第326回  どこが「いわれなき」なのだろう?

  “根拠・証拠が示されていないことを事実・真実だと言い募る(詐欺師並みの)才能”が安倍晋三氏を自民党の総裁、そして日本の首相にしていると感じることがしばしばあります。
  日本国民にとっては実に不幸なことです。…下の記事を読んでください。
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  【朝日報道で「いわれなき中傷が世界に」…首相】 読売新聞 2014年10月03日 (http://www.yomiuri.co.jp/politics/20141003-OYT1T50079.html
  <衆院予算委員会は3日午前、安倍首相と全閣僚が出席して基本的質疑を行った> <安倍首相は、いわゆる従軍慰安婦に関する朝日新聞の報道が国際社会に与えた影響について、「『日本が国ぐるみで性奴隷にした』といういわれなき中傷が世界で行われている。(慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の虚偽証言を巡る)誤報でそういう状況が生み出されたのも事実だ」との認識を示した。そのうえで、「これまで以上に戦略的な対外発信の強化が必要だ。いわれなき中傷には『そうではない』と発信することが大事だ」と語った>
  <質問した自民党の稲田政調会長は、吉田氏の虚偽証言が日本の外交政策や国際社会に与えた影響の検証や、日本の名誉回復の具体策を検討する特命委員会を、同党に新設する考えを表明した>
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  繰り返します。安倍首相は、根拠が定かではない事例について「こうだ」と断言することが好きな政治家です。なんでも口先でごまかすことができると信じている詐欺師まがいの政治家です。権力を持った者が嘘を百回言いつづければそれが真実になる−というようなことを政治上の信条にしているに違いない危険極まりない政治家です。
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  <『日本が国ぐるみで性奴隷にした』といういわれなき中傷が世界で行われている。(慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の虚偽証言を巡る)誤報でそういう状況が生み出された>と安倍首相は断言していますが、世界のどこで、具体的にはどういうふうに「そういう状況」が生み出されたのかについては何も語っていません。この人物にとっては(ほかの多くの似非愛国者たちと同様に)“自分は生み出されたと思いたい”がそのまま“生み出された”ということなのです。自分の主張に“裏づけ”はいらないのです。自分が信じるところだけがこの人物には“真実”なのです。
  しかしながら、「誤報でそういう状況が生み出された」のが「事実」だという首相の断定のでたらめさ、無責任さは、実は、首相の「認識」を引き出す質問を行った自民党の稲田政調会長自身が明らかにしています。稲田氏は「吉田氏の虚偽証言が日本の外交政策や国際社会に与えた影響の検証」を匿名委員会を自民党内に新設してこれから行うと述べているではありませんか。
  「吉田氏の虚偽証言が日本の外交政策や国際社会に与えた影響の検証」を自民党として実施する前に、つまりは、なんの根拠もまだ見出していない段階で、安倍首相はねけぬけと「誤報でそういう状況が生み出されたのも事実」と言い切っているわけです。
  安倍首相はどうしようもないほど悪辣な(おそらくは、ほとんど生まれついての)ウソツキ・詭弁家です。「特定秘密保護法」の制定も「集団的自衛権行使」の閣議決定も、安倍首相がその詐欺師まがいの“能力”を十分に発揮しきって行ったことを、あなたもまだ忘れてはいませんよね。
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  【朝日新聞の吉田証言取り消しによって慰安婦問題そのものを無きものとすることの愚】 五十嵐仁  2014年10月06日 (http://blogos.com/outline/95945/
  <今日の毎日新聞の「オピニオン」欄に、興味深い記事が掲載されていました。「新聞への信頼回復 外国人記者に聞く[朝日の慰安婦・吉田書簡問題]」という記事です> <独フランクフルター・アルゲマイネ東アジア特派員のカーステン・ゲアミスさんは、「朝日が8月に慰安婦問題の記事を取り消し、検証記事を出したときは、なぜ今なのかが疑問だった」として、次のように述べています> <「私は以前に韓国人の元慰安婦4人に会い、オランダの議会にメールを送るなどして慰安婦問題を調べたことがある。だから朝日新聞が証言を取り上げた)吉田清治氏(故人)が目撃者のふりをして、うそをついていたとしても慰安婦がなかったことを意味しないことを知っている。そもそも私は吉田証言自体を検証記事が出るまで知らなかった。私の調査に吉田証言は必要なかったからだ。」>
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  独フランクフルター・アルゲマイネのカーステン・ゲアミス東アジア特派員のように「吉田清治氏(故人)が目撃者のふりをして、うそをついていたとしても慰安婦がなかったことを意味しない」という立場の人物が世界には数多くいることをまったく無視して、安倍首相は「いわれなき中傷が世界で行われている」と言い張っているのです。
  首相の「いわれなき」などという卑劣な言い逃れを世界が受け入れるはずはありません。そんな言い逃れを世界の良識が許すわけがありません。
  「いわれなき」というのは、「誤報でそういう状況が生み出された」という思い込みとおなじように、安倍首相(とその取り巻き連中・支持者たち)の頭の中だけにある「事実」にすぎません。
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  さらに言えば、安倍首相はもっと大きい、悪質な詐欺行為に走っていますよね。
  「慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の虚偽証」というのは、事実に基づいて発言する多くの人びとが指摘しているように、あくまでも、「吉田清治という人物が証言した範囲内では“強制連行”の事実は証明されなかった」というだけで、いわゆる“従軍慰安婦”制度を日本軍が(施設の設営・管理・運営を許可し、“慰安婦”の移動に便宜を図り、性病予防のために“慰安婦”を軍医に診療させるなどの形で)保護し、積極的に活用したことを否定するものではありません。
  「『日本が国ぐるみで性奴隷にした』といういわれなき中傷が世界で行われている」というのは「世界」の良識に対する、安倍首相(と、主に産経新聞を“活躍”の場としている偽物の“愛国者”“識者”“評論家”たち)の卑劣で恥知らずな言いがかりにすぎません。
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  安倍首相を国の頭として担いでいるあいだに、日本国民すべてが首相並みの詐欺師・卑劣者だと世界に思われかねません。
  筋が通らないことに対しては「それは間違っている」と言うことができる理性と勇気を日本の真の愛国者は持ちつづけなければなりません。
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