第197回 小沢・鳩山氏 “後出しじゃんけん”でも敗北

  <<「レベル7、いまさら何だ」=小沢氏、鳩山前首相と会談>>(2011/04/12-23:42)時事
  <民主党小沢一郎元代表は12日午後、都内で鳩山由紀夫前首相と会談し、福島第1原発事故の国際評価尺度が「レベル7」に引き上げられたことについて、「もともとチェルノブイリ並みだと分かっていたのに、いまさら何だ」と政府の対応を批判。鳩山氏も「(対応が)遅い」と応じた>
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  小沢・鳩山両氏は、長いあいだ、何かを公的に発言するたびに、二人の頭脳がほとんど死にかけていることを証明してきました。
  上の発言もそうです。「レベル7」に引き上げられたあとになって「もともとチェルノブイリ並みだと分かっていた」ですって?典型的な“後出しじゃんけん”の議論、いや、難癖です。「分かっていた」し、早く引き上げるべきだと考えていたのら、なぜ、引き上げ発表がなされる前にそう主張、あるいは警告していなかったのでしょうか、小沢氏は?
  「いまさら何だ」というのもおかしなコメントです。引き上げることが当然だったのなら、「いまさら」であれ何であれ、引き上げた方がいいわけでしょう?<遅かったけれども、まあ、引き上げたのは正しい>とでもコメントするべきところでしょう、ここは?
  それに、正しい情報を迅速に提供する義務が東京電力原子力安全・保安院などにあることは当然ですが、引き上げ発表が二、三週間ほど遅れたとしても、それがどうだというのでしょう?引き上げ発表が早かったら、政府、東京電力原子力安・保安院などは、これまでやってきた以上のことができていたわけですか?レヴェルを低く見た彼らがなまけていて、本来はやるべきだった仕事をしなかったというのですか?その証拠が挙げられますか?
  もし、福島第一原子力発電所の事故に対する対応がまずいとすれば、それは東京電力や、原発開発を推進してきた原子力官僚・専門家たちの能力が不足しているためでしょう?彼らの能力以上のことが、小沢氏や鳩山氏を含めて、政治家たちにできるわけはないのでは?
  政府の責任者が誰であれ、つまりは、仮に小沢氏自身だったとしても、原子力の専門家たちが<いまはこのレヴェルだ>というのを押し切って<いや、レヴェルを引き上げろ>と命じることができると思いますか?政治家にそんな危なっかしい“政治主導”が求められる場合ですか、ここは?
  小沢氏はいつから原子力も専門家になっていたのでしょう?原子力について高度の勉強をしたことがかつてあったのでしょうか?もし、小沢氏が原子力についてはまったくの素人だったとしたら、何を根拠に「分かっていた」と断言したのでしょう?
  下の記事を見てください。
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  <<レベル7は「行き過ぎ」=ロシア原子力企業>>(2011/04/13-01:25)時事
  <【モスクワ時事】ロシア国営原子力企業ロスアトムのノビコフ広報局長は12日、福島第1原発事故について経済産業省原子力安全・保安院が国際原子力事故評価尺度(INES)の評価で最悪のレベル7としたことについて、「行き過ぎ」との見方を示した><同局長は「原子炉の損傷程度はレベル5を超えていない」と指摘。今回の評価変更には「政府がこれ以上批判されるのを避けようとする政治的思惑が働いている」と述べた>
  ロシア国営原子力企業の広報局長以上の知識・情報を小沢氏は持っていた、その持っていた知識・情報を基に小沢氏は「分かっていた」と断言した?
  冗談でしょう?自己の保身や政治的野心の達成(政界の主流への復活)のために小沢氏がまた浅はかな妄言を吐いた、というのが上の記事が伝えるところだと思いますよ。
  もう一つの記事を見ると…。
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  <<構造や規模に大きな違い=福島とチェルノブイリIAEA>>。(2011/04/13-06:21)時事
  <【ベルリン時事】国際原子力機関IAEA)のフローリー事務次長は12日、福島第1原発事故の国際原子力事故評価尺度(INES)の暫定評価が旧ソ連チェルノブイリ原発事故と同じ最悪の「レベル7」に引き上げられたのを受け、ウィーンの本部で記者会見し、二つの事故は「構造や規模の面で全く異なる」と指摘した><同事務次長は「チェルノブイリ原発では原子炉が爆発したが、福島第1原発は原子炉が東日本大震災後に自動停止した」と説明。また、放出された放射性物質の量も、「福島第1原発の37万テラベクレル(テラは1兆)に対し、チェルノブイリ原発は520万テラベクレルに達した」と規模の違いを強調した>
  国際原子力委員会IAEA)の事務局長は嘘をついている、と言い切るだけの知識・情報量を小沢氏が持っていた、と思えますか?
