第243回 預金が戻ってきました

  フィリピンに移住したときからほぼ6年間にわたってずっと使ってきたE銀行が4月に経営破綻してしまったことを前に伝えました(第240回)。今回は“その後”について報告します。
  E銀行を管理下に置いたフィリピン預金保証協会(PDIC)は、インターネット上のホームペイジを通じて、元預金者に向けた情報をずっと発信しつづけていましたので、預金が本当に戻ってくるのか、などというような心配は、わたしが白内障の手術を受けるために日本にいた5月11日からの一か月間にも、まったくありませんでした。
  新たな動きは、わたしが利用していた支店についてはその「支店があった場所で、預金返済業務を6月19日から7月5日まで行う。プライオリティー(先着順受付整理)番号を18日からおなじ場所で発行するから受け取りに来るように」という知らせで始まりました。
  その期間内に返済申請手続ができない元預金者は8月9日から、マカティ市のアヤラ通にあるPDICの事務所に直接でかけるか、書類を郵送するかして手続を済ませるように、という指示もしてありました。
  6月18日に元支店に出向いてわたしが受け取った番号は、4口座分で80から83まで。返済申請手続日は22日となりました。これは19日に始まる手続の四日目に当たっていましたから、1支店については一日20人余りの申請が処理されることになっていたようです。
  22日の午後1時少し前に元支店に行ってみると、4人の元預金者がすでに玄関前に並んでいました。
  中では、こちらが用意してきた申請書類に不備がないかどうかがまずは受付で審査されました。
  不備がないことが分かると、書類は別のカウンターに移されました。種類に書かれたものと預金通帳や預金証書、小切手帳などとが、さらにはそれらが元帳と合致していることが確認されたあと、元預金者を受取人とする小切手がそこで発行されるわけです。
  わたしは米ドルの定期と普通預金口座も持っていましたので、小切手発行担当者から「ドルで受け取りたいか、それともペソにするか」と尋ねられました。市中のドルとペソの交換レイトは1ドル=42ペソぐらいでしたから、銀行でのレイトは1ドル=40ペソ程度になるのではないかと予想していたわたしは「ドルのままで受け取りたい」と伝えました。ところが、意外だったことに「ここでの交換レイトは1ドル=45ペソだから、ペソで受け取った方がいいのでは?」という声が戻ってきました。市中の交換レイトよりも3ペソも米ドルが有利になっていたのです。ドル売り、ペソ買い。わたしは、もう迷わずに「では、ペソで」と回答しました。
  ただし、わたしのE銀行への預金額は最大保証限度額50万ペソを超過していましたので、ドルをペソに換算してわたしに有利な額を算出してもらったところで、得をするはずの額のすべては超過分として没収されることになっていました。つまり、現実としては、受け取ることにするのはドルででもペソでもよかったわけですね。
  とはいうものの、ドルをペソに換えて計算してもらったことは、まったくの無駄、というわけではありませんでした。50万ドルを超過した分が、もしかしたら、戻ってくるかもしれない、と最後に告げられたのです。
  どういうことかというと…。経営破綻はしたものの、E銀行にはまだ資産がありました。その資産を、元預金者たちへの返済金や、他の金融機関や投資家などへの債務と相殺したあとにまだプラスの資産が残っていれば、それを売却するなどして、50万ペソ以上を預けていた元預金者たちへの追加返済金に当てることになっている、というのです。つまり、相殺整理業務が終了するまでにはおそらくは1年以上かかるだろうが、預金がもう少し戻ってくる可能性はゼロではなっかたわけですね。
  さて、返済された50万ペソは二分して、一つは、25日に、これまで使ってきたU銀行に、他の一つは、26日に、M銀行に新たに普通預金口座を開いて、そこに預けました。それぞれの銀行への預金総額が50万ペソを超過しないようにしたことは言うまでもありませんよね。
  E銀行の経営破綻に関する騒動は、わたしについては、破綻発覚後およそ二か月で、片づきました。
  いろいろと勉強をさせてもらい“後学のため”にはなったのですが、まあ、できることなら、二度とは経験したくない出来事でした。