第274回 現(うつつ)を抜かすだけの安倍政治

  安倍晋三首相と自民党がすっかりうつつを抜かしています。
  念のために、手元にある現代国語例解辞典小学館)の説明を見ておきますと…。【うつつ(現・顕)】(観念世界に対して)目覚めた意識に知覚される現実 「うつつを抜かす〔=ある物事に心を奪われて夢中になる〕
  安倍首相と自民党が「心を奪われて夢中に」なっている「ある物事」とは“日本国憲法の改変とそれにつづく日本の軍事国家化”にほかなりません。安倍首相の復古趣味を考慮していえば、日本の“大日本帝国化”と呼んでもいいのかもしれませんね。そのために首相と自民党は「目覚めた意識に知覚される現実」を頭からすっかり抜かしています。
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  何を抜かしているかといえば、まず第一には、一票の格差を放置したままの“違憲選挙”で多くの議員が議席を得ている“違憲国会”で憲法改変を議論することがどれほど異常で、筋が通らない話であるかということを。
  衆議院議員選挙に大勝したばかりか意図的な円安誘導、株価上昇にも成功した(ように見える)ことで心が舞い上がっている首相と自民党には、究極のところで、「目覚めた意識」が本来「知覚」するべき「現実」が見えなくなっているのです。
  憲法改変の議論を“違憲国会”で始めて、やがて力ずくでそれを書き換え、自国を軍事大国として世界に認識させることはいまの日本の最も重要な「現実」の問題ではない、ということが分からなくなっているのです。
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  第二には、というよりも、いまの日本が何にもましてしっかりと「知覚」しなければならない「現実」は、深刻な人口減です。
  この19日には“女性活用”を含めた“次元が異なる経済成長戦略”とやらを誇らしげに公表しはしましたが、首相と自民党には人口減という問題の大きさがちゃんと理解できている、と思えるようなものではありませんでした。このままの割合で少子化が進み、人口減が加速していけば、どんな“経済成長戦略”をもってしても日本の産業経済力は衰退してしまうはずだという認識がまるで欠けていましたからね。
  これから日本が経験していくことになる、世界史上で初めてであるかもしれない極端な人口減をものともしない“経済成長戦略”がある、と安倍首相と自民党が信じているとしたら、それはただの能天気というものです。
  歪んだ言い方をしますと、予測されている深刻な人口減と正面から戦うことなしには、首相と自民党がいくら夢見ても、“軍事国家・日本”は実現しませんよ。だって、産業力が加速度的に衰退していく日本で、それだけの資金力と人力をどうやったら確保できるというのでしょう?日本の軍事国家化に(大日本帝国が最後には国家予算の7割を軍事戦争費として使い切ったのと同様に)精力を注ぎ込んでいたら、日本は経済的には世界の二等国に、いやいや、それどころではなく、いまの北朝鮮並みの国にまで落ちてしまう恐れだってありますよ。
  おかしなことに「うつつを抜かしている」暇は首相と自民党にはないのです。
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  【質問なるほドリ:日本の人口ってどうなるの?=回答・山崎友記子】(毎日新聞 2013年03月21日 東京朝刊)
  <都市に集中、6割の地方半減 08年ピーク、50年には9700万人に><08年の1億2800万人をピークに減少しています。50年には9700万人、2100年には4900万人になると予測されています><国土交通省によると、東京、大阪、名古屋の3大都市圏(としけん)に人口がさらに集中します。一方で、小さい市町村の人口が減り、50年には6割以上の地域で人口が半減すると言われています>
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  【日本の総人口28万人減る…減少幅過去最大】(2013年4月17日01時34分 読売新聞)
  <総務省は16日、日本の総人口が前年より28万4000人減少し、1億2751万5000人(前年比0・22%減)になったとする2012年10月1日現在の人口推計を発表した><減少幅は比較可能な推計が残る1950年以降で過去最大となる。一方で、65歳以上の高齢者の人口は初めて3000万人を超え、全都道府県で高齢者数が14歳以下の年少者数を上回り、少子高齢化の一層の進展が浮き彫りになった>
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  安倍首相と自民党がいまから、教育関連法を改変し、教育委員会制度もいじくり回しながら、“郷土愛”や“愛国心”を個々人に押しつけようとしているのは、日本がいつかその“二等国”に落ちてしまったときに、国民の目をその「現実」から逸らさせるためなのでしょうか?責任逃れをいまから準備しているのでしょうか?
  そんな先のことが安倍首相と自民党に見えているとは思えません。見えないからこそ、復古趣味に根ざした軍事国家化を軽々しく夢想しているのです。
  首相と自民党が「われわれは日本を、国民のだれもが愛することができる、こんなすばらしい国にします」と具体的な像を描き出して言うのを聞いたことがありますか?「日本がどんなであれ、とにかく国を愛しなさい」と言うだけでしょう?
  “兵器や銃砲弾、食料、医薬品などを補給しつづける計画も能力もない状態で、中国大陸や(いわゆる)インドシナ、太平洋上の島々などに300万人以上の日本兵を送り込み、そのうちの大半を、主として、餓死あるいは傷病死させた”あの大日本帝国の政府と軍部がそうでしたよね。“とにかく愛国!”
  首相と自民党は悪い夢から覚めるべきです。覚めて、国民をペテンにかけるのをやめるべきです。
  期待感だけに支えられている(2パーセントの物価上昇を目標とした程度の)“アベノミクス”では、加速する大規模な人口減少に打ち勝てはしません。
  首相と自民党は「現実」にちゃんと目を向けて「共に人口減と戦いましょう」「日本がいまやらなければならないのはそのことです」と国民に訴えるべきです。すぐにでも手を打ち始めるべきことが(安倍首相の“経済成長戦略”にも含まれた、保育機関が利用できない“待機児童”の解消など)多すぎるほどにあるのですから。
  「この夏の参議院選挙では憲法の96条を変えることを争点にする」などといううそぶきは、(特に将来の)日本国民を不幸にする世迷言です。日本の厳しい「現実」をちゃんと見据え、真の国益とは何かを真剣に考えれば、そんなことがいま言い出せるわけはありません。
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  こんなふうに日本を見ている国もあります。
  【シンガポールが移民拡大 少子化で、日本教訓に】(2013年2月7日 22時09分)
  <【シンガポール共同】シンガポール政府が海外からの移民受け入れを大幅に拡充したことについて、同国政府高官は6日、少子高齢化が進んでいるのに移民受け入れに消極的で、経済低迷が長期化している日本を教訓にした政策だと明らかにした。ストレーツ・タイムズ紙(電子版)が7日報じた><高官は、日本の苦境は「ツナミ」のように押し寄せる急速な少子高齢化の結果とした上で、シンガポールの状況は約30年前の日本に似ていると指摘。北海道夕張市を引き合いに、小都市では若者が去り、店が閉じていくと説明した。また高齢化は「日本を不安定にしている」とした>
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