第190回 健在 “壊し屋”

  <会派離脱願16人、菅政権に「見切り」>(YOMIURI ONLINE 2011年2月17日13時38分 読売新聞)
  <民主党小沢一郎元代表に近い同党の比例単独衆院議員16人が17日、岡田幹事長あてに衆院会派からの離脱願を提出したことで、民主党内では、小沢元代表菅内閣の「倒閣」や、早期の衆院解散をにらんで動き出したのではないかとの観測が広がっている>
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  <民主党が“転落”への途を進み始めています。“壊し屋”小沢一郎の危険な顔が再び見え始めています>と<苦言熟考>が書いたのは2010年8月22日でした(「歓迎 “壊し屋”小沢一郎」 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20100822/1282426632)。民主党の代表選挙に自称“一兵卒”の小沢元代表が出馬する情勢が明確になってきたころでした。
  あれからおよそ半年が過ぎたいま、民主党はその支持率が20パーセント前後というところまで“転落”しています。
  自分の政治生命を守るためためになら何でもする政治家、“壊し屋”小沢一郎氏がその“転落”を“主導”してきました。
  党はいくらでも作り直すことができるが、一度死んだら小沢の政治生命は終わりだ、小沢が終われば日本がだめになる、とでも思い込んでいるのでしょうかね?代表戦に立候補したころからの小沢氏は、民主党の“転落”をこっそりと楽しんででもいるかのように“反党・利敵行為”をくり返しています。
  それも、自分が言うことに一貫性がまるでないという形で。
  “政治とカネ”に関して自分には何らやましいところはない、けれども、検察が調べている最中だから国会で何かを“説明”する必要はない?
  分かった、小沢さん、あなたも“推定無罪”の原則に従って扱われるべきだし、自分に不利な証言を(国会という場においてさえも)強いられてはなりません。ですが、あなたにはやましいところはないのでしょう?
  小沢氏の発言には、このように、多くの場合で、論理の整合性が欠けています。
  やましいところがないのなら、たとえ証人喚問の場ででさえ、堂々と“説明”できるはずではないか、という、だれもが抱く、当然の疑問に小沢氏は答えていません。疑問を抱いている人々を愚弄するかのように、平然とその持論を主張しつづけています。
  小沢氏に当選させてもらったと感じている国会・地方議員たち以外にもこの小沢流の修辞への賛同者が多い、とは考えにくいことです。
  支持率20パーセント前後。小沢氏は、自分自身のほかに、ほかならぬ民主党をもひどく傷めつけてしまいました。
  この信用失墜は“政権交代時代の到来”を夢見た国民を裏切るものでもあります。政権交代の意味をほとんど無に近いものにするものです。
  民主党内の“小沢派”の議員数の多さに頼んで、つまりは、国会運営で“小沢派”の票が必要な管執行部は小沢氏を厳しく処分することはできないと読んで、小沢氏は、理不尽な振る舞いを、考えられる限りという執拗さで、重ねつづけてきました。まともな議論を積み上げることよりは“数の論理”を優先させる、という旧来の自民党と同じ手法で。
  <小沢氏に理解できているのは、数による党内政治力学だけのようです。昔はどうであったにしろ、政策を構想し、組み立て、実現していく能力がこの人にはもう欠けています。そうするために、党として何をするべきかという発想がこの人にはありません><個人の“豪腕”がすべてを解決できるという時代はとっくに終わっているというのに><自民党が五十年間かけて進んできた途を民主党はわずか数年間で辿ることになるだけです。−−凋落。自滅>(「歓迎 “壊し屋”小沢一郎」から)
  “数年間”もかかりませんでした。その“凋落”と“自滅”が現実となっています。
  民主党はいま、分裂寸前という状況にあります。
  自民党だけではなく、すべての野党が、これで選挙が近くなったと、“壊し屋”小沢氏の“健在”ぶりに畏敬の念と親愛の情を抱いていることでしょう。
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  小沢氏に関する「苦言熟考」エッセイ
  「小沢代表のカンチガイ」(2007年11月24日 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20090511/1242045718
  「民主党 小沢代表の裏切り」(2007年11月5日 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20090511/1242045358
  「筋を通さないのは支持者もおなじ?」(2010年9月11日 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20100911/1284194374
  「知っています?“筋”って言葉?小沢さん」(2010年9月2日 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20100902/1283388618
  「“役割を終える”のは小沢氏だけでは足りない」(2010年6月27日 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20100627/1277593573
  「小沢色を払拭しなければ… (2010年3月23日 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20100323/1269338788
  「筋を通す」(2010年3月28日 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20100328/1269749663
  「検察の“説明責任”は?」(2010年1月17日 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20100117/1263683777
  「小沢氏と“説明責任”」(2009年6月24日 http://d.hatena.ne.jp/kugen/20090624/1245802750