第258回 論理的につなげられない

  論理的に筋が通らない下のような記事を書き、それをアナウンサーやキャスターに読ませつづけているのは、それを正すシステムと能力がNHK(日本放送協会)にはないからだとしか思えません。このような悪文を視聴者の耳と頭脳に、日常のこととして、これでもかこれでもかとばかりに、送り届けているのですから、NHKの罪は実に重大だと言えます。
  なぜと言って、このような歪んだ文しか発せられない頭脳では、まっすぐな思考ができるはずがないではありませんか。
  日本人の頭脳をそんなふうに劣化させるのはNHKの任務ではありません。
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  NHKニュースのサイトから拾った第一の例…
  <来月行われる韓国の大統領選挙で、候補の一本化を目指している野党と無所属の候補は11日、経済や外交などの分野で共通の公約作りに入ることで合意し、一本化に向けた動きが加速しています>(11月11日 17時21分)
  「公約作りに入ることで合意し、一本化に向けた動きを加速させています」とするのが論理的に正しい文です。一つの文に「野党と無所属の候補」と「動き」という二つの“主語”にあたる語を、適切な“つなぎの言葉”なしに並立させる間違いを避けているからです。
  「公約作りに入ることで合意したことで、一本化に向けた動きが加速しています」とつないでもいいでしょう。ただし、この場合は「野党と無所属候補」ではなく「野党と無所属候補」でなくてはなりません。
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  第二の例…
  <UHXの開発は、平成16年に検討が始まり、当初から川崎重工業に行わせる方向で議論が進んでいましたが、3年前、護衛艦やヘリコプターの開発など、大型の事業については、省内に部局をまたぐプロジェクトチームを設置して企業の選定を検討する方式が採用されました>(11月11日 17時37分)
  まるで、稚拙な翻訳文のようですね。
  この文の最大の欠陥は、だれが「検討」を始めたのか、だれが「議論」を進めていたかが、ともに分からないことです。「設置」したのも「採用」したのも、それがだれであるかについては、その主体がはっきりしていません。
  しかも、「検討が始まり」「議論が進んでいました」を「方式が採用されました」で受ける?
  「UHXの開発は、防衛省内で平成16年に検討が始められ、当初川崎重工業に行わせる方向で議論が進められていましたが、3年前護衛艦やヘリコプターの開発など大型の事業については、省内に部局をまたぐプロジェクトチームを設置して企業の選定を検討する方式が採用されました」とすればどうです?
  「平成16年に防衛省内で検討が始められたUHXの開発は、、当初川崎重工業に行わせる方向で議論が進められていましたが、3年前護衛艦やヘリコプターの開発など大型の事業については、省内に部局をまたぐプロジェクトチームを設置して企業の選定を検討する方式が採用されました」でもかまいませんよね。
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  悪文に慣れてしまった頭脳からは悪い思考しか生まれません。
  NHKは、自らが外部に向けて発する言葉に責任を持たなければなりません。
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  ついでながら、NHKは、たとえばスポーツ放送の(アナウンサーだけではなく)解説者が使う日本語にも注意を払うべきです。日本人の思考を劣化させるような日本語を使わせないように、彼らを教育するべきです。そういう努力がNHKが使う日本語を全体としてましにします。
  使う言葉にまったく神経を使わない公共放送!
  自分が使っている(上の例のような)日本語がいかに無様なものであるかに気がつかない公共放送!
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  衆議院議員選挙が近いようです。
  政治家が使う日本語がまたどれほどでたらめであるかを知るいい機会でもあります。それがでたらめであればあるほど、日本の状況は悪いということになります。
  日本語を論理的に使うことができない政治家にいい政治ができるはずはありませんからね。