第107回 自民党は逃げ込む甲羅も失くした瀕死のカメ

  「ステアク・エッセイ」で<フィードバック能力を失った自民党はもう“死に体”>と書いたのは2008年の4月29日でした( http://d.hatena.ne.jp/kugen/20081107/1226038718)。
  衆院山口2区補選で自民党候補が民主党候補に大差で敗れたという事実をきちんと受け止めようとしない自民党についてのエッセイでした。

  その自民党が最近、何につけても動きが遅いカメに見えてきました。
  しかも、その“死に体”状態を隠すための甲羅さえ失って、見るも無残な姿を赤裸々に世界に晒している、生きる力をすっかり失った、瀕死のカメに−−。
  晒しているのに、いまだに、自らがどれぐらい“無残な姿”になっているかに気づいていない−−。気づこうとしない−−。
  致命的に不利な状況が自分を取り囲んでいるという事実を認めることを頑なに拒否しつづけている−−。

  日本がいま何を最も必要としているのかには目を向けず<いま衆院選挙をやれば負ける><自民党“最後”の首相にはなりたくない>などといったすこぶる党略優先の、利己的な考えにとりつかれて、自民党員はみな、深刻な思考停止状態に陥っています。陥っていることを認めようとしません。
  認めないために、自ら“死”を呼び寄せています。
  そうすることで、自民党は歴史に残る“笑い者”になろうとしています。

  自民党がどれほど“無残”な状態にあるかというと…。
  
  2009年1月13日 読売新聞

  <国の政策評価などを行う非営利組織(NPO)法人「言論NPO」(工藤泰志代表)は麻生政権100日間の評価に関するアンケート調査結果をまとめた。
  <首相の資質に関する8項目の評価(いずれも5点満点)は平均1・8点で、福田政権100日の2・3点、安倍政権100日の2・2点を下回った
  <首相の資質では「リーダーシップや政治手腕」(1・6点)、「国民に対するアピール度、説明能力」(1・7点)など7項目が1点台。唯一、2点台の「人柄」(2・5点)も、福田(3・4点)、安倍(3・3点)両政権を下回った> 

  2009年1月12日 読売新聞

  <読売新聞社が9〜11日に実施した全国世論調査(電話方式)によると、麻生内閣の支持率は昨年12月の前回調査から0・5ポイント減の20・4%、不支持率は5・6ポイント増の72・3%となった
  <麻生首相民主党の小沢代表のどちらが首相にふさわしいかとの質問でも、小沢氏が39%と前回の36%から増やしたのに対し、麻生首相は27%で29%から減らした
  <麻生内閣が08年度第2次補正予算案の目玉としている総額2兆円の定額給付金についても、「支給を取りやめて、雇用や社会保障など、ほかの目的に使うべきだ」との意見に賛成と答えた人は78%に達し、支給撤回に反対する意見は17%に過ぎなかった。
  <次の衆院比例選でどの政党に投票するかでは、民主39%(前回40%)、自民24%(同24%)などとなり、民主党自民党を圧倒している。ただ、政党支持率は自民29・3%(同27・2%)、民主26・2%(同28・2%)だった>
 
  …というほどです。

  では、自民党がどこまで“頑な”になっているかというと…。

  2009/01/13 時事通信

  <河村建夫官房長官は13日午前の記者会見で、報道各社の世論調査内閣支持率が2割台を切るなど続落していることについて「意識はしているが、政策を実行して予算案をしっかり通すことが国民の叱咤(しった)激励に応える道だと思って、一喜一憂せず政策遂行にまい進する」と述べた> 

  というような具合です。これ以上はないというほどの的外れなコメントをして、厳しすぎる現実から目を逸らせるしかできなくなっているのです。
  これまで、ここという大事なときに有権者=国民の批判に対して、必要な<一喜一憂>をしてこなかったからこそ、ここまで凋落してしまったのだ、とは自民党はまったく考えていません。

  思うに−−。
  自民党がここまで“世間離れ”してしまったのは、やはり、世襲の(オボッチャン・オジョウチャン)議員がゆうに過半数す超える状態になってしまったからかもしれませんね(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20081108/1226110857)。
  基本的には、議員だった祖父や父親などの真似をしていて、ときおり自分の(浅はかな)意見を述べていれば、議員の利権の一部をむさぼり食らおうと集まってくる周囲の者たちが選挙で勝たせてくれる、というような状況しか知らなくて…。

  自民党は、こんな惨状にあっても、“聞く耳持たず”の姿勢で事態を乗り切ることができると信じたがっています。“万年与党”の幻想から覚めていません。

  <景気が回復していれば3年後に消費税率を引き上げる>ですって?
  自民党は、いまがそんな主張をしているときかどうかの判断さえできなくなっています。
  重要な政策のほとんどで国民=有権者の7割前後が自民党案に首を傾げているという事実を無視して、いったん言い出してしまったからという面子にこだわりつづけている自民党が“3年後”もまだ政権を握っている?国会で多数派である?

  国民=有権者のほとんどがそんな能天気な自民党を嘲笑しているはずです。
  
  衆議院の解散権が首相にあることを武器に、かりに、麻生首相が次の選挙を任期満了まで引き延ばすことができたとして、自民党は何を得ることができるでしょうか?
  自分の“保身延命策”が自民党の首をますます絞めていることを麻生首相は知るべきです。
  いえ、自民党の“死”は自分が見取ることになると、麻生首相は早く悟るべきです。
  悟って、国民=有権者がいま求めていること=解散要求に素直に応じるべきです。
  ここまで悪くなった社会・経済を立て直す機会をいっときも早く国民=有権者に与えるべきです。
  こうなっては、自民党がどう悪あがきしようと、政権交代は避けられません。事態をそこまで持ってきたのは自民党自身です。
  
  自民党がいま選ぶことができる最良の策は<これ以上無残な姿を国民=有権者の記憶に残さない>ということです。それも、もし自民党に“将来”があるとすれば、という限定つきでの話ですが…。