<民主党の小沢代表は20日、党本部で記者会見し、自民党との連立政権構想について、「(自民党との連立で)国民との約束が実行できるなら、国民に対する責任を果たすことになる。今もそう思っている」と述べ、「大連立」が望ましいとの考えを改めて強調した>
<その上で、民主党内の反対を理由に、与党との政策協議や、次期衆院選後の連立に否定的な考えを示した。小沢氏の発言に対し、「党内の理解が得られれば、大連立を再び目指す意向を示したものだ」(党幹部)とする声が民主党内から出ている>
(2007年11月20日23時10分 読売新聞)
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「ステアク・エッセイ」はさきに<民主党は小沢代表に留任を要請すべきではない>という主旨の意見を述べたことがあります。
この20日の発言で小沢代表は再び、前回の参議院議員選挙で民主党に投票した有権者の多くの期待を裏切りました。
小沢氏には<自民党から政権を奪う><自民党の長期政権を終わらせる><自民党を野に下らせて、その傲慢な姿勢を根本から改めさせる>などといった有権者の意思がまったく理解できていなかったのです。
<国民との約束が実行できるなら、国民に対する責任を果たすことになる>?
民主党が選挙で掲げた公約を実行する‐ということに小沢氏は当然責任を負っていますが<自民党との連立で>?
この一点を小沢氏は公約としていたでしょうか?
答えは「ノウ!」です。
有権者は<自民党と連立内閣を形成して公約を実現する>とは、小沢氏からも、ほかの民主党幹部からも、一度も聞いていません。
小沢氏が忘れているようなら…。
民主党は<政権獲得を目指す>と公言していましたよね。<自民党・公明党から政権を奪う>と叫んでいましたよね。
20日の小沢発言を受けて民主党の鳩山幹事長は<小沢氏の主張は党全体の考え方とは明確に異なる。党として異なる選択をした以上、小沢氏もそれに従うという約束をした」と強調した>そうです。
英語に"l told you so!"という言い方があります。
「おれが(あのとき)そう言っただろう?」
「おれが言ったとおりになったね」
などという意味で使われます。
次の衆議院議員選挙での民主党の獲得票数が今回の小沢発言でまた減りました。
民主党支持者の目には小沢氏はもう「実行力のある指導者」ではありません。
「自分の野心実現のためなら支持者さえ裏切るマキアヴェリスト=権謀術数主義者」と写っています。
「小沢氏は自民党員だったころの自分に戻った」と多くの有権者が感じています。
<連立>問題について小沢氏を黙らせることができなければ、民主党は次の選挙で敗れます。
自民党を政権から遠ざけたいと考えて前の選挙で民主党を支持した有権者を小沢氏と同党は甘く見てはいけません。
民主党がいまやるべきことは、たとえば海上自衛隊による<給油>活動に関する考えをいっそう明確に示して、独自の法案を真正面から(国会審議で)自民党にぶつけて、国民の意見を聞く=判断を待つことでしょう。
闇の中での<党首会談>ではなく、国会での<党首討論>を通じて、民主党の主張を展開していくことでしょう。
選挙公約を民主党が実行するまでには時間がかかる‐ぐらいのことは、参院選で民主党に投票した有権者には分かっていました。
小沢氏はその“拙速”で、忍耐強い支持者を二度も裏切ってしまったのです。
民主党は、政権を担当する政党になれるかどうかの“正念場”を迎えています。小沢氏にこれ以上かき回されてはなりません。
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ところで…。
朝日新聞(インターネット版)が2007年11月24日、<労働党、圧勝の見通し 11年ぶり政権奪回へ 豪総選挙>という記事を掲載しました。
<ハワード(現)首相は小泉元首相、ブレア前英首相らとともに、「テロとの戦い」を主導してきた米ブッシュ大統領の「最後の盟友」だった。シドニー近郊の自身の地元選挙区でも苦戦が伝えられ、現職首相が落選すれば1929年以来となる>
<若さを前面に出して「豪州に新たなリーダーを」と訴えた(野党・労働党の)ラッド党首は、1500人規模を派遣するイラクからの段階的撤兵や京都議定書の批准を公約としており、ブッシュ政権から距離を置くことになるとみられる。国際社会での米国の政策にも影響を及ぼすのは必至だ>
これが国際社会で本流の動きです。
小沢氏が民主党と有権者をかく乱していなければ、<給油続行>を唯一の国際政策としている自民党政権も豪自由党と(遅かれ早かれ)同じ道を歩むことになっていたはずです。
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