第263回 日本の政治 無責任さが極まった

  きわめて無責任で、理不尽なことが恥ずかしげもなくまかり通るのが日本の政界です。
  近年の出来事でその最たるものは…。
  衆議院で一議席を得るために必要な得票数が選挙区ごとに大きく異なっている、いわゆる“一票の格差”がすでに違憲状態であるという最高裁判所の判断が示されていたのに、それが是正されることなしに、12月に衆議院議員選挙が実施されたことです。
  立法府(国会)は、本来あるべき司法、立法、行政の相互信頼関係を根底からつぶしてしまいました。「司法敬うに値せず」「事によっては脱法もまた悪しからず」と国会が国民に告げてしまったのです。日本は額面どおりの法治国家ではないと諸外国に向けて宣言してしまったのです。
  さらに悪いことには、こんな重大な居直りを立法府がやってしまったことを咎める声が、報道機関を含めて、国民のあいだにほとんどありません。日本人は総じて、順法という語には関心が(たとえそれが国の存在の根幹に関わることであっても)持てなくなっているのですね。日本人の精神的な、知的な、あるいは良心的な衰退ぶりがここでも顕著です。
  ここで筋を通さなければ、とはほとんどだれも思わない国!日本はいったいどこへ行ってしまうのでしょうか?
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  個人についていえば…。たとえば、石原「日本維新の会」共同代表。
  石原氏がまだ東京都知事だったころに行った不用意な(後先を考えない)「都による尖閣諸島買い取り」宣言で、自動車や電子機器業界をはじめとする日本の産業界はいくらの金銭的ダメッジを受けたのでしょうか?(経済専門家が行った試算をまだ見ていませんが…)数千億円という数字で間に合うのでしょうか?長い目でみれば、数兆円という規模に達するのかもしれませんね。なのに、石原氏がそのこと=自分の思慮が足りなかったために計り知れない損害を与えたことを産業界に詫びたという話は聞こえてきません。石原氏がどれほど無責任な政治家であるかが、このことからも分かります。石原氏は「自省」という言葉を知らないとしか思えません。
  その石原氏は都知事時代に(これも、おそらくは、ほとんど一時の思いつきで)新銀行・東京を発足させたことがありましたね。しかし、経営に失敗した同銀行はわずか3年間ほどで1000億円の赤字を抱えて、事実上、破綻してしまいました。追加支援資金も400億円は支出されたはずです。都民の税金がそれだけ無駄に費やされたわけです。なのに、これについても、石原氏が都民に真摯に詫びたというニュースは聞いたことがありません。
  石原氏は霞ヶ関の官僚を目の敵にしている(ふりをしています)が、同氏の行動の無責任、理不尽ぶりは官僚機構と変わるところがありません。いえ、それ以上なのかもしれません。
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  12月の衆院選は無効だ、と言い出さないのがいまの日本人です。政治がこんなに無責任に運営されていても、それはかまわないということなのでしょうね。
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  ついでに、いくらかは衰えたとはいえ、その人気が(特に近畿地方では)まだ高い橋下徹大阪市長
  たとえば、(ちょっと一本気すぎたといえるのかもしれませんが)若いころに思いが嵩じて恋人の名を入れ墨で体に残した者がいたとします。さて、その人物と、妻とこどもたちを欺いて、高級クラブか何かで働く女性と浮気を重ねたタレント弁護士のどちらが、人間としてより信用できますかね?
  のちに浮気がばれて妻や子供たちを泣かせ、彼らに恥ずかしい思いをさせたような(倫理を欠いた)無責任な不貞、浮気男が地方自治体の首長(クビチョーではありません!)におさまって「体に入れ墨があるような者は(その理由と内容は問わずに)公務員に向かないので、とにかく(一律に)辞めさせる」と息巻く?国政を変える?府民や市民がそれをありがたがって聞く?
  政治家に必要なのは倫理意識ではなくて実行・統治力だですって?…どこかがおかしいのではありませんか。
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  とにかく、政治家というのは、自分の醜い姿は見ないでいられるという特異な資質を持つ者にしか務まらないものであるようです。