第291回 大改訂版! カタカナ英語の表記を変えよう!

  前々回の「自分流シャレで遊んでみる」につづいて、今回も、ある種の“頭の体操”を楽しんでみます。
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  英会話を本気で学び始めた人のうちの多くが、そのうちに、「あのカタカナ英語は英語としてはどう発音すればよかったけ」という問題に直面するはずです(【第9回 「カタカナ英語は厄介です」http://d.hatena.ne.jp/a20e2010/20101119/1290116302)。いざそれを使おうという瞬間になると、カタカナで頭に収まった、日本語なまりの英語の方が先に頭に浮かんでくるからです。
  そこで、「苦言熟考」は「第10回」で【カタカナ英語の表記を変えよう】というエッセイを書きました。しかしながら、そこには、日本語には存在しない新たな記号を使うことにしようという、いささか無理な“注文”がありました。
  そこで、考えました。カタカナの大小を使い分けるだけでも、「カタカナ英語の表記」が、元の英単語のスペル・発音を思い出しやすいものになるのではないか。
  「第10回」の原稿を基にして、改訂案を提出することにしました。
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  『ア・イ・ウ・エ・オ以外のカタカナが小文字で表記されていれば それについては従来の日本語にはない発音をしよう!
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  「アイウエオ以外のカタカナ」には、いわゆる五十音のほかに次のようなものも加え、それぞれを一つの大文字として扱います。
  「ガ」「ギ」「グ」「ゲ」「ゴ」  「キャ」「キュ」「キョ」 
  「ザ」「ジ」「ズ」「ゼ」「ゾ」  「ジャ」「ジ」「ジュ」「ジェ」「ジョ」  
  「タア」「ティ」「トゥ」「テエ」「トオ」  「ダ」「ヂ」「ヅ」「デ」「ド」  「ダア」「ディ」「ドゥ」「デェ」「ドォ」 
  「バ ビ ブ ベ ボ」  「ファ」「フィ」「フゥ」「フェ」「」フォ」  「ヴァ ヴィ ヴ ヴェ ヴォ」
  「チャ」「チィ」「チュ」「チェ」「チョ」  「テユ」「テヨ」
  ……ですから、上の中の小文字「ヤ」「ユ」「ヨ」は例外として「従来の日本語どおりの発音」をすることにしましょう。
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  例を挙げていきましょう(分かりやすいように、ここでは、小文字のカタカナに赤色をつけておきます)。
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  まずは、日本人が苦手とするといわれる「R」と「L」について……。
  「RA」行については、この「R」は日本語にはない音ですから、小文字で、「RA」は「」「RI」は「」「RU」は「」「RE」は「」「RO」は「
  ……という具合に表わします。
  「RADIO」は「ラジオ」ではなく「イディオ」と書きます。これで、このラ行の文字が「R」を示していることが分かるわけです。
  自動車レース(RACE レイス)は「」、レース編みの「レース(LACE レイス)」は「レイ」になります。
  真実の「TRUTH」は「T」が「トゥ」、「RU」が「ー」、「TH」が「」または「す」 (〔注4〕をみてください)  「トゥ(す)」
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  〔注1〕「RACE」でも「LACE」でも、従来「ス」と書かれていた部分は(ローマ字表記で「SU」という発音ではありませんから、小文字「」に書き換えましょう。それでそれが「ス」(SU)ではなくて「S」だということが知れます。
  同様に、たとえば、「BED」は「ベッド」ではなく「ベッド」、「MILK」は「ミルク」ではなく「ミルク」になります。
  「ル」が小文字の「ル」になるのは、それが「LU」ではなく、母音がない「L」であることを示すためです。
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  〔注2〕 小文字のカタカナ「ラリルレロ」は本来は、たとえば、「ROOT 」(根)のように「RA」行を表すために使われるのですが、上の例のように、語尾、「MILK」「CHILD チャイルド」の「LK」「LD」のように他の子音とつながって使われる「」は「R」を示さないことにします。「RK」「RD」のように、あとに子音がつづく「R」が「ル」と発音されることは、英語ではないからです。
  竜巻「TORNADO」は「トルネード」ではなくて「トネイドウ」だということですね。同様に、魚雷「TORPEDO」は「トルピード」ではなく「トピードウ」と書いておけば英語に近い発音が頭に浮かびやすくなります。

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  「PREMIER」の「P」、「GREEN」の「G」、「GOLD」や「MILK」の「L」のように、単語の初めや中ほどにあって、あとに子音がつづく文字も(上に示したように)小文字「プ」「グ」「」で表記することにしましょう。「プレミア」、「グリーン」、「ゴールド」、「ミルク」というわけです。
  そう書いておけば、いざ英語として発音するときには「GO - LU- DO」「MI - LU - KU」とやる可能性が小さくなります。
