第342回 「米提言書に沿う安保法制」「アメリカにすり寄る安倍政権」

  安倍晋三政権(と自民党公明党)はどこを向いてその政策を展開しようとしていると思いますか?
  “戦後レジーム”からの脱却と称して日本国憲法そのものとその精神を破壊しつくしたあとで……。
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  朝日新聞が2015年3月30日に下の記事を掲載していました。
  【米提言書に沿う安保法制 事例一致、首相答弁にも色濃く】佐藤武嗣=ワシントン、今野忍 (http://digital.asahi.com/articles/ASH3T6HZZH3TUTFK01F.html?_requesturl=articles%2FASH3T6HZZH3TUTFK01F.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASH3T6HZZH3TUTFK01F)<安倍晋三首相が進める安全保障法制によって、日米同盟をさらに強めようとする動きが日米両政府から出ている背景には安保法制が米国の知日派による提言書に沿っていることがある。中東・ホルムズ海峡での機雷除去など、首相が法整備の理由に挙げた事例は、提言書とも一致する。首相の国会答弁にも、その趣旨が反映されている> <シーア米国防次官補も同27日の講演で「日本にとどまらず、様々な地域で協力することになる」と強調した>
  <最新の12年の提言書は、「日本の責任範囲を拡大すべきだ」と集団的自衛権の行使を認めるよう強く勧めた。そのうえで、新たな防衛協力分野の具体例として、「ホルムズ海峡での機雷除去と、南シナ海の共同監視」を挙げた> <特に機雷除去については、イランが欧米からの制裁への対抗措置としてホルムズ海峡封鎖を示唆したことを挙げ、国際社会の要請があれば「日本は単独で掃海艇を地域に派遣すべきだ」と、日本が真っ先に駆け付けて機雷除去に取り組むよう促した> <安倍首相は2月の国会答弁で「ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様に深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況にあたりうる」と強調した>
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  田中良紹という人が【二枚舌外交のアメリカとすり寄るだけの安倍外交】  (http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar720031)と題したブログにこう書いていました。
  <日本人人質事件で、安倍総理の中東訪問が「イスラム国」に付け入る隙を与えたと批判する向きがある。それは甘い認識だと私は思う。安倍政権は日本人の人質がいる事を知りながら中東訪問の外交日程を組み、昨年12月には「イスラム国」に対する敵意の表明を訪問の目的と発表した> <平和憲法を持つ日本が空爆に参加する事は出来ない。そこで「イスラム国」と戦う国々に「人道支援」という名の資金援助をする意思を表明した。「人道」であろうがなかろうが「イスラム国」と戦う国を特定して資金提供するのは、「イスラム国」から見れば敵対行為である。従って日本は安倍総理の思惑通り「イスラム国」から有志連合の一員と看做されることになった> <そこでイスラム国」が日本人人質を殺害すれば、日本国民のテロに対する怒りに火が付き、国民の安全を守ると称して自衛隊を海外に派遣する事に国民の抵抗はなくなる。それがアメリカの望む安保法制を実現する布石となる。そこに安倍総理の中東訪問の狙いはあった> <アメリカは日本を軍事大国化しようとは考えていない。軍事大国化して自立されたのでは元も子もないからだ。しかしテロとの戦い」を宣言してアフガン、イラクで泥沼に陥ったアメリカは、それによって回復不能な打撃を受けた。だから「テロとの戦い」の肩代わりを日本に求めている
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  「テロとの戦い」だけにとどまりません。沖縄での米軍普天間基地辺野古移設ではどうでしょう?ここでも、アメリカが日本に求めている「肩代わり」は尋常なものではありません。
  県の許可区域外でのサンゴ礁損傷という海洋自然の破壊や、抗議団員の強制排除を含む工事の強硬遂行などは、アメリカ国内では、世論を気にして、まずやらない、というよりは、やれないことです。アメリカはそれを沖縄では平然として日本政府にやらせています。
  沖縄県民の意思を完全に無視する安倍政権の姿勢を強硬に支持するアメリカは、もはや、“民主主義”の旗手を自称する意図さえかなぐり捨てているのです。
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  そんなアメリカの対日姿勢を「苦言熟考」はかつて「貧すれば鈍する」(貧乏になると正しい判断力が鈍る:現代国語例解辞典小学館)と言い表したことがあります。【第317回 アメリカ “貧すれば鈍する”】(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20140711/1405026711
  その中に次の記事引用があります。
  【集団的自衛権行使決定、米の歓迎表明に韓国が反発「日本に好き勝手に他国領土への欲望を抱かせる」中国紙】レコードチャイナ 2014年7月3日 (http://3g.recordchina.co.jp/news.jsp?id=90588&type=13
  <2014年7月2日、環球時報(電子版)によると、安倍晋三内閣が他国への攻撃に自衛隊が反撃する集団的自衛権の行使を認めるため、憲法解釈を変える閣議決定をしたことについて、米国務省のハーフ副報道官は「日本での集団的自衛権に関する議論が国連憲章に基づき、幅広く行われてきたことに注目してきた。日本の決定を歓迎する」と語った>
