第196回 これも重要ニュースでは? 空自松島基地の“大敗戦”

  <<F2戦闘機18機など水没 松島基地、1機120億円>>
  <防衛省によると、今回の地震航空自衛隊松島基地宮城県)で、空自F2戦闘機18機のほか、T4練習機、U125救難捜索機など10機が水没した。同省幹部は「海水にかなりつかってしまっており、場合によっては使えなくなってしまうかもしれない」という。F2は1機約120億円>(2011年3月12日1時29分 朝日新聞
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  <<F2支援戦闘機など全滅…空自松島基地>>
  <航空自衛隊松島基地津波で、大きな被害を受けた><滑走路など基地全体が水没したほか、基地内にあった航空機も全滅するなど、壊滅的な被害を受けた><海岸から1・5キロほどに位置する同基地には11日、津波が約2メートルの高さまで押し寄せ、建物の1階が水につかった。約900人の隊員は全員避難して無事だったが、基地内にあったF2支援戦闘機など固定翼機24機と、UH60J輸送ヘリ4機の計28機すべてが津波に流されたり、水につかったりして使用不能になった>(2011年3月17日13時57分 読売新聞)
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  上の朝日と読売の記事を読んだだけで判断するしかないのですが、自衛隊松島基地の滑走路が地震で壊されて戦闘機などが飛び立てなかったということではなさそうですね。基地は大津波にやられた、ということのようですね。
  長い滑走路がなくても飛び立つことができる輸送ヘリも「使用不能になった」のですからね。
  一機120億円のF2戦闘機が18機「使えなくなって」しまったのなら、被害額はそれだけで2,160億円ということになります。
  大地震のあとに出された大津波警報を、何らかの理由で、松島基地は無視したのでしょうね?
  それとも…?
  警報が出されてから津波が押し寄せるまでの時間は、地域によって異なるようですが、30分間から1時間ほどあったはずです。
  その間に一機の戦闘機、ヘリコプターも離陸させられなかったのですね、松島基地は?
  まあ、こういう想定はしたくないのですが、これは、たとえば、北朝鮮から飛来してきた爆撃機などが十分に日本上空に辿り着ける時間なのではありませんか?
  北朝鮮の政府と軍部は航空自衛隊松島基地のこの大失策を知って、おそらく、ほくそえんでいることでしょう。おい、やつらには防空能力はないも同然だぞ、というふうに。
  いや、北朝鮮から攻撃に備えるのは日本海側に位置する航空自衛隊だから、などという言い訳はここでは許されませんよ。いま問題なのは、全体としての航空自衛隊がどうなのかということですから。30分間あっても一機も離陸させられない航空自衛隊
  日本の防衛体制に重大な欠陥があることを、航空自衛隊は全世界に見せてしまったのです。
  消防や警察などとともに、過酷な条件の中で、東日本大震災の被災地で救助復興作業に従事している個々の自衛隊員の労をねぎらう気持ちに変わりはありませんが、大災害と戦う前に起こった松島基地のこの“大敗戦”を軽視してはいけないのではありませんか?
  “後出しじゃんけん”で菅首相や政府を批判、非難することが好きな報道機関やジャーナリストたちが、航空自衛隊のこの“大敗戦”をその後は報じないし、論じもしないのはなぜなのでしょうか?
  彼らには、日本の国防力の欠陥などはどうでもいい問題なのでしょうかね。そうではなくて、そもそも、事の重大さがまったく理解できていないのでしょうか?
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  日本が悪くなっているような気がしてなりません。
  それでも…。
  「負けるな 被災者」
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  <<自衛隊、沿岸部の被害状況確認にヘリ5機>>(2011年4月8日1時41分 朝日新聞
  <東北の被災地で活動している自衛隊統合任務部隊によると、8日午前0時(大きな余震のほぼ30分後:a20e註)に各地の駐屯地から計5機のヘリコプターを離陸させ、沿岸部の被害状況を確認しているが、午前1時現在、目立った被害は見あたらないという。地上部隊は、津波を避けて内陸部を捜索しているが、夜明けを待って、沿岸部に入ることにしている>
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  <<>>天声人語  2011年10月14日(金)付
  <一方で、「羽があるのになぜ」と思わせたのが、宮城の航空自衛隊松島基地津波を浴びた戦闘機である。1機110億円で買った18機が水没した。うち12機は処分、6機は修理されるが800億円かかる。「お粗末」という投書が先の声欄に載った▼被災機が修理可能かどうかを見る分解調査だけで136億円かかった。これだけで、あの凍結された公務員宿舎の総工費を上回る。あれやこれや計1090億円を防衛省は第3次補正予算に要求した。羽が生えたように血税が飛んでいく▼離陸には時間がかかり、間に合わないとの判断だったという。無理をすれば人命も危なくなる。それは分かるとして、これだけの損失と出費を、気前よく不問には付せない国民も多かろう▼予想される津波にハード、ソフトでどんな対策を講じていたのか。よもや「想定外」ではあるまいが、ならば不作為の責任はなかったか。次期戦闘機という総額1兆円規模、ピカピカの買い物の前に、進んでの検証と開示が欲しい>