<だって、フェンスあるいはウォールの向こう側は駐車場だったり、雑木林だったり、校舎の壁だったり、ちょっとした道路だったりするだけですからね。そこには“入る”構造物がないのですからね。つまり、高校野球の県大会決勝戦やプロ野球の試合が行われるような球場を除けば、「入った!入った!」というのは、その状況にふさわしい表現ではないのです。「入った!入った!」は日本全国のどの野球場でも使える言葉ではないのです。「入った!入った!」には普遍性というものが欠けているのです。
これに対して、アメリカでは、アナウンサーは「ゴーイング、ゴーイング…、ゴーン(あるいはグッバイ)」などと言うのが普通です。外野の奥に向かって飛んでいた打球がフィールドを「出て行った(グッバイ)」というわけです。これなら外野席が備わっていない球場ででも使うことができますよね。合理的な表現です。
「ゴーン=出て行った」は、日本でいうランニングホームランを「インサイド・(ザ・)パーク・ホームラン」と呼ぶこととも整合しています。選手たちがプレイするフィールドが「インサイド」なら、そこに外野席があろうとなかろうと外野ウォール(あるいはフェンス)の向こう側は打球が「出て行く」ところ、「アウトサイド」なのですから。「ゴーン(グッバイ)」はどこの野球場ででも使うことができる、普遍性がある表現であるわけです。