  「苦言熟考」はこう評していました。<「日本での集団的自衛権に関する議論が国連憲章に基づき、幅広く行われてきた」ですって?内閣(自民党公明党)だけでの議論のどこが「幅広く」なのか?> <本来は憲法が定めるところに従って行われるべきの“改憲”を、議席数の多さをいいことに、力づくで解釈“壊憲”することが正しい「集団的自衛権の推進」方法なのか?> <「首相の野心」に基づいた、安倍晋三自民党政権による、民主主義や立憲主義を破壊しつくす暴挙を“暴挙”と断じる“理性”と“正義感”を、アメリカ政府はすでに失っているということですね>
  【アメリカ軍には「疲れの色」も 世界で高まる地政学リスク】[ワシントン 2日 ロイター](http://www.huffingtonpost.jp/2014/07/04/us-army_n_5559304.html?utm_hp_ref=japan
  <昨年は米国の国防予算が大幅に削減される一方で、2001年9月11日の米同時多発攻撃以降、米軍が最も行動を求められた年の1つとなった。過去10年以上にわたって戦争を行っている米国には、疲れの色がにじみ始めていると懸念する声も出ている> <CSIS(註:米戦略国際問題研究所)は2日発表した報告書で、米国防総省の基本予算は2012─2021年に約2割減る可能性があると指摘。米国社会の高齢化が進むなか、医療や社会保障に振り向ける支出が増えるため、国防費の削減圧力は「弱まらない」との見方を示した> <2011年まで米海軍大将を務めていたゲイリー・ラフヘッド氏は「混迷が深まる世界の傾向はすぐには変わらない」とし、「現在は海と空で対処できるレベルだが、時間が経つに従って、米軍に深刻な負担を強いるようになる」と述べた>
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  貧してアメリカは「正しい判断力」を鈍らせ、いや、失ってしまっています。アメリカ流の民主主義を展開するという(日本国憲法に象徴された)理念を支柱にした日米間の“戦後レジーム”をもう支えきれなくなっています。
  安倍政権は、そんな、衰退著しいアメリカ政府につけ込む形で、嬉々として「言いなり」になる道を選択しました。
  “第二の無条件降伏”?では、その意味は?
  アメリカへの“第二の無条件降伏”の向こうに安倍首相が見ているものは、結局のところは、アメリカの番犬になってでもという、あるいは、番犬になることを利用した、日本の再“軍事国家”化=再“大日本帝国”化であるに違いありません。
  日本をアメリカの番犬にするという方法で、安倍首相は日本の再“大日本帝国”化を実現することにしたのです。
  “民主主義の旗手”であることをやめたアメリカの番犬になって、世界中で“戦争ごっこ”に興じるというのが、真の国益とは何かをまじめには考えたことがないに違いない安倍首相の見果てぬ夢なのです。
  “革新官僚”の一人として、特に“満州”を舞台にして祖父・岸信介氏が“戦争ごっこ”に耽ったことをまねて、祖父の“栄光”を、今度は“戦後”を脱却した自分が再現したい、と安倍首相は思っているのでしょう。
  安倍首相のアメリカへのなりふり構わない「言いなり」ぶりからは、そうとしか思えません。
  真の国益ではなく、私的な情念を中心に据えて政治を考え、動かす、ほとんど狂気の日本国首相とその支持者たち。
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  日本は非常に危険な所に追い詰められつつあります。
  安倍政権の盲動をいますぐに止めなければ(自衛隊員をはじめとして)多くの日本人が、アメリカの番犬に成り下がって“戦争ごっこ”を楽しむ、正気を失った人物たちに殺されてしまいます。日本は滅ぼされてしまいます。
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  アメリカへの「言いなり」症状はこういうふうにも発現しています。
  【AIIBは「中国外交の完全勝利」。間違った安倍首相は、官邸で財務省、外務省幹部を怒鳴った!】 2015年4月4日 現代ビジネス(http://news.livedoor.com/article/detail/9968302/
  <ADB総裁は財務省既得権益なのだ。こうしたことから、端から(中国主導によって発足するアジアインフラ投資銀行)AIIBを軽視した情報収集による読み違いとなったのではないか。これは、日米同盟を金科玉条とする外務省にも言えることだ。中国主導の新経済圏づくりと見る米国への過剰配慮が根っ子にあるので、どうしてもAIIB軽視の情報を優先し、それを基にした判断が「日本外交敗北」に繋がったのだろう>
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  ここでは、真の国益とは何かを考えることなくアメリカの「言いなり」になることを第一とする官僚たち!
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【週のはじめに考える 軽視される自衛官の命】2015−04−05 東京新聞 (http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015040502000132.html)<隠された米兵空輸 : 安倍晋三首相の認識はどうでしょうか。昨年五月二十八日の衆院予算委員会で野党議員から「米国の説明をうのみにしたのでは」と問われた首相は「大量破壊兵器がないということを証明できるチャンスがあるにもかかわらず、それを証明しなかったのはイラクであったということは申し上げておきたい」と述べました> <「ないこと」を証明するのは不可能に近いため「悪魔の証明」と呼ばれています。しかし、安倍首相は「ないと証明できなかったイラクが悪い」と主張しているのに等しいのです>
  安倍首相の頭脳構造のすこぶる杜撰な在り様がよく見えますよね。
  “屁理屈”一辺倒。それだけの人間です。
  一国の頭でいるだけの頭脳を持っているとはとても思えません。
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