第290回  嘘つき、恥知らず、安倍首相

  オリンピックの開催地を決めるための最終プレゼンテイションで安倍晋三首相は、東京電力福島第一原子力発電所で海に漏れ出ているのではないかとされる放射能汚染水について、こんなことをしゃべったそうです(水島宏明法政大学教授のブログ(【安倍首相が五輪招致でついた「ウソ」】2013年9月8日 http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20130908-00027937/ から)。
  「私が安全を保証します。状況はコントロールされています」
  「汚染水は福島第一原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている」
  「福島近海でのモニタリング数値は、最大でもWHO(世界保健機関)の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ」
  「健康に対する問題はない。今までも、現在も、これからもない」
               *     *
  上の安倍発言に関して東京電力側は異なった見解を示しました(【安倍首相と東電幹部、汚染水制御の認識でズレ 衆院は閉会中審査へ】 日本経済新聞 2013/9/14 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS13035_T10C13A9PP8000/)。
  <東京電力の山下和彦フェローは13日、福島県郡山市で開いた民主党の会合で、福島第1原子力発電所の汚染水漏れについて「コントロールできていない」と説明した。「状況はコントロールされている」と明言していた安倍晋三首相とは異なる現状認識ともいえ、菅義偉官房長官が記者会見で釈明に追われた><「想定を超えてしまうことが起きていることは事実だ。今の状態はコントロールできていないと考えている」。山下フェローは13日、こう述べた。原子力規制庁の小坂淳彦・地域原子力規制統括管理官も汚染水の貯蔵タンクに関し「管理できるところが管理できていなかった」と語った>
               *     *
  おなじ事象について二つの相対立する見解が表明されているのですから、どちらかが嘘をついているわけですよね。
  暮らしの中で人が自然に学ぶ“常識”に従って考えれば、その見解を述べることでより大きな“便益”を得ると思われる側が嘘をついている可能性が大きいのですから、そこに目を向けると……。
  2020年のオリンピックをなんとしても東京で開催したい安倍首相には大きな嘘をつく動機が十分にありました。
  それに対して、東京電力の山下和彦フェローが「今の状態はコントロールできていないと考えている」と述べて得られる“便益”は、せいぜい、東電はここではめずらしく正直に発言した、というような評価に限られていました。首相発言を否定する嘘をあえてつかなければならない理由が東京電力側にあったとは考えられません。
  つまり、嘘をついたのは安倍首相だ、首相は、恥知らずなことに、全世界に向かって、しゃあしゃあと、大きな嘘をついたのだ、と見るのが正しいはずだ、ということです。
               *     *
  安倍首相は、自分に厳しい現実からは目を逸らせて、自分がこうだと信じることだけに執着して生きることができる、実に独善的な、公正な判断ができない人物なのですね。
  明らかな嘘が平気でつける人間なのですね。
  その嘘が、自分とその周辺、いや、(安倍氏は日本の首相なのですから)そんなところにはとどまらずに、日本だけではなく世界にどんな悪影響を与えるか、とは考えないでいられる、思考破綻者なのですね。
               *     *
  ははあ、そういえば、と思いませんか?
  安倍首相は「日本軍が強要して朝鮮人女性を従軍慰安婦として働かせたことはない」「南京事件というのは中国側のでっちあげだ」というような考え、意見の持ち主なのですよね。
  いかにも、安倍首相らが言い張りそうなことだと思えませんか?
  オリンピック招致のための最終プレゼンテイションで大見得を切って言い放ったのと同様の厚顔無恥ぶりがここにも見えますよね。
  自分が好まない事実はすべて否定する。
  自分の好みや意図に合うことなら、どんな嘘でも全世界に向かってつく。
               *     *
  その後も……。
  たとえば、企業の役員や(国会)議員の中で女性が占める割合が、世界的には、日本は最低レヴェルにとどまっている、という事実からは目をそむけ、平然として、いかにも、これまでも女性活用に努めてきたかのように、訪米中の安倍首相が公言している(「女性が輝く社会をつくる」!!)のもそうですよね。
  自分の思考、発言にはちゃんとした裏づけがあるのかという検証がこの人にはできないのです。そんな検証が必要なのだという頭がこの人にはないのです。
  【女性議員比率、衆院は世界最低レベル IPU調査】朝日新聞 2013年4月13日( http://www.asahi.com/politics/update/0413/TKY201304130200.html
  <世界の国会の女性議員比率が昨年初めて2割を超えたことが、列国議会同盟(IPU、本部ジュネーブ)が3月発表した2012年調査報告でわかった。昨年の平均値は20・3%。ただし日本は、12月の総選挙で衆院の女性議員が7・9%に減って、ランキング(二院制の場合は下院)は現在、190カ国中163位まで落ちている>
  【日本の女性管理職の少なさ、グラフを見ると衝撃!--11.1%、男性との差際立つ】 御木本千春 マイナビニュース 2013/06/21 (http://news.mynavi.jp/news/2013/06/21/151/index.html
  <政府は21日、2013年版「男女共同参画白書」を閣議決定した。それによると、日本の民間企業などで管理職に就いている女性の割合は11.1%にとどまっていることがわかった><日本を含む12カ国における女性管理職の割合を比較したところ、フィリピンが52.7%(就業者における女性の割合39.2%)で最も高く、次いで、米国が43.0%(同47.2%)、フランスが38.7%(同47.5%)、オーストラリアが36.7%(同45.3%)、イギリスが35.7%(同46.5%)となった。一方、日本は11.1%(同42.3%)にとどまり、欧米やほかのアジア諸国(マレーシア25.0%、シンガポール34.3%)を大幅に下回った>
             *     *
  断言が持つ“潔さ”で真実・事実を覆い隠してしまえる、と信じ込んでいる政治家。
  その断言に根拠があるかどうかにはまったく関心がない妄信者。
  とんでもない人物を日本人は首相にしているわけです。
               *     *
  ちなみに、日本国憲法の改変にそんな人物が“血道をあげる”とどうなるかというと……。
  改憲を果たし日本を軍事国家にしてアメリカに喜んでもらおうという主観的な意図が、ほかならないその米軍側に迷惑がられるということになります。
  【憲法改正「地域に無益」 米軍当局者、異例の言及】 (共同通信 2013年10月02日 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013100201000936.html
  偏った主観に頼るだけの政治家は、世界的には、通用しない、ということですね。
               *     *
  【汚染水、湾外へ流出か…別のタンクからあふれる】 読売新聞 2013年10月3日( http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20131003-OYT1T00229.htm?from=top
  <東京電力は2日、福島第一原子力発電所の貯蔵タンクから、高濃度の汚染水があふれたと発表した。ストロンチウムなどの放射性物質が1リットルあたり20万ベクレル(国の放出限度は同30ベクレル)含まれているが、タンク上部から鉛筆くらいの太さの水流が落ちて、一部がタンクを囲むせきの外側へ流出している。近くに側溝があり、排水路を通じて海(港湾外)へつながっているため、東電は「海に流出している可能性がある」と説明している>
               *     *
  【第274回 現(うつつ)を抜かすだけの安倍政治】 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20130420/1366411107
  【第50回 安倍首相の辞書には<セクハラ>はない?】 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20120827/1346027121
  【第48回 万能! “解釈変更”】 http://d.hatena.ne.jp/a20e2010/20110725/1311547372
               *     *