  「TREE 木 トリー」「ト」を小文字にするのはそれが「TO」ではないことを伝えるためです。「トゥー」という書き方でもいいでしょうね。
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  「S」と「TH」を区別するために「シンク」を例として……。
  「KITCHEN SINK」(台所の流し)と「THINK TANK」(頭脳集団」の二つはこれまでのカタカナ表記ではともに「シンク」と書かれます。
  それを、「流し」のSINK「シンク」は「SI」で始まりますが「シ」ではSHIとの区別がつきませんので「スィ」、「頭脳集団」の「シンク」は「]」と書きます。「小文字の」で「SHI」でも「SI」でもなく「THI」であることを表わそうというわけです。
  両方の「シンク」の「ク」が「」と小文字になっているのは、両方の「ク」が「KU」ではなくて(本来の日本語にはない)「K」と発音されるべきであることを示しています。
  ですから、野球の球種「SINKER シンカー」は「スィンカ」で、考える人(THINKER)は「ンカ」になります。
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  〔注3〕「SINKER」と「THINKER」の両方にある「ER」のように「R」がついている英単語は「あー」という日本語発音とは異なっています。
  そこで、異なっていることを示すために「スインカー」「ンカー」ではなくて「スィンカ」「ンカ」と小文字の「」を加えるようにしましょう。加えることで「カ」の元の英単語には「R」が含まれていることを理解しようというわけです。
  同様に、「RIVER」は ヴァア  「SUPER」は スーパ 「FIRST 」は ファ 「TORNADO 」は トネイドウ。
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  ……というように、この新しいカタカナ表記法では、基本的には…
  「THA」(THANK)は「」「THI」(THINK)は「」「THU」(ENTHUSIASUM 熱中 意気込み)は「」「THE」(THEORY セオリー)は「」「THO」(AUTHORITY オソリティー)は「ソ
  さらには、「TH」がザ行で発音されている単語は「ザ」や「ズ」などとします(THAT, CLOTHES)。
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  思いつくままにもう少し……。
  「プレミアショー」(PREMIER SHOW)は「プレミア・ショー(ショウ)」
  「ロードショー」(ROAD SHOW)は「ドショー(ショウ)」
  「イベント」(EVENT)は「イヴェン
  込み入ったところで…。「サラブレッド」(THOROUGHBRED)は「ソロ゙ブレッド」とほとんどが小文字で表記されることになります。「THO」は「サ SA」でも「ソ SO」でもないし、「ROUGH」は「ラ LA」ではなく、「BRED」は「ブレッド BULEDDO」でないからです。
  野球やゴルフの「スイング」(SWING)は「W」が入っていますから、「スゥイング」となります。
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  「C」(PACIFIC) 「D」(BED) 「F」(ROOF) 「G」(BAG) 「K」(BOOK) 「L」(LOCAL) 「M」(DAM) など、英語の単語が子音で終わる単語、それに、「GAME」や「DATE」のように母音で終わっていてもその母音を発音しない単語の最後のカタカナ(「ム」や「ト」)もすべて(「」「ド」「」「グ」「」「」などと)書くということになります。
  〔注4〕 語尾の「」「ズには、実は、問題があります。
  「」については、それが「S」音か「TH」(TOOTH 歯)音かの区別がつかないからです。「スィアアズ」の「ズ」も、たとえば、(カタカナ英語としての例は少ないはずですが)「LOATHE ひどく嫌う」の「THE」を指している可能性が残ります。ですから、語尾の「TH」については「ひらがな」の「す」を便宜的に使うことにしてもいいかもしれませんね。
  「BALL」のような語尾の「」については、それが「R」音ではないかという心配はしなくていいでしょう。
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  「BA」行は「バ」「ビ」「ブ」「ベ」「ボ」、「VA」行は「ヴァ」「ヴィ」「ヴ」「ヴェ」「ヴォ」と表記することにしましょう。「ヴ」については「ヴゥ」とする必要はないようです。
  たとえば、「BALLET (ダンスの)バレエ」と「VALLEY 谷あい」の違いを、それぞれ「バレイ」「ヴァリイ」といった具合に書き分けるわけですね。
  「TELEVISION  テレヴィジョン」「VACCUM ヴァキュー」「VELVET ヴェヴェ
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  日本語の「ハ」行は普通は「HA」「HI」「FU」「HE」「HO」と表示されますが、別に「FA ファ FATHER  ファザア」「FI フィ FILTER  フィ」「FE フェ FENCE フェン」「FO フォ FORK フォ」のように「ファ」行も事実上すでに存在していますので、ここでは「F」音のカタカナを小文字にする必要はありません。
