再掲載 第37回 <美しい国>日本

  安倍晋三首相と自民党による「日本の大日本帝国化策動」は安倍氏の第一次政権のときから執拗・強引に進められています。
  今回は、10年前の苦言熟考から「第37回 <美しい国>日本」を再掲載します。

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   首相の面の皮の厚さは?

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  安倍首相が<美しい国>作り政策を、国民の大半が望む優先順位をまるで無視して、強引に売り込もうとしているのを見て、長年使ったことがなかった日本語の言い回しを思い出しました。「しゃあしゃあとして」です。  <現代国語例解辞典>(小学館)によると「あつかましくて、恥を恥とも思わないさま」という意味で使われます。

  <美しい国><美しい日本>を作っていきたい、作らなければならないと安倍首相が言い始めたとき、当然、首相の頭の中にある今の日本は<美しくない国>であったはずです。だからこそ、<美しい日本>を作らなければならないという思いつきが浮かんだのでしょう。

  首相のその認識は、遠からず、適正なものであったと思います。

  公共事業で談合を繰り返し、国民が納めた税金を食い物にする企業が国の産業の基幹となっている<美しい国>日本?その談合を主導し、賄賂を受け取る県知事が続出する<美しい国>日本?政治資金規正法の裏をかいて私財を蓄えようとする政治家が後を絶たない<美しい国>日本?その掛け声の大きさとは裏腹に、事実上、いつまでたっても高級官僚の“天下り”の弊害撲滅ができない<美しい国>日本?歴史と伝統を誇っていた食品メイカーが法律・規則を無視しつづけて国民の保健衛生を脅かす<美しい国>日本?一般人はもとより、学校教師から著名大学教授までが未成年女子を相手に“みだらな行為”を繰り返す<美しい国>日本?親が子を虐待し、殺しまでする<美しい国>日本?いじめの横行に学校も教育委員会も、文部科学省も適正に対応できず、子供たちの不幸な死が防げない<美しい国>日本?

  なるほど、日本の現状は<美しい国>からはかけ離れていますね。安倍首相の現実認識はかなり正しいと言えないこともないようです。

  ですが…。待ってください。 こんな日本にしてきたのは、いったいだれなのでしょう?戦後60年余、短期間の例外を除けば、日本の政治をほぼ常に牛耳ってきたのは自民党(とそれにつながる政党)でしょう?政策決定の主導権を持ちつづけ、現実に政策のほとんどを決定し、実行してきたのもそうでしょう?

  安倍首相が「こんな日本にだれがした?」と一言も発しないのは当たり前です。いま自分が率いる(ことになっている)自民党がそうしてきたのですから。

  野党の反対・抵抗?ばかを言ってはいけません。それはそれで実に不幸なことですが、戦後政治のどの時期に野党がまともな政策反対者であったことがありますか?どの時期に野党がそれだけの力を持っていましたか?
  <美しくない日本>になってしまったことの責任を自民党がほかに転嫁するのを許してはなりません。

  自民党の責任に一切触れずに安倍首相が「しゃあしゃあとして」<美しい国>作りを提唱するのをただ聞いていてはいけません。いまの日本がなぜ<美しくない>国になったのかをちゃんと説明することができない安倍首相は、では、どんな日本が<美しい>のかについては、具体的には、ほとんど言及していません。できないのです。抽象的な言葉を情緒的に並べて、国民をやんわりと脅すことしかできないのです。

  「さざれいしの いわおとなりて」

  明治から昭和にかけて、この歌を誇らしげに歌いながら日本が近隣諸国に対して何をしてきたかとは、ここでは問わないことにしますが、こんな理不尽な歌を“戦後”も長年、強制的に国民に歌わせようとしてきた政党の党首が、ほとんど藪から棒に<美しい日本>などと言い出したとき、胸の奥で何を考えているかを読むのはそれほど難しいことではありません。

  気をつけましょう。ぼんやりしているとますます<おかしな国>日本になってしまいますよ。
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