第73回 「韓国人に対する暴行・監禁、1週間に4−5件」 2008/01/31  閲覧(798)

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  <朝鮮日報>(1月25日)インターネット版が、日本企業の海外進出での成功・失敗例だけを見聞きしてきた者の耳にはかなりショッキングなニュースを伝えています。
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  中国の山東省では<最近、中国人が韓国人を監禁、拉致、暴行する事件が急増している>というニュースです。そんなことがなぜ起きているかというと<韓国企業が夜逃げ同然で無断撤退するケースが増えている>からだそうです。
  「無断撤退」するのは「取引先への代金未払い」などの「債務問題」を抱えてる韓国企業(経営者)で、それを阻止しようという中国人による「暴行」「拉致」事件が「1週間に4−5件起きている」(在青島韓国総領事館のキム・チャンウォン領事)というのです。
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  海外に進出したものの経営がうまくいかなくなった企業・工場が現地の法や企業倫理を無視して「夜逃げ」する‐‐というのも穏やかではない動きですが、そうさせてはなるものかと、韓国人経営者を「拉致」したり、かれらに「暴行」を加える‐‐という対応も尋常な行為ではありませんね。
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  韓国系のある皮革工場の責任者が地元の「暴力組織」によって3日間「監禁」された事件では、「<滞納している賃貸料を払え>と脅迫され続けた」ばかりか、解放時には「おまえの家がどこにあり、子どもがどの学校に通っているか全て知っている。韓国に逃げようなどと考えるな」という「脅迫」も受けたそうです。
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  この工場が中国に進出したのは2005年の8月。工場の建物の賃貸契約は5年間でした。ところが人件費の上昇などで採算性が悪化したために、韓国の本社は2007年に工場撤収を決め、現地責任者に対して、契約期間内の残りの賃貸料については建物の持ち主と「適当な水準」で話をつけるよう指示しました。
  これに対し、建物の持ち主は「賃貸料全額を要求し、交渉を拒否。暴力組織を動員する実力行使に出た」わけです。「工場責任者は携帯電話で家族に連絡し、半年分の賃貸料を支払い、やっと解放された」ということです。
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   「同省威海市では昨年、サムスン電子の下請け業者の社長が食堂のトイレで暴漢二人に襲われ、凶器で指を切断される重傷を負った」
  「平島の食品(コチュジャン〈唐辛子味噌〉)メーカーで働く韓国人管理職(42)は工場への出入りに使用料を払えという現地住民らの脅迫に耐え切れず、昨年末自ら命を絶った」
  「飲食店やサウナ、美容室など韓国系の個人経営者にまで暴力組織の手が伸びている。青島市城陽区で食堂を経営する韓国人は<暴力組織のメンバーが毎月一定額を奪っていき、無銭飲食までしていく>と話した」
  ‐‐などという例も挙げられています。
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  <朝鮮日報>は「中国では時間がかかる法的手段ではなく、暴力で問題を解決しようとするケースが多い」と断じています。
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  青島地区には約5000の韓国企業が進出しているそうです。そのうちの多くが「繊維、縫製、アクセサリー、皮革など労働集約型産業」に属しており「経営が行き詰まった企業は少なくない」ということです。
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  2005年にはすでに、中国では人件費が安い‐‐という話は“神話”=“とうに過去のもの”になっていたはずですが、上の皮革加工工場のように、その“安さ”を求めて進出する企業もまだあったのですね。
  いえ、人件費の高騰だけが問題なのではなく、もろもろの税金、手数料なども中央・地元政府の手で引き上げられてきていました。労働者へのよりよい福祉=待遇改善を求める姿勢も強化されつづけてきていました。
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  <中国人による韓国人への暴力>というニュースの背後には、自分の企業をなんとか生き延びさせようという韓国人中小企業経営者の強い意思・希望と、国内に吹き荒れている外国企業進出というカネ嵐の風向きをいまこそ自分の方に曲げたいという中国人の欲求との、相互のぶつかり合いが見えます。
  そのぶつかり合いが「夜逃げ」や「暴力・拉致」などという形で表れているのは、たぶん、両者がともに、成熟した資本主義というものをきちんと体験してきていない=その“蚊帳の外”に置かれてきていたからなのでしょうね。
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  こんなニュースを読むと、資本主義というのはもともと、こういう血なまぐさいような、ドロドロした戦いの中から育ってきた=整備されてきたのかもしれない、という気さえしませんか。明治・大正の日本資本主義の勃興期にも(やくざ組織などが絡んだ)このような事件が起きていたのかもしれない、と感じませんか。
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  ‐‐そんなことを考えてしまいました。