洞爺湖で開かれたG8で日本の<拉致問題>はどう扱われたでしょう?
読売新聞(インターネット版/2008年7月9日)によると−
<テロ対策に関するG8首脳声明にも「拉致や人質をとることは強く非難されるべきだ」として、拉致問題が初めて言及された>
どうやら、それだけのようです。どういう流れの中でかというと−
<北朝鮮の核開発をめぐる6か国協議の取り組みを引き続き支持するとした中で、北朝鮮が抱える「未解決の懸案事項」の一つとして>
というわけです。
日本の新聞は<(アメリカだけではなく)G8が言及した>という点を、日本政府の宣伝に乗せられて、高く評価しているようですが、愚かなことです。こんなことに<言及する>ぐらいのことは誰にでもできます。
こんな<言及>では北朝鮮は痛いとも痒いとも感じません。
<拉致問題>のへの具体的な取り組みにはまったく触れられていないし、G8全体としては、すぐに取り組む意思がないことを、逆に、この<言及>は明らかにしているからです。
G8の会議に先立って行われた福田首相とブッシュ米大統領の会談ではどうだったでしょうか?
毎日新聞の<クロ−ズアップ>(2008年7月7日)が<拉致問題に関するブッシュ米大統領の主な発言>をまとめています。それによると−
7月6日 「日本国民が、拉致問題が無視されないよう切望していることは分かっている」(福田首相との会談)
それ以前については−
03年 5月 「拉致された日本国民の行方が一人残らず分かるまで、米国は日本を完全に支持する」(小泉純一郎首相との会談)
10月 「拉致問題は極めて重要。できることがあればやっていきたい」(同)
05年11月 「拉致問題についてはかねがね自分は共感しているし、問題の解決を支持している」(同)
06年 4月 「今日は最も心を動かされた会談の一つだ。拉致問題への働きかけを強めたい」(拉致被害者家族の横田早紀江さんらと面会後、記者団に)
07年 2月 「(拉致問題の)重要性は認識している。置き去りにしない」(安倍晋三首相との電話協議)
11月 「私たちは日本の拉致被害者とその家族のことを忘れない」(福田康夫首相との会談)
08年 6月 「米国は拉致問題を絶対に忘れない。日本と協力し、引き続き圧力をかけ続ける」(北朝鮮のテロ支援国家指定解除を発表した記者会見)
テロ支援国家指定の解除と拉致問題とを直接関連させた発言は一度もなかったのです。
政府・自民党はずっと<拉致問題の全面解決なしには、北朝鮮にたいする「テロ支援国家」の指定の解除はない><全面解決なしには解除しないようにアメリカに求めていく>と言いつづけてきていました。
<拉致被害者家族の会>にもそうなると(ほとんど)保証してきていました。
<ステアク・エッセイ>(苦言熟考)は<核に関する北朝鮮との交渉が行き詰り、拉致問題に触れることを北朝鮮が拒否すると、アメリカは日本の拉致問題は(北朝鮮に核兵器を持たれることに比べれば些細なこととして)無視するはずだ>と主張していました。
上の<クローズアップ>は<米国のテロ支援国家指定を拉致問題解決の切り札と見なしていた日本の世論>と述べています。
その<切り札と見なした>世論というのは、国民のあいだの格差拡大、政府の年金への取り組み姿勢などへの不満が自分たちに向けられるのをかわすのに恰好の材料だとばかりに、政府・自民党が、国際政治の現実が見えないまま、国民感情に訴えやすい拉致問題をことさら大きく扱って作り上げたものでしかありません。
内政がうまくいっていないときは外交・外政に国民の目を向けよ−という単純な考えですね。
政府・自民党は、北朝鮮への<テロ支援国家>指定が、拉致問題の(解決どころか)進展も見ないまま外されようとしているのに、日本国民にはもちろん、<拉致被害者家族の会>へもまだ、公式には謝罪していません。
いまの政府・自民党は“保身=政権維持”への思いだけで動いています。
<拉致被害者家族の会>に現実味のない期待を抱かせ、<会>を頻繁に利用さえしてきたのも“保身”のためです。
こんな政府・政党には早く政権を去ってもらわないと日本がだめになってしまいます。
日本は世界の尊敬を失ってしまいます。