第82回 フィードバック能力を失った自民党はもう“死に体”  2008/04/29  閲覧(887)

  衆議院山口2区の補欠選挙が27日に行われ、民主党候補が、大方の予想を上回る2万票ほどの差をつけて当選しました。
  投票率は、補選としては異例に高い69パーセントだったそうです。この選挙への有権者の関心の高さがこの数字に示されているということでしょうね。
  その関心の高さの要因となったのは、東京新聞によれば、主として<先月末に期限が切れたガソリン税暫定税率問題、今月スタートした後期高齢者医療制度>です。

  先月末の期限切れで下がっているガソリン税自民党は<暫定税率を元に戻す税制改正関連法案を30日に衆院で再議決する>(朝日新聞)ことにしています。
  1か月間途切れたものの、それまで30数年間つづいていた“暫定”税率を復活させ、さらに10年間“暫定”を維持しようというわけです。維持して、自民党(と公明党)の支持者たちに甘い汁を吸わせつづけようというわけです。

  *どの世論調査を見ても、この再議決には国民の6割以上が反対しているにもかかわらず−です。
  *反対という声がこの補選の<出口調査>でも明確だったにもかかわらず−です。

  自民党は世論と有権者が示した意思を完全に無視することに決めたのです。目の前にある現実に目をつぶり、そこからのフィードバックを拒否して、道路族議員と道路関連官僚、各地方の道路関連企業などを、従来どおりに、優遇しつづける道を、再び、選んだのです。

  一方の<後期高齢者医療制度>については、自民党は、福田首相やほかの幹部がこの制度への説明がたりなかったと語っています。だから補選で負ける原因となった−と述べています。
  確かに、“後期高齢者”たちの多くが、自分たちの新たな医療費の一部については年金から天引きされるということは知っていたようですが、では現実には①いくらぐらい②どういう具合に天引きされるかという点については十分には知らせられていなかったようです。そのことへの不満が、本来は強固な自民党支持層を形成している“後期高齢者”たちの自民党への投票を減らしたと思われます。
  ですが、自民党(と公明党)はここでも重要な問題に目を向けていません。故意に目を逸らせています。
  そもそも、体が弱っている“後期高齢者”たちの医療費の一部を新たに有料化していいのか、それを年金から(強制的に)天引きしていいのか−という問題です。
  自民党(と公明党)にはその議論を改めてする気がまったくありません。<初めに有料化ありき>で、“再検討の必要はない”という姿勢を貫いているのです。

  報道されたところによると、この補選で民主党候補に投票した“後期高齢者”たちの中には、その負担増に打ちひしがれて<年を取ったらもう死ねということか>と憤っている人も少なくないということです。自民党(と公明党)にはこの憤りが見えていません。この憤りの深刻さが理解できていません。道路族議員などに示している理解度とはそれこそ雲泥の差があるわけです。

  東京新聞が指摘した補選の争点<先月末に期限が切れたガソリン税暫定税率問題、今月スタートした後期高齢者医療制度>というのは、言い換えれば自民党(と公明党)による<道路族議員などの優遇維持と老人切捨て>政策をどう評価するかということでした。

  山口2区の補選で国民・有権者の意思が明確になりました。
  ガソリンなどへの“暫定”(高)税率を廃止し(道路族議員・官僚などへの優遇をやめ)ろ、新“後期高齢者”医療制度を根本的に見直せ−。

  自民党(と公明党)がこの事実を無視しつづけるようであれば、この(二つの)政党に“未来”はありません。
  現場からのフィードバックが正しくできない組織は、それが何であれ、遅かれ早かれ、崩壊していきます。
  自民党(と公明党)は、政党として、そういうところに差しかかっています。
  差しかかっているという事実から目を逸らせています。
  ほとんど“死に体”になっています。

  自民党(と公明党)がいまのままであれば(一方の民主党が予期せぬ大失態を演じなければ)、国民・有権者は次回の総選挙でこの(二つの)政党を死なせることになるでしょう。
  <死なせなければ分からない>ところまでこの(二つの)政党は来ています。
  補選後の自民党(と公明党)の動きでそのことがいっそう明らかになっています。