  ただ、この「FA」行については「フ」が、「FOOD フード」や「FOOT フッ」と「フ」のままで記されています。ですが、元の英単語が「HU」ではないことを示すために、「フ」(フゥッ)(フゥード)と書くことにしてもいいでしょう。
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  〔注5〕 上に例として挙げた「FOOT フット」さらには「BOOK ブック」の小文字「ツ」や、ほかに、「HUMAN ヒューマン」「FUSION ヒュージョン」の小文字「ユ」は例外です。小文字で表示されていても日本語としてそのまま発音していい文字です。「アイウエオ」以外なのですが、初めから小文字で表記されることが認められているもので、“もともと日本語にある発音”だからです。
  「ジャ」(ジャ)「ジ」「ジュ」(ジュー)「ジェ」(ジェ)「ジョ」(ジョー)の「ヤ」「ユ」「ヨ」もすでにそのまま受け入れられています。読み方を変える必要はありません。
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  ただし、「ツ」については別の問題があります。日本語の小文字「ツ」で表されるほどに、たとえば、「FOOT」「BOOK」「HIP」「 HOP」「KICK」の「ツ」は、英語では強くないのです。
  「LITTLE リトル 小さい」という単語を思い起こしてください。ふつうは、「TT」とつづくスペルは、たとえば「HITTER」のように「ヒッター」と書かれますが、「LITTLE」は「リットル」とは書きません。この「LITTLE」の感じでいいわけですね。
  アメカンフッボーの用語「HUDDLE」は「ハッドル」ではなく「ハドル」、中間の「MIDDLE」は「ミッドル」ではなく「ミドル」と発音されているように……。
  つまり、ここに挙げたような単語は「ツ」を強く発音しない方が通じやすいと考えてください。「T」「K」「P」「CK」がそれぞれ「TO」「KU」「PU」「CKU」でないのですから、自ずと「ツ」は弱く発音されることになるのだと思います。
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  次に「ヤ」行。カタカナでは「ヤ」「イ」「ユ」「エ」「ヨ」なのですが、この中の「イ」と「エ」をどう扱うかという問題があります。「YI」で始まる英単語がカタカナ英語になっている例はないようですが「YE」で始まる英単語では、少なくないでしょう。
  たとえば……。日本語で「エールを送る」というときの「エール」は「YELL」とつづります。ですから、これはカタカナでは「イェ」とでも書く方が原音に近いということになります。
  「黄色 YELLOW」を日本語ではふつう「イエロー」と発音しますね。これも「イェロー」と言った方が通じやすいはずです。
  ハッピー・ニューイヤーというときの「イヤー YEAR」。このスペルから明確な「ヤ」の音を聞きだすのは、英語としては無理なわけですから、ここは、「イヤア」というふうに小文字の「」を使う手があります。「ア」がくっついているのはそこに「R」が存在しているからです。
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  ところで、この表記法では(【第9回 「カタカナ英語は厄介です」http://d.hatena.ne.jp/a20e2010/20101119/1290116302)】で取り上げた)「シアーズ SEARS」は「スィアアズ」、「ベランダ VERANDA(H)」は「ヴェンダ」と書くことになります。
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  〔問題点1〕 トーナメント「TOURNAMENT」とツアー「TOUR」の二語を比べてください。どちらも「TOUR」なのですが、日本語では、片方が「トー」でもう一方が「ツー」となっていますね。英語ではどちらも(トアーと聞こえるような)同じ発音です。こういうところもカタカナ英語が抱えている厄介なところだといえます。
  〔問題点2〕英語のカタカナ表記を変えても、その英単語のアクセント(アセン)はそこに示すことができません。
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  さてさて、この表記法が普及すれば、カタカナで学んだ英単語でも、いざそれを使うというときにその発音に窮する恐れが小さくなるだろう、と思いませんか?……まあ、普及することはないでしょうから、この表記法に基づいて、あなただけの「カタカナ英単語辞典」を創ってみる、というのはどうですか?
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  最後に、面倒な“提案”を最後まで読んでいただいて「サンキュー」は?
  これはもとが「THANK YOU」ですから、新しい表記では「ンキュー」になります。
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  【第10回 英語のカタカナ表記を変えよう!!】 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20091024/1256343971
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