第128回 自省ができない“甘ったれ”首相はもういらない

  麻生太郎という人物は、たぶん、事の善悪や物の道理などということを誰かにちゃんと教えられたり諭されたりしたことがほとんどないまま育ったのでしょうね。
  首相になってからの発言を(そろそろ一年間も)聞いてきましたが、自民党の政治的苦境が深まるにつれてますます、この人は(親を含めて)他の人からきちんと諌められたことがない人間なのに違いないというふうに見えてきました。この人には自己検証・反省という考えがまったく欠けていますから。
  だから、何度も何度も「ぶれた」と批判されても、自分のどこがぶれているのかが分からないのです。内閣支持率を見れば分明らかなように、国民=有権者にあきれられているのにしゃあしゃあとしていられるのはそのためです。
  この、麻生財閥の御曹司が学校での勉強も疎かにしてきたらしいことも、漢字の読み間違いからだけではなく、話に論理性が欠如しているという点からよく分かります。
  
  最近の発言から、麻生太郎という人物がどのぐらい首相不適格者であったかを見てみましょうか。

  民主党鳩山代表との論争、解散後初の党首討論などで、麻生首相はこういうことを言っているそうです。

  <朝日新聞8月13日>
  1)首相は「財源なきばらまきは無責任」と民主党を批判

    寄って立つ財源を得ることをここまで困難にしてきたのはどの政党ですか?50余年間も政権を独占しつづけ、国家財政をここまで窮迫させたのは自民党なのですよ。しかも、国民の歓心を買おうと前の国会で“補正”を最大限に活用して予算をばらまいたのは、麻生さん、あなた自身ではなかったですか?
    それに、この人が当てにしている“財源”は主として、将来の消費税引き上げから上がってくることになっているだけでしょう?官僚の(したい放題の)天下りなど、50余年間に築いた、行政組織内の膨大な“むだの構造”には目を瞑ったままで…。
 
  2)首相は「民主党との一番の違いは責任力だ」と強調。「これ以上、借金を子や孫の代に先送りするわけにはいかない」

    “責任力”がこの人のどこにあります?小泉内閣時代は郵政改革・民営化に賛成しておいて、風向きが変わると「もともと俺は賛成じゃなかった」と平然と言いきる物にどんな責任が負えるというのでしょう?
    そもそも「これ以上」はできないというほど「借金」を積み重ねてきたのは自民党政権なのですよ。自民党はその「責任」をどう取るつもりなのでしょうかね。民主党の岡田幹事長が口にするとおり、「よく言うよ」としか評しようがありません。

  3)外交・安保で首相は、北朝鮮制裁の貨物検査法案の廃案について、民主党が審議に協力しなかったためと批判

    自分の手で衆院を解散したという“実績”を残したい一心で、大慌てで衆院解散に走り、審議を不能にし、選挙公示日近くまでの数週間を“空白”にしてしまったのは麻生さん自身です。本心から廃案にしたくなかったのなら、公示日に近いところまで解散を先送りすることもできたのに、そうしているうちに“麻生おろし”の動きが大きくなっては怖いと逃げたのは、麻生さん、あなたでしょう?


  <読売新聞8月13日>

  1)麻生首相は12日、群馬県伊勢崎市の街頭演説で「民主党マニフェストに経済成長戦略なんかひとつも書いていなかった。なんか近ごろ慌てて書き足している。おれたちから言われたからだ」と語った。

    おかしなケチのつけ方ですね。民主党であろうとどの党であろうと、一度発表した選挙公約が十分ではないと思えば、どんどん改定・改善するべきなのです。それが有権者への正しい「責任」の取り方でしょう。民主党が「書き足して」自民党に習う形で対抗してきたのなら、それは国民にとっては喜ぶべきことではないのですか。それを、真似をしている、とだけ非難するのは児戯というものです。
    どう見ても、麻生さんは成熟した口論・論争の仕方を知りません。相手を口汚く罵れば自分の勝ちだと思い込んでいるようです。
    人の職業や体形などを取り上げて相手をやり込めるというけんかの仕方が、麻生さんの子供のころには普通でした。いま聞けばひどい話ですが、子供たちはたがいに、たとえば「お前の母さん、出べそ!」「お前の父さん、ちんどん屋!」などと叫びあったものです。この人の論争技術はこのレヴェルからいくらも出てきません。相手を悪く言うために悪く言う…。それだけです。相手をただ悪く言っているあいだは、自分の姿が見えません。「お前の母さん」ではなく、もしかしたら、「自分の母さん」の方が“出べそ”ではないかとは決して疑いません。

  2)首相は「安全保障政策に一貫性のない政党に日本の安全を任せることはできない」と民主党を批判した。

    一度も政権を握ったことがない政党に「一貫性」のある「安全保障政策」があるはずがありません。政権政党でない限り、その「政策」を話し合う相手国も機会も公式にはいないのですから。
    一方、自民党50余年の「一貫性」は“対米依存”という点で保たれてきただけです。格別に誇ることができるものではありません。実際に自民党がやってきたのは<非核三原則をめぐる密約は(アメリカ側がその存在をとうに認めているのに)なかった>といまだに言い張るというようなことだけです。アメリカが「こうしてほしい」と言えば「分かりました」と返事をするだけです。
    「独立国として、国際的にわが国はどうあるべきか」というような議論を党内で一度も真剣にやったことがない(アメリカ依存一辺倒の)こんな政党に50余年も安全保障政策を任せてきた日本人はおおいに反省すべきです。

  3)首相は、経済政策に関し、「民主党は経済の成長政策が見えないまま、お金を配る。自民党は経済を成長させ、パイを大きくした上で分配を考える。ここが大きな違いだ」と述べた。

    <10年後に100万円の可処分所得増加>?パイを大きくする?具体的に「いかにして」を言わないまま<自民党には経済成長政策がある>ですって?それは政策ではなくて、ただの“願望”です。たとえば、国民のどの層がどのぐらい収入を伸ばすのか?それをどの産業がどういうふうに実現するのか?自民党は何も言っていないではありませんか。

  <時事通信8月14日>

  (他党党首とともに出演したTBSの報道番組で)麻生太郎首相は、鳩山由紀夫民主党代表の政治資金収支報告書への虚偽記載問題について「虚偽記載は刑事罰の対象だ。修正すればいい話ではない。国民は説明に納得していない」と述べ、責任は免れないとの認識を示した。

  民主党の小沢元代表の政治資金問題のときのもそうでしたが、麻生さんの問題は、“迎合”の意図を隠しもせずに<国民は説明に納得していない>と言ってしまうところにあります。麻生氏と鳩山氏のどちらが次の首相にふさわしいか−という世論調査の結果を見ればはっきりしています。麻生さんは鳩山さんに、どの調査ででも、圧倒されています。国民=有権者は鳩山氏の「虚偽記載問題」については、実は、あまり気にしていないのです。ほかにもっと重大な問題が山積しているのに「ここぞ」とばかりにこの件で攻め立てる麻生さんを大半の国民はばかにしているのです。

  国民はいま、そんなことより、明らかにそう言ったのに「いいえ。わたしは言っていません。マスコミが言っているだけでしょう?」などと言い逃ればかりする“ぶれ”と“強弁”の首相の方に大きな不安を抱いているのです。

  どこから見ても、麻生さんは自分の姿を見ないで、平気で、相手を悪く言うだけの、それができることを自分の“能力”だとカンチガイしている愚か者です。
  安倍、福田と二人の無能・無責任人物につづいて麻生さんのような無能な人物を総裁に仰いで来るしかなかった“死に体”自民党に“引導”を渡すときとチャンスがきています。