第314回 ちょっとこの写真を見て……

               
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  フィリピンでは4月、5月が真夏です。しかも、この夏の暑さは格別で、ちょっと出会った顔見知り同士の挨拶では、「暑いですね」というような言葉が、必ずといっていいほど、差し挟まれます。
  その暑さのせいにして、今回は小振りのエッセイですませます。勘弁してください。
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  フィリピンのインフラストラクチャーの現状の大方がここから想像できるという写真を下に掲載します。
  我が家の近くの、大型スーパーマーケット前の交叉点で撮影した一枚です。
               
  そのマーケットは、写真手前、金属製のグリーンの柵の左側にあります。
  交叉点内の道路表面に、横断歩道を示す白色の太い線が見えますね。
  そこに向かって、日本でならば、車椅子の通行を助けるためのスロープが、歩道に備えられています。ただし、車椅子は歩道からは、排水溝にかぶせられた、網状の、鋼鉄のふたの上に降りかかることになりますが……。
  いえ、実は、フィリピンでは、車椅子を利用して街中を単独で移動する人を見かけることは、まずありません。ですから、ここに見えるスロープは、もともとが、マーケットの客が使う、手引きの買い物用カートのためのものと考えるべきなのかもしれませんね。
  でも、待ってくださいよ。買い物用カートの車輪なら、網状のふたの穴に片方の車輪を落としてしまう恐れがあります。
  いやいや、最大級の問題であるのは、あずき色の鋼鉄製柵のせいでますます狭くなっている歩道の真ん中に、コンクリートで土台固めがされた電柱が立てられていることですよね。これでは、それが車椅子であれ買い物用カートであれ、この歩道を通ってマーケットに向かうことはできません。マーケットからこの横断歩道に降りることもできません。
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  フィリピンの道路交通に関する“整備”の多くがこんな調子で行われています。「こんな調子」というのは……。
  「苦言熟考」は【第269回 怖い、マニラ首都圏での運転】(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20130228/1362004680)でこんなことも伝えています。
  「その<劣悪な道路><完璧には程遠い道路標識>の方についてはインクァイアラー紙自身がこう書いています  1.コンクリート製の(多くは古くてくすんでもいる)中央分離壁が低すぎて、その道路に慣れていない運転者には見えにくいし、脛までぐらいの浸水があればそれが水の下に隠れてしまうところがある。そんなところでは、せめて、分離壁が始まる30メートルほど前に背が高い警告標識を掲げるべきだ  2.道路に危険な穴があることを運転者に知らせる標識がないことが多い。時速60キロメーターで走行中の自動車がその間に十分に減速できる距離のところに警告標識を置くべきだ  3.道路標識や分離壁などは、運転者がそれに正しく対応できる、余裕がある距離をおいて、適切な位置に設置するべきだ  4.車線が予告標識なしに突然なくなってしまう道路は危険だ  5.多くの交通量をさばく目的で、それぞれの車線を狭くし、車線数を増やしている道路がある。バスなどの大型車の通行が多い道路では車線幅を広くしておくべきだ」
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  要するに、全体を広く、しかも注意深く見通す、ということが、そうですね、国際的に通じる水準ででは行われていない、というのがいま(というのでなければ、近年までの)のフィリピンの実情なのですね。
  少しこじつけていいますと、こんなふうに“心がこもっていない”のは、たとえば、スーパーマーケットやデパートメントストアーの店員たちの接客もおなじです。大事なところを抜かしたままの接客に出合うことが非常に多いのです。
  国民経済が大発展中のいまが、それを改める絶好の機会です。
  “心がこもっていない”何かについて、国民が大きな声で不平を言う、そこから始めてほしいものだと感じています
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