第293回  「資料は見つかっていない」のは当然では?

  東京ドームで行われる読売ジャイアンツの試合の入場者数は、プロ野球が機構として実数を公表することにしたときまで、長年にわたって常に「55,000人」でした。
  東京ドームにはいまでも、ホームベイスから外野のウォールまでの距離の表示がありませんよね。
  ヤンキース松井秀樹が「猛打賞」と報じられたことも何度もあったのでは?メイジャーリーグにはそんな制度はないというのに。
  これが「日本一の販売部数」を誇る大新聞社がすることです。
  事実を隠したり、嘘の情報を(誇大に)発表したりすることについて、それが報道機関として致命的な汚点である、という意識がないのですね、この大新聞社には。
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  いまでもそうなのですよ。  
  【上原は新生Rソックスの象徴…胴上げ投手4度】 (2013年11月1日 読売新聞)
  <レンジャーズから今季移籍した右腕は、当初は中継ぎを担い、抑え投手の故障離脱などで6月に抑えとなった。それからは27試合連続無失点など抜群の安定感で、レギュラーシーズンからワールドシリーズまで4度、胴上げ投手となった>
  待ってください。ことしのワールドシリーズに決着がついたあとに、上原が「胴上げ」されるところをテレヴィで見ました?「レギュラーシーズンからワールドシリーズまで」のあいだに、一度でも「胴上げ」を見ました?そりゃあ、だれかに抱き上げられることは、当然のことながら、何度もあったでしょうが…。
  わたしは1987年からメイジャーリーグの野球を、どちらかというと熱心に、見てきました。ですから、ことしだけではなく、メイジャーリーグ(に限らず、そもそも、アメリカのスポーツ界)には「胴上げ」の習慣はない、と言いきることができます。そんなものは一度も見たことがないのです。
  この新聞社は「見てきたような嘘」を平気でつくのだということがここでもよく分かります。
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 【余録:鎌倉に住んだ作家の高見順終戦の翌日…】毎日新聞 (http://mainichi.jp/opinion/news/m20131018k0000m070139000c.html
  <鎌倉に住んだ作家の高見順(たかみ・じゅん)が終戦の翌日の日記に「黒い灰が空に舞っている。紙を焼いているにちがいない」と書いている。さらに東京に行っていた作家の永井龍男(ながい・たつお)が、東京でも各所で紙が焼かれ、空が灰だらけだという話を伝えてきた▲終戦に際しては閣議決定で陸海軍だけでなく外務省や内務省でも大量の公文書が焼却されている。高見によれば鎌倉でも何かが焼かれていたらしい。当時の焼却命令は市町村の兵事関係の文書類にまで及んでいたのである▲以前の小欄でもふれたが、東京の内務省の裏庭の焼却は三日三晩続いたというから驚きである。これより先に敗戦を見越した外務省が焼却した文書は約8000冊にのぼる。この量は今年の外交文書公開で明るみに出たが、いやはやなんとも盛大に焼いたものである>
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  読売新聞は昨年8月に下のような社説を掲載しています(http://shasetsu.ps.land.to/index.cgi/event/1150/)。
  【河野談話 「負の遺産」の見直しは当然だ】(2012年8月29日 読売社説)
  <韓国の李明博大統領の竹島訪問に関連し、いわゆる従軍慰安婦問題が再燃している><その根底には、慰安婦問題に関する1993年の河野官房長官談話があることは否定できない。政府は、これを見直し、新たな見解を内外に表明すべきである>
  <野田首相参院予算委員会で、河野談話を踏襲するとしながらも「強制連行の事実を文書で確認できず慰安婦への聞き取りから談話ができた」と説明した。松原国家公安委員長は談話を見直す観点から閣僚間の議論を提起した>
  <しかし、軍や官憲が慰安婦を強制的に連行したことを示す資料は発見できなかった。元慰安婦の証言のみが根拠とされ、これを裏付ける調査も行われていない>
  <結果として、旧日本軍が女性を組織的に強制連行して「性奴隷」にしたといった誤解が、世界に定着した><だが、その後も、旧日本軍による慰安婦の強制連行を証明する資料は見つかっていない
  <野田内閣は、旧日本軍による慰安婦強制連行の確証がないことを踏まえ、河野談話という自民党政権時代の「負の遺産」を見直し、日本政府の立場を内外に分かりやすく説明しなければならない>
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  どこかで何かに色づけされていない頭で考えれば「<軍や官憲が慰安婦を強制的に連行したことを示す資料は発見できなかった>というのは、むしろありそうなことだ」となるのではありませんか? 
  「日本側に<強制連行を証明する資料>が残っていないのは、おそらくは、軍や政府がその資料をすべて焼き捨てたからではないか」と思うのではありませんか?
  読売新聞が上のように「資料」の存在の有無を重視するのは、つまりは、終戦前後の<大量の公文書が焼却>という事実を熟知しているからなのかもしれませんね。
  そうだとすると、ずいぶん卑怯なやり方ですよね。
  でも、嘘の情報を伝えたり、事実を隠したりするというのは、この新聞社の“得意技”のようですからね。
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  「秘密指定文書」の「廃棄」はいまでも行われています。
  【防衛秘密、3万件超を廃棄 問われる情報公開の姿勢】(2013年10月27日 共同通信
  <特定秘密保護法案を先取りする「防衛秘密」を管理する防衛省が、2011年までの5年間に廃棄した秘密指定文書は計約3万4千件に上ることが27日、同省への取材で分かった。一方、02年に防衛秘密の指定制度を導入して以来、指定が解除されたのは1件だけにとどまる><文書が廃棄されてしまえば何が指定されたか、指定は妥当だったかの検証は不可能。指定解除の少なさも併せ、政府の情報公開の姿勢が問われている>
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  読売新聞はそれでも「従軍慰安婦に関する資料が終戦前後にすべて焼却されたという証拠はない」とでも言い張るのでしょうかね?
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