第350回 自民党の「常識」は国民の非常識

  「自分は日本の憲法学者のだれよりも憲法を勉強している」という(思い上がりと自己陶酔に浸りきっている)趣旨の発言をした、あの自民党高村正彦副総裁が今度はこんなことを"断言"したそうですね。「核弾頭を運ばないことは日本人の常識。排除規定はないが、あり得ないから(法律に)書いていない」 
  〖高村副総裁 核兵器の輸送「あり得ない」〗 東京新聞 2015年8月10日 (http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015081002000117.html) <自民党高村正彦副総裁は九日、松江市内であった党島根県連の会合で講演し、安全保障関連法案をめぐり、核兵器の輸送も法文上は排除しないとの中谷元・防衛相の答弁に関し「核弾頭を運ばないことは日本人の常識。排除規定はないが、あり得ないから(法律に)書いていない」と説明した> <高村氏は中谷氏に国会で質問した野党に対し「追及する人もあり得ないと分かっていて聞いている。あり得ない無意味な議論で不安をかき立てるのはやめてもらいたい」と批判した」>
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  自民党と安倍政権を無条件に支持しているとしか見られない産経新聞を含めたどの報道機関の世論調査の結果でも「安全保障関連=亡国好戦=法案は違憲である」との意見がゆうに過半数を超えていますよね。
  事実上、自民党の機関紙あるいは情報発信紙であることを社是としているらしい産経新聞自身の記事を見てください。〖安保法案、自公支持層では「必要」増 無党派は「不要」6割超に〗 産経新聞 2015年7月20日 (http://www.sankei.com/politics/news/150720/plt1507200023-n1.html) にはこう書いてありました。
  <(産経・FNNの合同世論調査では、安全保障関連)法案について、合憲・違憲のいずれの説明が納得できるかとの質問では「合憲」21・9%(同0・2ポイント増)、 違憲」59%(同1・3ポイント増)>
  「亡国好戦法案」は違憲である-というのが「日本人の常識」になっているということですよね。
  自民党(と公明党)の「常識」は日本国民にとっては非常識でしかない--ということです。
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  そうそう、高村・自民党副総裁の先の「自分は日本の憲法学者のだれよりも憲法を勉強している」という趣旨の断言も、冷静な"常識"の鏡に写してみれば、なんの根拠も証拠も示されていない、ただの妄信でしかありませんでした。
  いまの自民党とその党員たちが、その手の妄信にどれほどひどく頭脳を侵されているかを最大限に体現しているのが高村副総裁です。
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  上の産経新聞世論調査にはこういう個所もありました。
  <一方、「衆院で審議が尽くされたと思わない」との回答が計7割にのぼっており、「強引な採決」の印象が法案の支持・不支持に影響した可能性がある>
  自民党(と公明党)による「強引な採決」は、自民党支持一辺倒の記事や論調で経営をどうにか維持しているらしい産経新聞が抱えている世論調査対象者たちの目にさえ「衆院で審議が尽くされたと思わない」と見えたわけですね。
  あの「強引な採決」を良しとして、国民の意見=世論にはまったく目を向けようとしない自民党(と公明党)の「常識」は日本国民の目には明らかな非常識であるのです。
  つまり、大多数の日本人にとっては「亡国好戦法案」自体が非常識な法案である=「亡国好戦法案」は違憲である--ということです。
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  そんな非常識を押し通そうする自民党の高村副総裁が「日本人の常識」が何であるかを他者に向かって"講義"する?
  笑止千万という言葉がこれ以上に該当する例はほかにはあまり思いつきませんよね。
  「亡国好戦法案」を非常識なやり方で強引に採決した自民党(と公明党)党員たちには「日本人の常識」を論じる資格などはまったくありません
  筋を通して事を考える頭には、それはあまりにも自明なことです。
  「核弾頭を運ばないことは日本人の常識。排除規定はないが、あり得ないから(法律に)書いていない」ですって?
  「亡国好戦法案」を、常識では「あり得ない」強引さで採決した自民党(と公明党)なのですよ。この二つの政党が言いつのろうとする「あり得ない」が信じられるわけはありません
  ほら、「戦闘中の米軍を後方で支援する自衛隊が戦闘に巻き込まれることは"あり得ない"」という安倍晋三首相の欺瞞に満ちた"解説"も、「巻き込まれない方がおかしい」とする多くの軍事評論家などの常識とは凄まじいほどにかけ離れていますよね。
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  〖内閣支持率37%に 不支持は46%〗 NHK 2015年8月10日 (http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150810/k10010184961000.html
  安倍首相が、会長や経営委員などとして多くの「お友達」を送り込んでから、安倍自民党の主張・政策に反対する社会の意見や動きを伝えるニュースなどを目に見えるほど明らかに減らしたNHKの記事です。<NHKの世論調査によりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は、先月より4ポイント下がって37%、「支持しない」と答えた人は、3ポイント上がって46%でした> <支持しない理由では、「政策に期待が持てないから」が45%、「人柄が信頼できないから」が27%、「支持する政党の内閣でないから」が9%となっています>
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  いまの自民党に「人柄が信頼できる」党員はいったい何人残っているのでしょう?
  のぼせ上がりの自己陶酔者集団。
  聞く耳待たずのならず者集団。
  大日本帝国への回帰を夢想するカルト集団。
  アメリカへの無条件追随を"愛国の証"だと信じる卑屈な亡国者集団。
  平和主義・国民主権立憲主義を否定して日本の中国化、北朝鮮化を押し進める狂信者集団。
  「人柄が信頼できる」党員なんぞは皆無に近い--という印象を、日本国民の大多数が抱き始めているはずです。
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