  要するに、専門家たちの見解は小沢氏の「分かっていた」断言をサポートしてはいません。
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  民主党が先の参議院議員選挙で大敗したあとに、小沢氏は<あんな議席数なら俺でも取れた>というように嘯いたそうです。自分が大きな要因となって大敗したとは思わない小沢流の傲慢さはいまは問わないにしても、この“後出しじゃんけん”の卑怯さはどうでしょう?醜悪と呼ぶべきレヴェルに達していますよね。筋を通す、自分を律する、などという意識がこの人にはすっかり欠けきっているのです。
  さて、今回もその得意の“後出しじゃんけん”を小沢氏は使いました。使って、小沢氏は完敗しています。小沢氏の「分かっていた」には根拠が示されていないのです。
  他人を批判、非難、攻撃するときにもその根拠を挙げないのが日本流の政治です。根拠を挙げなくてもそれが通用するから(根拠を示せと報道機関も求めないから)、政治家たちはそれぞれの主観をあたかも正義であるかのように述べつづけます。
  小沢一郎、過去の自分の言動から何も学ばない日本最強の現代政治家?恐ろしいことです。
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  <鳩山氏も「(対応が)遅い」と応じた>ですって!
  オバマアメリカ大統領に「トゥラスト・ミー」と言い放ったことで世界に名を馳せた大嘘つきのこの人物は、“盟友”小沢氏の提灯持ちをしていれば、やがて自分も政界の表舞台に再び出られると信じてでもいるのでしょうかね。
  もしそうだとすれば、国民はずぶん甘く見られていることになります。
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  こんな二人に幻想を抱いて政権を与えた国民も愚かだった、ということでもありますが…。
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  ついでに…。
  東電福島第一原発の建設などを推し進めてきたのは自民党政権ですよね。同原発をいまの(大津波にに弱い)仕様で造ることを許可、承認したのは自民党政権ですよね。この事故への引き金を作っていたのは自民党政権ですよね?
  そんな事実に頬被りして自民党が、原発事故とそれへの対策についてあれこれ不服を言うだけというのは、どうなのでしょう?実に無責任だと思いませんか?
  自党の過去の失政が引き起こした事故への対応が悪いと責めて、政権交代を狙う自民党
  不吉なことを言うのは本意ではありませんが、福島第一原発の事故が最悪の状態になるようなことがあったら、それは、その程度の対処能力しかない通産省官僚(原子力委員会など)と電力会社に原発を持たせた自民党政権に過失があったということになりはしませんか?
  日本の政治は腐りきっているように見えます。
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  念のためにつけ加えておきますと、菅民主党政権の対応に問題はない、と主張しているのではありません。
  たとえば、政府の情報伝達能力は実に貧しいと思ってます。
  ここでは、原発の大事故まで政争の道具にしようとする者たちへの嫌悪感を述べているだけです。
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  <<小沢氏、震災対応で首相に直談判 倒閣視野、来週にも>>(東京新聞 2011年4月15日 共同)という見出しの記事の中に、小沢氏が<特に原発事故で状況悪化を受けて徐々に避難区域を拡大した手法を批判。「最初に大きく構え、安全を確認して縮小する方法を取るべきだった」と主張しているという>という個所がありました。
  信じられますか?またまた“得意の後出しじゃんけん”!
  <最初に大きく>というのは、小さく見積もっても、20キロメートル圏内程度だということなのでしょうね。ですが、その範囲に住む住人の数が、たとえば5キロ、10キロメートルよりは多いことは間違いありません。小沢氏は、いきなり、より多い人数を避難させるべきだった、と言っているわけです。
  避難の勧告や指示は出せばそれで終わりというものではありませんよね。どこに、どういう人たちを、どういうふうに避難してもらうかなども考えておかなければなりません。当然でしょう?
  素人考えでは、まず、より危険度が高い(たとえば)2万人に避難してもらって、さらに必要なら、次には、そのすぐ外側の(たとえば)5万人に移ってもらうというのが、避難過程の混乱を避けるためにも、より合理的な案だった、と思うのですが…。
  避難区域の拡大が短時間に行われたことは事実ですが、それは、(そのこと自体は別に責められるべきにしても)原発事故が見積もりを超えて急速に悪化したからで、できるだけ秩序を保ちながら避難してもらうにはどうするか、という基本的な考えとは直接には関係がありませんよね。
  単純に考えてみましょう。いきなり(たとえば)30万人に避難してもらう場合と(たとえば)5万人の場合とでは、どちらがより滑らかに事が動き始めていたでしょうか?
  それに…。いきなり30万人を避難させたあとの地域経済はどうなっていたでしょう?地域医療はどうなっていたでしょう?より多くの自治体が行政機能を移転させられることにもなっていたのですよ。
  <安全を確認して縮小する方法を取るべきだった>という主張もおかしいのではありませんか?
  (たとえば)30万人を大慌てで避難させておいて、数日後(あるいは数週間後)に「あ、10万人は避難する必要はありませんでした。自宅に戻ってください」と言えばよかったのだ、と小沢氏は言っています。この10万人が小沢氏の措置を素直に納得したかどうか…。
  小沢氏のこの主張は、よく言っても“空論”、実際には、パニックを不要に煽り、混乱を拡大させるだけの愚策だと思えます。
  この程度の案しか持たない小沢氏が<大震災対策は菅首相よりは俺の方がうまくできる>と大見得を切っているのをどう見たらいいのか!
  小沢さん、お願いです、早く引退してください。