第225回 国民をばかにしているのはあなたです、小沢さん

  民主党元代表である小沢一郎氏が自己保身以上のことを考えているとはますます思えなくなっています。小沢氏は、自己保身のためには、民主党執行部がやることには何でも反対する(旧社会党なみの)“野党”根性に染まりきって、建設的で発展的なことがまったく言えない政治家になっています。
  次の記事を見てください。
  【消費増税「国民バカにすると鉄つい下る」小沢氏】(2011年12月1日19時57分 読売新聞)
  <民主党小沢一郎元代表は1日夜、東京都内で開かれた同党衆院議員の政治資金パーティーであいさつし、野田首相が目指す消費税増税について、「政権交代の原点に返り、国民の信頼を取り戻さないといけない。国民を無視し、ばかにすると、必ず大きな鉄ついが下される」と厳しく批判した>
  小沢氏は、自分自身の“政治とカネ”に関わる問題について、いつでもどこででも説明する、などと言いながら、結局は、検察審査会に起訴されるまで、理屈に合った説明は何もしませんでした。起訴されると、それを待っていたかのように、刑事事件で起訴された者に“説明”を求めるのは日本の法律(とその精神)を知らないからだという逃げ口上を居丈高に叫び上げ、居直ってしまいました。要するに、初めから“説明”する気はなかったのです。言い逃れをつづけていれば、そのうちになんとかなる、と(小沢氏の口から何かをじかに聞きたいと願っていた80パーセントの)国民をばかにしつづけていたのです。
  「苦言熟考」は、自身が起訴される恐れがある人物に(そのせいで自分が有罪にされるかもしれないようなことを話す義務や責任、つまり)“説明責任”はないと、野党や報道機関の愚かな“説明”要求から小沢氏を、いわば、かばってきましたから、小沢氏の逃げ口上の内容に格別の異議はありません。しかし、この問題について小沢氏が、いつものことながら、言を左右にして、誠意ある態度を国民にまったく見せなかったことが、政治を無用に停滞、混乱させ、民主党の手足をしばり、政権交代の意義をいちじるしく薄めてしまった、と考えています。小沢氏の不誠実さが、民主党がさきの参議院選挙で負け、国会が“ねじれ”状態になってしまった大きな原因の一つになった、と信じています。
  強調します。政治とカネ”の問題に関して小沢氏が「国民を無視し、ばかに」しつづけたために、あの参院選民主党は早々と(一回目の)「大きな鉄つい」を下されたのです。参院選の前に「国民の信頼を取り戻さなければいけな」かったのは小沢氏自身だったのです。小沢氏がそうしていた(ことに加えて、鳩山元首相があれほど愚かでなかった)ならば、あの参院選民主党はあれほど大敗することはなかったはずです。
  自分の過去の言動を省みることなく、とにかく目の前の“敵”を攻撃して衆目を曇らせ、自己保身に走る、というのは、(自民党の石原幹事長を含めて)多くの政治家に共通する悪質な習性です。中でも、小沢氏はその習性を磨き上げた(日本政界で最高の)自己保身の達人です。
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  「政権交代の原点」と小沢氏がいまだに言いつづける理由もそこにあると思います。次の記事を見てください。
  【「民主党立て直したい」=小沢氏】(時事通信 2011/12/05)
  <民主党小沢一郎元代表は5日夜、都内のホテルで同党参院議員9人と会食した。出席者によると、小沢氏は「国民生活のために民主党を立て直したいと心から思っている」と強調><小沢氏は会合で「国民に約束したマニフェスト政権公約)を堅持することは重要だ」と述べ、消費増税に重ねて反対を表明。「今の民主党政権が果たして国民の生活を守ることができているのか」と、首相の政権運営を批判した>
  民主党が「国民に約束したマニフェスト政権公約)」を国民が支持したから、あの衆院選民主党政権交代を実現したのだ、という小沢氏の主張には根拠がありません。選挙前後の世論調査の結果を思い返してください。(「脱・官僚依存」と「無駄の排除」を除けば)「こども手当て」を代表とする重要な政策について、国民の過半数は反対していましたよね。あのマニフェストがそのままで「国民の生活のために」なると考えたのは国民の中の少数派でしたよね。なのに、そんな政策を「堅持することは重要だ」といまだに小沢氏が言い張るのは、それらの政策決定に小沢氏自身が深く関わっていたからです。民主党内での自己保身のためには、小沢氏は、あのマニフェスト(つまり、自分)は正しかった、と言いつづけるしかないのです。
  しかしながら、あの衆議院選挙で民主党が勝ち、政権交代が実現したのは、あくまでも、国民が自民党(と公明党)による政権運営にうんざりしていたからです。民主党マニフェストは、いくらか足しになった、という程度の働きしかしていません。
  それに、あのマニフェストをそのまま実行するカネがどこにありました?資金の裏づけはまったくなかったのですよ。カネがないと分かっていたのに、いわゆる“ばらまき”政策をマニフェストにまとめあげたことを小沢氏は、むしろ、国民に詫びるべきなのではありませんか?
