を信じて、子供たちに舌を長くする手術を受けさせる親が数多くいる
どうです?
英語に対する韓国人の“思い”と“姿勢”がよく読み取れる、と思いませんか?
韓国人よりも英語が話せないと見られている日本の状況はどうでしょうか?英語教育の充実・向上に国はどう取り組んでいますか?
民間の(<駅前留学>などと喧伝するだけの)機関に任せすぎてはいませんか?
英語教材を買いあさったあげくに空しく挫折してしまう人が多すぎはしませんか?
経済力の縮小、人口の減少…
日本の現在と将来の問題をいくらかでも小さくするためには、あらゆる面で国際化の促進、国際交流の拡大が必要です。それを支えるのは、間違いなく、国全体としての英語力です。
文部科学省は、歴史教科書の復古を進めることなどに現を抜かすのではなく、日本(国民)の英語力向上に真剣に取り組むべきです。
そうしなければ、<小学校の数学や科学の授業を英語で行っている>マレーシアに後れをとる日が必ずやってきます。
<朝鮮日報>はそれが十分に分かっているのです。
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