第127回 自民党だけには言われたくない!

  衆議院議員選挙の投票日8月30日。民主党に遅れること数日、自民党の選挙公約がやっと出ました。その内容はどうやら三つの単語に集約される−ということのようです。「安心 活力 責任」

  構造改革郵政民営化をナントシテモ実現するのだ、自民党をぶっ壊すのだ、と叫んだ小泉首相の政策がやはり悪かったのか、その跡を継いだ安倍、福田、麻生がとてうもなく無能だったのか、とにかく、収入(社会)格差が広がり、年金への不信感が拡大して、自民党長期政権下で、国民の暮らしは「安心」からはすこぶる遠いものになっています。なのに、自民党はそのことを国民にわびていません。だから、国民の多くは怒っています。「安心」を約束するなどと、自民党だけには、いまさら、言われたくはない−と感じています。

  「郵政」一本やりの総選挙でばか勝ちした小泉首相が退陣したあとの自民党ほど「活力」に欠けた政権政党は近代政治史にはなかったのでは?独りよがりの国家観を国民に押し売りしようとした挙句に逃げ出した安倍、党内、党外の意見調整に失敗しつづけたあと、あっさりとやめてしまった福田、決断力がここまでなくても自民党総裁が務まるものかと国民を“感心”させつづけた麻生。こんな“SIMPLETON”を三人もつづけて担ぐしかなかった無気力“死に体”政権政党日本に「活力」を与えるなどと、自民党だけには、言われたくありません。

  いまの日本を見てください。これが、自民党長期政権が築いてきた日本です。
  たとえば、こんな記事はどうでしょうか?<9団体が2日発表した自公連立政権の実績評価は、前回衆院選での圧勝を受けた小泉内閣構造改革路線が、その後の内閣で、なし崩し的に転換されたとする点に批判が集中した>(2009年8月2日23時01分 読売新聞)
  前の衆院選自民党をあれほど大勝させた首相の「路線」を、自民党は、ちゃんとした反省も説明もなしに、事実上反古にしたのですよ。この「実績評価」では、“お友達”経済同友会でさえ、「政権運営」に35点、「政策実績」に50点しか与えていません。日本青年会議所は、それぞれ、40点、46点です。自民党が立派に「責任」をまっとうする政党だったとは、身内も思っていないわけです。
  毎日新聞の社説(8月3日)はこう書いています。<前回の自民党公約のうたい文句は「郵政民営化なくして小さな政府なし」「年金も、景気も、小さな政府から」「改革を止めるな」だ。つまり、一連の小泉・構造改革路線の継続を訴えたものだった。ところが、首相が交代するたびに路線をなし崩し的に転換しながら、ここまで国民に信を問うことなく、転換したことへの説明責任も果たしてこなかった>
  政権を「責任」をもって担えるのはわが党だけだなどと、自民党だけには、言われたくありません。

  (元衆議院議員の二見伸明氏も<自民党にだけは「日本を守る、責任力」とは言ってもらいたくない>と言っています。http://news.www.infoseek.co.jp/special/j-is

  で、その「安心 活力 責任」を看板にして自民党が今回、現実に、どういう選挙を戦うかというと−。
  宮崎の東国原知事を利用しようとしてただ恥をかいただけに終わり、自民党選挙対策委員長の職を辞した古賀氏(福岡7区)は地元でこんなふうに檄を飛ばしているそうです。
  毎日新聞(7月22日)によると−。<古賀氏は約200人の支持者を前に、地元の大型公共事業を列挙して実績を強調した。九州新幹線の新駅、有明海沿岸道路、三池港整備……。「九州一の街作りのため、インフラを整備したい。税金の無駄遣いと言われる筋合いはない」政権交代しても野田(国義)氏(民主新人。古賀氏の元秘書で、同区から出馬)は与党の1年生。工事を引っ張って来られるか?」
  
  政策公約にいくら“きれいごと”を並べて国民=有権者をたぶらかそうとしても、自民党の真の体質は、21世紀になったいまでもコレなのです。要するに、いまも、表向きの政策ではなく、利権誘導で成り立っているのが自民党なのです。

  30日の投票では、各種世論調査がこれまでに言ってきたほどには民主党優勢という結果にはならないかもしれません。自民党も、それを下支えしてきた官僚組織も膨大な“既得権益”を簡単には手放さないでしょうから。
  国民有権者の“良識”が今回ほど強く問われる選挙はかつてなかったはずです。