数週間前に、調理用の計量カップを買おうと、あるデパートにでかけました。500ミリ・リッターぐらいまで計ることができて、マイクロウェイヴ・オウヴンでの使用に耐えられるもの−にしようと決めていました。
店員さんが初めに見せてくれたのは、プラスティック製の2点。それぞれ70ペソ(180円ほど)前後で、買いやすい値段でしたが、アイクロウェイヴ・オウヴンでは使えないということでした。
使えるものを−ということで店員さんが出してきたのが250ミリ・リッターまで使えるガラス製の、見かけも立派なもの。ところが、その値段を見ると、360ペソ(900円ほど)(1ペソ=¥2.5で計算)。
これはほぼ、マニラ首都圏で働く労働者の最低賃金一日分(今月中に20ペソ引き上げられて382ペソ)に相当しています。
主に好奇心に駆られて、500ミリ・リッターまで計れるものはないのかと尋ねると−。出てきたものについていた値段はおよそ500ペソ!
<その最低賃金で働いているに違いないこの店員さんが一日半以上働いてやっと稼ぐ額の…計量カップ!!> その場で買うことがわたしにできませんでした。
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ところで−。
フィリピンのマニラ首都圏の5人家族が食べていくのに、最低限で、いま、いくらぐらい必要だと考えられていると思いますか?
食費だけです。
The National Statistical Coordination Board が言うには197ペソ(500円弱)です。 一人100円は必要だ−というわけです。
食料品の値段がことしほどではなかった2006年は1日に162ペソ(400円強)だったそうです。
ただ、フィリピン(特に首都圏)では物価上昇が進んでいます。
上のBoardのRomulo Virola事務局長は<食料と石油のいまの高騰ぶりを考えると、この197ペソでも足りないはずだ>と述べているそうです。
比較するためにつけ加えておきますと−。家族5人がなんとか一日食べていけるはずだとされる、その192ペソでサッポロ・ラーメン一杯が食べられる日本食レストランはマニラ首都圏にはないのではないかと思われます。
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人びとがこれ以下の収入だと“貧困層”に属すると政府が考える<貧困ライン>についてはどうでしょうか?
上と同じ家族の場合、2006年は一日282ペソ(700円強)でした。それがことしは343ペソ(およそ860円)にまで上がっています。
この層の家族は、250ミリ・リッターまで計れて、マイクウェイヴ・オウヴンででも使えるあの計量カップの値段分の日収があれば、「自分たち5人家族は“貧困”ではない」と言える暮らしができる−というわけです。
統計上では、労働者の一か月間の労働日数は22として計算されるようです。
最低賃金382ペソ(1日)で働く人の月収は8404ペソ(およそ2万円)になります。
かりに、この人が5人家族を支えなければならないとしたら、192ペソx30日=5760ペソの食費のあとには2644ペソしか残りません。いうまでもなく、こんな暮らしは成り立ちえません。
フィリピンでは、多くの家族で、(働くことができる)その構成員がそれぞれ9000ペソ、4000ペソ、2500ペソなどの収入を得て、それらを足して、なんとか暮らしを立てているというのが実状だと思われます。
マニラ首都圏には立派なショッピング・モールがいくつもあります。ブランド品を売る店を中心にしたモールもあります。
しかし、こういう高級ショッピング・モールを支えているのは、国民全体の中の最上層2パーセントの人びとだそうです。
一日200ペソ弱(500円強)で5人家族が食べていけるとされるマニラ首都圏には、そんな高級モールで、一人200ペソを使って昼食をとる人たちもいるわけす。
<貧富の差>
首都圏内だけでこの通りです。ですから、収入源が少ない地方に目を向けると−。
フィリピンはいまだに“問題だらけ”の国です。
これだけ長い年月、行政府と立法府が無策でありつづけているのだからシカタガナイ?
それでは国民がかわいそうだと思うのですが−。
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=2008年6月4日 「マニラ・タイムズ」の記事から=