第234回  「 国民の税金の使い道を議論しているのに」

 本来は国民や消費者、顧客などに広く提供されるべきである情報を、政府、官僚、企業などが独占・私物化しているか、していた、という例がいまだに次々と明らかになっているようです。東京電力福島第一原子力発電所での大事故からも、ほとんどの日本人がまだ何も学んでいない、という証拠なのでしょう。
 国会も情報私物化の常習犯であるようです。
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 自民党河野太郎氏が<<議事録を読みましたか>>(http://www.taro.org/2012/03/post-1172.php)というブログをあげています(3月13日)
 <議事録が衆議院のホームページにアップされない。3月13日現在、予算委員会の議事録の掲載は、2月9日を最後に止まっている。 予算委員会第五分科会の議事録は、平成23年2月25日で止まっている。 本会議の議事録は、2月23日が最後の掲載になっている><実は、議事録はできている。衆議院の事務局にくださいというと、翌日には速報版がもらえる。しかし、それはあくまでも議員用であり、外部への公開を前提とはされていないので、外に出してはいけませんよという注釈付きだ。速報版があるならば、それを載せる。訂正があれば訂正し、訂正があったことをどこかに載せる、でいいのではないか。 国民の税金の使い道を議論しているのに、国民がその会議の議事録を読めないなんて、そして、国民がその会議の内容を知ることができないのに、採決だなんて>
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 東京電力福島第一原子力発電所の大事故の直後に開かれた会議などの議事録が残っていなかったことに人びとが驚い(たふりをし)て政府を野党や報道機関が厳しく責めたのは、そんなに前のことではありません。
  しかし、河野氏の上のブログ記事を読んでください。政府や役所でだけではなく、国会ででも、国民のものであるべき情報がいまでもすっきりとは公開されてはいないのです。
  日本人、特に、東京電力を含めて、特別な権力が自分たちにはあると思い込んでいる組織などは、自分たちが独占保有している情報を私物視することに慣れきってしまっています。その情報は本来は国民=有権者=消費者=顧客などのものであるべきなのではないか、という考えをまったく持っていません。
  国民の方も、自分たちに不都合な何かが起こるまでは、情報をよこせとは言いません。自分たちがどんな不当な扱いを受けていても、そのことにはほとんど気づかないのです。
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 【第202回 野球場の距離表示からでも始めますか】(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20110601/1306903930)で「苦言熟考」は、日本のプロ野球の球場の外野ウォールにホームベイスからの距離表示がほとんどないことを指摘し、そもそも、情報を提供するということに関して日本人は誤った考えを抱いている、と書いています。
 <とにかく、その理由や動機はどうであれ、正しく詳細な情報を野球ファンに提供してファンに楽しんでもらうという第一義のサーヴィスを日本のプロ球団が忘れきっていることは明らかだと思われます。いや、熱心なファンにとってはそんな距離情報が重要なのだという認識がそもそも球団側にはないのだ、というのが正しい分析なのかもしれませんね><一方で、ファンの方も、距離表示がないことに抗議することはありません。だれかが抗議したというような報道に触れたことはありません。距離表示は、平均的な日本の野球ファンにとっても、重要な情報ではないのでしょうね。球団もファンも、そこまで追い求めることなく、「まあ、いいか」「そんなもんかな」などというところで思考を止めしまって?><どんな情報をだれのためにいつ発信するか…。何がいま一番大事なことか…><あいまいな思考や論理、情報で良しとする日本人の態度が日本を危うくしています>
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 河野太郎氏の<<議事録を読みましたか>>も、別の角度から、おなじ問題に触れています。東日本大震災のあとだというのに、日本人のあいだに、情報というものに関する考えが変わったという形跡は、ここにもまるでありませんよね。
 福島原発事故への対処で政府や原子力安全保安院東京電力などに最も欠けていたのは情報の発信伝達力だったと思っています。いえ、国民や被災者が求めている情報を正しく迅速に発するという発想が、そもそも、これらの組織にあったかどうか…。
 被災地の復旧が遅れがちになっているのは主にそのせいだろうと考えています。
 その情報はだれのものなのか、どうすればそこに迅速に届けられるか、を考える習慣を日本人は、いまからでも、身に着けなければ…。
 検察(官)や警察(官)による証拠の悪質な隠滅や捏造などの事例からでもいいでしょう。日本がこれ以上におかしなところに行かないように、情報を独占する者たちへの監視を強めることにしましょうよ。
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  朝日新聞 社説(2012年3月23日)【東電の値上げ―こんな経営を許すな】(http://www.asahi.com/paper/editorial.html
  <「お客さま」という言葉が、そらぞらしく聞こえる。そんな東京電力の体質が、改めて浮かびあがった><電気料金の値上げをめぐる混乱である><東電は約24万件ある企業向けの料金を、4月から平均17%値上げすると発表していた><だが、値上げに同意しない場合は、1年間の契約の更新日が来るまでは今の料金でいい。そのことを契約者にきちんと知らせていなかった>

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