第349回 筋が通った説明ができない主張は間違っている

  7月31日の「BLOGOS」に【「安保法を通そうとしている国会議員には立法する正統性がない」 一人一票運動の升永英俊弁護士が指摘】という記事が掲載されました(http://blogos.com/article/125566/)。「苦言熟考」が【第295回 特定秘密保護法 “違憲状態”のくせに?】や6月8日の【「違憲状態」の国会には、それが何であれ、そもそも重要法案を審議する資格はない】で述べていたことと同主旨でありますので、ここに紹介しておきます。               *

  金園社の「すぐに役立つ ニューポケット タガログ語」という小冊子の中で紹介されていることわざの一つにこういうものがあります。
  Ang katotohanan kahit na ibaon, sisingaw pagdating ng panahon. その英語訳は Even if you bury the truth, it will surface in time. 「真実は、たとえ埋められても、やがておもてに現れる」という日本語訳でいいでしょうね。
  フィリピンのNational Book Storeが出版している“TAGALOG-ENGKISH DICTIONARY”には Ang katotohanan ay di-nagbabago.という例文が挙げられています。英語訳:Truth never change. 日本語でなら「真実は不変だ」ということです。
               *
  自民党公明党とがいま、狂気に駆られて成立を目指している「亡国好戦法案」をどう受け取ればいいのでしょうか?
  複雑に考えることはありません。真実を知るには平易に考えればいいと思いますよ。
  「平易に考える」とは、たとえば、こういうふうに頭をめぐらせてみることでしょう。
  *ある主張に筋が通っていれば、人は、筋を通してそれを説明することができる
  *ある主張に筋が通っていなければ、人は、筋が通らないようにしかそれを説明できない
  *ある主張を説明するときに、その説明に筋が通っていなければ、その主張自体が間違っている
               *
  安倍“のぼせあがり”自民党と山口“へつらい”公明党が成立させようとしている「亡国好戦法」は、その主張内容にも説明内容にも、まったく筋が通っていません。
 説明内容については、とりあえず、【首相の例え話に身内も「??」 自民総務会「分かりにくい」】東京新聞 2015年7月23日 (http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015072302000121.html)に目を通してください。
               *
  こういう記事もありました。
  <首相は二十一日に民放BSの番組を収録。「残念ながら(安保法案に)厳しい批判がある。きっちり説明する責任が私にはある」と強調。安保法案の柱となっている他国を武力で守る集団的自衛権については、自宅と他人の母屋、その離れにたとえて説明。「(離れから)火の粉を含んだ煙が来て、自宅に火が移る明白な危険の時に、離れの消火活動に入る」と述べた> 東京新聞 2015年7月22日 【首相、異例の長時間TV出演 安保で連日たとえ話】http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015072202000119.html 
               *
  安倍“甘やかされ”首相のたとえ話はいつも、その事態がすでに発生したところから、その発生を自明のこととして始まります(ほら、「友人のアソウ君が町でだれかに殴られたら」で始まって「僕は殴った人に仕返ししにかかる」と短絡してしまうように!)。ですから、ここでの場合だったら、たとえば「どういう防火対策を普段から採っていたか=戦闘行為に突入しないためにどんな外交をやってきたか」「入るというその消火活動に危険はないのか=戦闘行為に突入してしても、危険は生じないのか」などの点を前もって考慮しておくという視点がこの首相にはまるで欠けているということです。
  「(他人の離れで)武器を使用して行う可能性が高い反撃」を「(他人の離れの)消火活動」と、途方もなく非現実的に表現してしまう程度の頭脳しか安倍首相は持っていないということです。
               *
  そりゃあ、消火活動にも危険はつきまとうに違いありません。しかし、言うも恥ずかしいぐらいに明らかなことですが、「火の粉や炎は機銃や大砲を撃ち返してはきません(ここでいう「消火活動」は、相手側にすれば、事実上の軍事行動なのですよ)」し、ましてや「火の粉や炎は、他人の離れの消火活動で手薄になったからといって自宅を狙って更に火を放ってくることもありません(相手が国際的なテロリストなら、「他人の離れ」だけではなく日本自体が狙われる恐れは十分にあるでしょう?)」
  戦争・戦闘行為と「消火活動」とでは、現実に起こることがまったく違います。ちょっと、普通に考えてみればすぐに分かることです。現代の戦争・戦闘行為が「殴られたアソウ君のために仕返しをする」というような、子どもじみた、あるいは、町のチンピラなみの理屈で行われることは決してありません。
               *
  安倍首相が上のたとえ話で出した「離れ」は他人の家の「離れ」です。しかも、その「離れ」に火を着けたのは、実は、被害者面した「他人」自身だった、ということもあり得るのですよ。
  だって、ここで「他人」という呼称で想定されているのはアメリカです。アメリカはヴィエトナムででもイラクででも、ありもしない危険を喧伝して一方的に侵略戦争を始めた国なのですよ。それが必要となればアメリカは、日本を戦闘行為に巻き込むために自分の家の「離れ」に自ら火を放つぐらいなことはしかねない国なのですよ。
  「貧すれば鈍する」 経済的な疲弊のために、昔ほどの軍事費が使用できなくなったアメリカが安倍“好戦”首相を焚きつけて日本を戦場に引き出そうと躍起になっていることは、安倍「亡国好戦法案」をめぐるアメリカ政府高官の最近の一連の“歓迎”言動から容易に察しがつきます。
  そんな「他人」の「離れ」に着いた火を消すために、国民を欺いて、日本人の生命を捧げる?
