第276回 「国のためだ。喜んで餓死しろ」

  憲法改変を急ぐ安倍首相と自民党の驕れる姿を事あるごとに見せつけられるいま、これぐらいのことは言っておくべきだという思いにとらわれています。
  これぐらいのこと、というのは…
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  勝ち目がないことが分かっていたのに無謀にも対米戦争にまで突入した結果として、“兵器や銃砲弾、食料、医薬品などを補給しつづける計画も能力もない状態で、(いわゆる)中国大陸やインドシナ、太平洋上の島々などに300万人以上の日本兵を送り込み、そのうちの大半を餓死あるいは傷病死させた”あの大日本帝国の政府と軍部のどこに問題があったかについて真剣に考えようとはしない、あるいは、あの政府と軍部をまったく批判しようとしない政治家(人間)たちを信用するのは、もうやめようではありませんか。
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  日本の戦争犯罪を裁いた東京裁判を、勝者が敗者に押しつけたものだとして退けるだけで、大日本帝国=あの政府と軍部による狂気の“300万人以上の日本兵殺し”については自ら裁こうとはしない、裁くことを求めない政治家(人間)たちの、いったいどこが信用できるというのでしょう?
  大日本帝国が中国大陸や朝鮮半島インドシナ、フィリピンなどで現地の民間人をどれほど殺戮したかについてはいま問わないことにしても、あの政府と軍部が犯した“人間に対する罪”の大きさは明らかでしょう?
  無能かつ無責任であったためにあの政府と軍部が犯した“300万人以上の自国民殺し”。餓死、傷病死。“玉砕”という名の下の、強制された集団自殺
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  憲法改変を通して“強い日本”=大日本帝国へと回帰することを夢見ている安倍首相と自民党の最終的な狙いは“たとえ政府や軍部が無能で無責任であっても、その政府や軍部の言うことを黙って聞いて、国のために喜んで死んでいく人間を再び作り出そう”というところにある、としか考えられません。
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  母方の叔父が南方(ビルマミャンマー)で戦死させられています。この叔父の名も靖国神社に記録されています。  
  憲法改変を画策する政治家(人間)たちが、明治以来の戦死者を靖国神社に祀って“英霊”と呼ぶのは、ちょうど、母の家族の一人息子であったその叔父が自ら望んで出征していったように、国民に再び“国のために喜んで死んでもらおう”と腹の中で考えているからに違いありません。その国がどんなに住みづらい、不自由な国であろうと。その国の指導者たちがどんなに無能かつ無責任であろうと。
  ちなみに、母の祖父に当たる人は日露戦争を(乃木希典大将が率いた部隊で)戦って、金鵄勲章を受章しています。
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  安倍首相と自民党が必要だとしている“愛国教育”とは、政治的に、経済的に、倫理的に、日本がどれほど劣悪な国になっても、あるいは、日本をそんな国にしてしまうほど指導者たちが無能かつ無責任であっても、そんなことには気づかないままで、自らの命をその国のために望んで捧げる国民を育てよう、というものです。
  4月28日の“新造”「主権回復の日」の記念式典で安倍首相が行った“天皇陛下万歳”の三唱がその証拠の一つです。
  “たとえ食料や銃砲弾、医薬品が届かない戦場に送り出されても、あの大日本帝国時代の日本人がそうしたように、“天皇陛下万歳”を唱えながら嬉々として死になさい!”
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  仮に、望むように憲法改変ができたとして、安倍首相と自民党は、そのあとの日本をどういう国にしようというのでしょう?何も語らないではありませんか。語るものを何も持っていないではありませんか。
  彼らが唾棄する現行日本国憲法には、全世界に向かって堂々と告げることができるそれがあります。平和国家、戦争放棄…。
  安倍首相と自民党が望んでいる日本は「政府・権力が命じることに国民が黙って従う国」という、すこぶる反民主=国家主義的なものです。「平和国家」や「戦争放棄」などという理念を邪魔だとしか感じない、いまの北朝鮮を思わせる軍事国家です。
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  もうすっかり明らかではありませんか。
  問題は、“出征させた自国民300万人余のほとんどを餓死または傷病死させた”大日本帝国の過ちを認めようとしない臆病者、卑怯者たちが好き勝手に日本を動かそうとしているのをまだ見過ごしつづけるのかどうか、ということです。
  大日本帝国の“栄光”という虚像にすがりつかなければ日本の未来像が描けない、肯定的な想像力に欠けた政治家(人間)たちにこれからの日本づくりをこのまま託しつづけるのかどうか、ということです。
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  考えてみてください。いま憲法改変を画策している政治家(人間)たちの中に“国に見捨てられた戦場で「天皇陛下万歳」と唱えながら餓死する覚悟”ができている者が何人いると思いますか?殊に、数代に及ぶ世襲議員である“貴族政治家”たちの中に?
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  真の愛国者がいま取るべき姿勢は、たとえば、違憲議員が少なからず含まれている違憲国会だというのに、そこで平気で憲法改変を論じようというように、物事を筋を通して考えることには何の関心もない“無法・横道者”たち=安倍首相と自民党の傲岸・驕慢を絶対に許さない、というものであるべきです。
  亡国への道を彼らにこれ以上歩ませてはなりません。
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  2006年の11月23日のエッセイ「第35回 恐怖の<愛国教育>」 http://d.hatena.ne.jp/a20e2010/20110722/1311287762にも目を通してください。
  さらに気が向いた人は「第50回 安倍首相の辞書には<セクハラ>はない?」 http://d.hatena.ne.jp/a20e2010/20110726/1311645919
  「第51回 進路を間違えたのでは、安倍首相?」 http://d.hatena.ne.jp/a20e2010/20110723/1311374584
  「第40回 “自虐”好きなのはだれ?」 http://d.hatena.ne.jp/a20e2010/20110722/1311291419 もどうぞ。
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