  そこに起こったのが、東日本での地震津波原子力発電所の事故。いまの日本には、政権交代時以上に、カネがありません。
  そのカネをどこから持ってくるかについて黙して語らないままで=そのための方策を持たないのに、小沢氏にはどうやって「国民の生活を守る」つもりでしょうか?無責任極まりない、というのはこういうことなのでは?
  小沢氏が「消費税に重ねて反対」するのは、一つの政治的主張として受け入れられます。しかし、消費税の増税で野田政権が得ようとしている額に相当するカネを小沢氏はどこから捻出するというのでしょう?カネがないのにどうやって日本の財政を健全化させ、社会保障を維持し(特に将来の)「国民の生活を守る」つもりなのでしょう?
  カネを捻出する当てもないのに小沢氏がそう主張するのは、結局は、消費税を上げれば次の選挙で民主党が負けると小沢氏が信じているからだ=増税を容認して次の衆院選に臨めば、選挙基盤が弱い新人が多い小沢派が壊滅的な打撃をうけることが明らかだからだ、との一部の“専門家”の見方には強い説得力があると思いませんか?
  小沢氏は、要するに、面子を保ち、自己保身を図ることしか考えられない政治家なのです。建設的なことができない“壊し屋”政治家なのです。「国民の生活のために民主党を立て直したい」というのは“「国民の生活のために」という口実を最大限に悪用して、できれば、民主党内で小沢派の確固たる地位を保ちたい”ということなのです。
  それでも、小沢氏を支持するグループの中にすでに“小沢派離党=新党結成”をにおわせる動きも出ているそうですね。小沢氏が「国民のために民主党を立て直したい」と言うのを、少なくとも一部の支持者たちは初めから信じていないのです。この人たちは、次の選挙で自分たちが当選するにはどうするべきか、としか考えていないのです。小沢氏の“子分”にふさわしい人たちです。
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  小沢さん、「国民を無視し、ばかにする」のはもうやめてください。愚かで無責任な主張を繰り返すのはやめてください。(できれば、近年の日本政治史上で最大の国際的な“恥さらし”である鳩山元首相を道連れにして)すぐにも政界から引退して、国民の心を安らかにしてください。あなたはとうに、国民の生活向上に役立つ政治家ではなくなっているのです。あなたは(それをどう入手したかはともかくとして)政治選挙資金を作ったり集めたり、“有効”に使ったりすることに他の政治家たちよりは長けているだけの政治家です。そのことを自覚してください。恥を知ってください。
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  国民=有権者は次の選挙から、建設的な対案を提出できない、口先だけの“自己保身”政治家たちを落選させていくべきです。それが国民の生活を(自ら)守るために残された道です。
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  【鳩山・小沢両氏が会談、消費増税反対で一致】(2011年12月22日19時21分 読売新聞)
  <民主党の鳩山元首相と小沢一郎元代表は22日、東京都内で会談し、野田政権が目指す消費税増税について、「来年はもっと経済情勢が厳しくなる。消費税論議どころではない」として反対する考えで一致した>
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  【「原点外れたら辞めた方が…」鳩山氏が政権批判】(読売新聞 2011年12月25日20時30分)
  <民主党の鳩山元首相は25日、岡山市で開かれた同党参院議員の会合であいさつし、「必ずしもマニフェスト民主党政権公約)通りにことが進まず、心を痛めている。選挙で掲げたことを実現していくのが私たちの役割だ。原点を外れたら、政治家は辞めた方がいい」と述べた>