                *
  【第343回 こんな戦争をやった国の言いなりに】 2015-04-15(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20150415/1429046296)をまた読んでみてください。
  <「ブッシュ大統領がまずイラクに侵攻することを決め、その決定の上に“いまにも倒れそうな、がたがたの”理由を取ってつけた」だけで一方的に突入した対イラク戦争!> <安倍政権(と自民党公明党)がいまその「言いなり」になろうとしているアメリカは、かつてはそんな理不尽な戦争ができる国、そんな戦争を現実に行った国だったのです。そしていま、「貧すれば鈍する」国に成り果てたアメリカの理不尽ぶりは、いっそう嵩じています。日本に対しては、軍事力を増強するようにと、あらゆる方面から執拗に圧力をかけてくるだけの国になっています> <なのに、安倍政権は、アメリカが地球上で今後も展開するかもしれない“理不尽な戦争”についてさえ、無条件で、嬉々として加わる道を選ぼうとしています> <戦後70年間にわたって、曲がりなりにも、世界に向かって発信しつづけてきた“平和愛好国家=日本”という像を安倍政権は対米「言いなり」政策で木っ端微塵に破壊しようとしています> <「戦後レジームからの脱却」=“壊憲”=“日本の再大日本帝国化”で安倍首相は、日本を真の愛国者が誇ることができない国に改変しようとしています>
  安倍“おお嘘つき”首相が強引に入手したがっている「集団的自衛権」とはそういうものでしかないのです。
               *
  【第317回 アメリカ “貧すれば鈍する”】2014-07-11 (http://d.hatena.ne.jp/kugen/20140711/1405026711)からも、少し引用します。
  <経済財政的に凋落しつづけるアメリカは“事の是非を考慮する余裕がない”国に成り果てかかっているのです。安倍晋三自民党政権は、狡猾なことに、そこを突いて暴挙に出たのです> <アメリカの凋落を悪用して日本を“歯止めのない軍事国家”にしようという安倍晋三自民党政権の暴挙に肩入れするしか、いまのアメリカ政府にはないというわけですね> <“貧すれば鈍する”> <自分の身の回りに目を向ければ理解できることですよね。ある状況を作り上げるために不正(卑劣)な手段を用いる者は、その作り上げた状況を、必ず、不正(卑劣)に利用しようとします。そういう者は、悪に悪を重なることを厭いはしません> <大量破壊兵器を隠し持っていると難癖をつけて対イラク戦争に突入したことがアメリカのいまの凋落の大きな原因となっているという事実> <自分が見たいように相手(対象)を見ることで過去に犯した失政(!ヴェトナム、イラクアフガニスタン!)>
              *
  「筋が通らない説明」については、新聞のほかの記事にも目を通しておきましょう。
  <首相は「アメリカ家」と「日本家」にかかる火事を例に説明している。20日の報道番組では模型を使い、21日のBS日テレの番組の収録でもフリップを使って熱弁した。民家火災という身近な例で、危険への対応の必要性を訴える狙いだ> <しかし、敵の存在が前提の集団的自衛権を災害の火事でたとえれば、無理も生じる。共産党山下芳生書記局長は21日の記者会見で「火事は消せばいいが、戦争は対応すれば相手から反撃を受ける」と指摘。民主党細野豪志政調会長は「(火事は)集団的自衛権の議論をする説明として極めてとんちんかんだ」と批判した> <首相が集団的自衛権で例示しているホルムズ海峡での機雷掃海については、日本からの距離もあり、火事の例え話では説明は困難だ。実際、21日のBS日テレで、キャスターからホルムズ海峡について問われると、首相は「(火事の例えで説明した)典型例とは少し違う」と話し、例え話での説明はしなかった> 毎日新聞 2015年07月21日 【安保関連法案:火事にたとえる首相の話…「とんちんかん」】 http://mainichi.jp/select/news/20150722k0000m010073000c.html
  外国軍との事実上の戦闘行為を単なる「消化活動」にたとえることには、とにかく、まったく「筋が通っていない」のです。
               *
  <安倍政権による、周辺諸国に向けた真摯な外交努力を、見たという記憶がありますか?> <安倍首相とその仲間連中を放っておくと、“戦争ごっこ”に興じたい“戦争知らず”の愚か者政治家たちにやがて、日本国民は、まずは自衛隊員から、無駄・無益に殺されることになります> <日本の選挙制度の歪みのせいで、単純過半数にもはるかに届かない得票数で得た、圧倒的な国会議席数を最大限に悪用して、居丈高な「聞く耳持たず」の姿勢であらゆる反対意見を圧殺し、国民を無視した政治を展開するというのが安倍首相なのです> 【第346回 安倍首相の恥知らずな「朝貢」外交】 2015-05-15 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20150515/1431635090
               *
  繰り返します。
  *ある主張を説明するときに、その説明に筋が通っていなければ、その主張自体が間違っている
               *
  安倍自民党と山口公明党による「亡国好戦法案」の説明にはまったく筋が通っていません。通るはずがありません。そもそも「亡国好戦法案」そのものに筋が通っていないのですから。
  90パーセント以上の憲法学者たちが意見だと断定しているこの法案を合憲だと言いくるめることができると狂信しつづけるほどの頭脳・理解力しか持ち合わせてない自民党公明党に「筋が通ったこと」が言えるはずがありません。
               *
  Ang katotohanan kahit na ibaon, sisingaw pagdating ng panahon. 「真実は、たとえ埋められても、やがておもてに現れる」
  「集団的自衛権」をめぐる自民党公明党の嘘は必ず暴かれます。
  日本国民は、亡国への道へと突き進む自民党公明党に必ず鉄槌を下します。
  万が一にもそうならなければ、日本国民は、中国や北朝鮮の人びとが強制されているのと同様の息苦しい毎日を過ごさせられるようになってしまいます。
               *