第155回 福島党首、少子化対策は?

  次の参議院議員選挙社民党が“惨敗”するような気がしています。いえ、基になる議席数が少ないのですから、“惨敗”といっても、議席数の上では大きく目立つようなことはないのかもしれませんが(民主党社民党との連立を解消して、乱立している新党の一つと連立を組みなおす可能性はあると思います)…。
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  さて、そういう気がする第一の理由は、言うまでもなく、沖縄の普天間米軍基地の移設に関して、社民党が連立政権与党の一つとしてまったく機能していないことにあります。移設を可能にするための現実的な情報収集や調査などにはいっさい手をつけないまま、基地の<国外への移設>を叫ぶだけで(この問題の複雑な現実の前で自らの方針がいつまでも決められない)“友党”民主党をいっそう混乱させたばかりか、連立政権のイメッジをすこぶる傷つけてしまいました。党の存在を世間に訴える好機会と捉えて<溺れかかっている人=民主党=の足を水底から引っ張る>ことしかしてこなかったのが社民党と福島党首です。“万年野党”の思考パターンから一歩も抜け出られなかったわけですね。前の衆議院議員選挙で社民党候補に投票することで、結果として、自民党から政権を奪った有権者が、政権政党としては失格者であることが明らかになった、こんな“わがまま”社民党に満足しているとはとても思えません。
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  第二の理由は、鳩山首相から託された仕事を福島瑞穂消費者・少子化担当大臣がほとんどやっていない、ということです。特に、少子化問題については、大臣就任直後を除けば、福島氏が何かを積極的に発言したという報道に触れた記憶がありません。<基地移設問題で理想論を振りかざしただけだった社民党党首>という顔しか思い出せないのです。日本の少子化という大問題に対処するよう求められながら、何もやらずに、間に合わせの議論をしただけで済ませる、こんな無責任な大臣が率いる党を、次の選挙で有権者が支持するはずはないと思います。
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  その福島氏が、大臣に就任して間もなく、読売新聞のインタヴュー(2009年10月23日)を受けて…
  <少子化担当相として力を注ぐ政策は>との問いに<「子ども手当、保育園・学童クラブの環境整備、高校の授業料無償化も含めた子ども・子育てビジョンを策定する。1月末までに、数値目標を入れた子育て総合支援策を作る心づもりだ。私の役割は厚生労働省と一緒に、子どもに税金を使い子育てを応援しようという、ある種のキャンペーン推進と制度作りだと思っている。『あの内閣は子育て支援に相当踏み込んだよね』と言われるようにしたい」>と答えています。
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  少子化担当大臣への就任直後の発言がこれだけだったのですから、福島氏がその後もまともな、当然にするべき発言・仕事をしてこなかったのは、まあ、“想定内”のことだったとも言えますね。少子化が抱えている問題の深刻さをほとんど理解していなかったわけですから。
  いえ、<子育て総合支援策>も必要でしょう。ですが、そういう策は、あくまでも小手先の調整であって、日本の総人口は2060年までに2600万人も減少して1億59万人になってしまう−というような統計上の悲劇的な予測に応えるものではありません。
  この予測は別に<2050年の推定年齢構成比は:子ども人口11%、働き盛り人口54%、高齢人口36%>とも述べていまるのですよ。
  このような恐ろしい予測があるのに、まったく危機感を抱かず、どんな対応策も検討せず、ただのほほんとしてる<少子化担当大臣>!
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  日本の少子化の深刻さは<国の存亡>にかかわるところに来ています。
  2600万人も減少した人口で、日本はどんな国内産業に頼り、どれほどの生産を行いつづけることができるでしょう?
  すでにその就労者の平均年齢が65歳に達しているという農業はだれが担うのでしょう?
  国を経営するのに必要な税金はだれが、どんな企業が払うのでしょう?
  積もりに積もった国の借金をどういうふうに返済していくのでしょう?
  36%に達するという高齢者人口を財政的にだれがどう支えていくのでしょう?
  看護・介護のための施設をどう充実させるのでしょう?
  その看護・介護にかかる労力はだれが提供するのでしょう?
  子ども人口11%という数字から、どんな2050年からあとの日本を思い描けばいいのでしょう?
  考えなければならないことは無数にあります。
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  日本はいま、これまでの歴史の中では経験したことがない類の、最大規模の危機を迎えようとしています。
  産業の規模と質、政府が国民に与えるサーヴィスの内容で、ほんの数十年後には、二流国、三流国に落ちてしまいかねない、という現実に日本はすでに足を踏み入れています。
  なのに、福島少子化担当大臣を含めて、そのことを直視する政治家が、どの政党にも、いません。いないようにしか見えません。
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  いま最大争点とされている、米軍普天間基地の移設問題は重要ではない、とは言いません。しかしながら、(沖縄県民の過剰な負担を早く軽減しなければならないという大きな問題は残るものの)この問題の解決が数か月間、いえ、かりに数年間遅れたところで、日本が滅びるのではないか、と恐れる必要はありません。
  日米安全保障条約が破棄されることもありません。
  この問題に、日本人がいま、政治にそそぐ精力のすべてを捧げるのは“愚の骨頂”だと言えます。こんなことを次の選挙の中心論点にしよう=政争の道具にしよう=というのは、党利党略を優先した、あまりにも視野が狭い考えです。
  (この移転問題に限らず、日本がアメリカの“属国”ででもあるかのように、アメリカの顔色をうかがい、アメリカに“おべっか”を使う報道しかできない日本のマスコミ!)
  政権与党、野党各党が次の政権奪取に向けて激しく争うのは、それはそれで、かまいませんが、何を論じ合うかについては、これまでに慣れ親しんできた思考パターンから離れて、すべての党と政治家が熟考を重ねるべきです。何がいまの最大の問題であるのかを、これまでになかった真剣さで、考えるべきです。
  (何が真に大事なことかが理解できないマスコミ報道からしか学ぶことができない、自らの思考力を持たない政治家たち!)
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  過去一、二年のあいだに世界経済が大きく後退してしまいました。
  中国やインドを例外として、世界の生産活動は停滞し、失業者数も増加しました。
  日本でも、企業は長く苦戦を強いられていますし、国家財政も破綻の危機に瀕しています。
  国の政策として、少子化対策にだけ予算を傾注することは、当然ながら、できません。
  ですが…
  政府・与党だけではなく、野党各党も、たとえば2050年の日本をどういう国にするかを、国民に向かって語り始めなければなりません。そこに描く日本をどう現実に築いていくかを、国民に具体的に、明確に示すべきときが来ています。
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  福島少子化担当大臣、あなたから始める、というのはどうですか?
  日本が抱えている深刻な少子化問題に2010年から先駆的に取り組み始めた政治家、福島瑞穂
  社民党が次の選挙での“惨敗”=党存続の危機=を避けるための唯一の手かもしれませんよ、そういう“売り”が。