第300回 偽愛国者たちの “類は友を呼ぶ” 

  あるブログの中で 【安倍総理ネット右翼レベルだ!】というサブタイトルをつけて<おそらく現在の安倍総理にも第一次安倍政権時代と同様に保守論客のブレーンがついているのだろうが、彼らの知的水準が低く、ネット右翼レベルなのだろう。そのため、彼らの話を素直に聞いている安倍総理もまた、ネット右翼と見紛うような発言をしてしまったのだと思う>と書いている人がいる。
  山崎行太郎という人物だ。「ウィキペディア」は「山崎 行太郎は、日本の文芸評論家。保守反動系批評家を自称している。日本大学芸術学部講師」だと紹介している。
  ★文藝評論家=山崎行太郎の『毒蛇山荘日記』 (http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/
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  上の発言をここに紹介したのは、この「保守反動系批評家」の意見が「苦言熟考」が前回に述べていたこと=安倍首相の“お友達”長谷川三千子氏(哲学者)も百田尚樹氏(作家)もその思考過程・内容が粗雑すぎる=と少なからず重なっていると感じたからです。
  その意見には「苦言熟考」の<さて、さて、“4氏”を選んだ安倍自民党の方はというと…。「もし他国が日本に攻めてきたら9条教の信者を前線に送りだす。そして他国の軍隊の前に立ち、『こっちには9条があるぞ!立ち去れ!』と叫んでもらう」というような子供じみた発言をして、まるで鬼の首でも取ったかのように得意がっているらしい百田尚樹氏のような、“筋”が通らないことしか言えない、無責任で知性に欠けた、卑怯な人物をNHKの経営委員にしたのですから、安倍自民党自体がどのぐらい幼稚で破廉恥な政治外交感覚で動いているかが知れますよね>という見方と相通じるところがあったからです。
  「保守反動系批評家を自称している」という人物との予期していなかった“意見の相似”にいささか興を覚えたというわけですね。
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  その山崎氏は別のところではこうも書いています。
  <たとえば渡部昇一は、「シナ事変は今では明らかになったようにコミンテルンの手先が始めたものである」、「アメリカ・イギリスとの開戦は、マッカーサー証言の如くその包囲網により、日本の全産業・全陸海軍が麻痺寸前まで追いつめられたから余儀なくされたのである」と論じている。要するに、悪いのはアメリカやコミンテルンであって日本ではない、というわけだ><こうした議論からは、日本の主体性というものが完全に欠落している。これではまるで、敵国が謀略を仕掛けてきた時、日本の指導者たちは何もせずに黙って見ていたようではないか。彼らは敵国の謀略に為す術もなく簡単に騙されてしまうほど無知で無能だったとでもいうのだろうか。そんなはずはない>
  前回【安倍首相の“お友達”はやはりこんなふう】の中の、百田尚樹氏の、あの「もし他国が日本に攻めてきたら…」という発言を思い出しませんか?
  「苦言熟考」第299回はこう書いています。ちょっと長い引用になるのですが…
  <“愛国者”を自認しているはずの人物によくもこんな恥知らずで情けないことが言えたものですね><だって、「他国が日本に攻めてきたら」というのは、つまりは、百田氏が愛してやまない(安倍)自民党・日本政府が外交に完全に失敗した結果としてそうなった、ということでしょう?他国に攻められるような外交活動しかできていなかった、してこなかった、ということでしょう?><いや、それだけではなくて、攻めてこられるまで、日本の情報収集機関は有効な活動を何もしていなかった、ということでしょう?外務省と防衛省自衛隊は諜報活動で負けていた、ということでしょう?><そもそも、百田尚樹という作家が本物の“愛国者”なら、日本政府(外務省)の外交の失敗と防衛省自衛隊の情報収集・諜報活動の不足を、まず、憂えるべきなのではありませんか?そんな政府と“軍”しか持っていなかったことを後悔すべきではありませんか?それが本物の“愛国者”が持つべき大局的見地というものではありませんか?><もしも攻め込まれたとしたら、「9条教の信者」に何をしてもらおうか、などという能天気な思案に耽るまえに、そんな程度の政府と“軍”しか持っていなかったことを“愛国者百田尚樹”は、だれよりも先に、恥じるべきです>
  山崎氏が述べているように、自分たちの主張には「日本の主体性というものが完全に欠落」していることに気づきもしない百田尚樹氏のような人物たちの意見を聞き入れていれば「安倍総理もまた、ネット右翼と見紛うような発言をして」しまうことになるのは当然ですよね。
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  山崎氏はまたほかにこうも指摘しています。
  <たとえば、保守派は櫻井よしこを始めとして「国家観」や「歴史観」、「伝統」といった言葉を好んで使うが、彼らは、保守とは「国家観」や「歴史観」、「伝統」を語る人間のことであり、あるいは「南京虐殺はなかった」とか「従軍慰安婦は存在しなかった」と主張する人間のことだと考えているようだ><しかし、これは逆に言えば、そうした条件を満たせば誰でも保守になれるということでもある。中国を批判し、靖国神社に参拝し、愛国心の重要性を訴えれば、あなたも明日から保守になれます、というのであれば、保守も実にお手軽になったものだと言わざるを得ない><私は、悪いことを全て他国のせいにし、日本に責任はないとする歴史観を「受動史観」と呼んでいるが、この受動史観に囚われている人たちは、自分たちは「被害者」あるいは「弱者」であり、自分たちの手は汚れていないということを必死に証明しようとする><本当に強い人というものは、言い訳をしたり、自己を正当化したりしない。本当の帝国は、自分たちがやってきたことを、良い点も悪い点もしっかりと記録に残す。戦前の日本のように敗戦間際になって機密書類を焼いて捨てたりはしない>
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  「悪いことを全て他国のせいにし、日本に責任はないとする歴史観」を「苦言熟考」は“卑怯者の史観”だと考えています。この<自分たちは「被害者」あるいは「弱者」であり、自分たちの手は汚れていない>と言い張る“卑怯者”こそが、実は、彼らが反対意見に対して投げかけるあの決まり文句“自虐史観”の持ち主だと信じています。
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  わたしは、上のブログに行き当たるまでは山崎行太郎という人物のことは何も知りませんでしたし、自分自身は「保守反動」とはかなり遠いところに位置しているはずだ、と感じています。山崎氏の「本当の帝国」という用語にも大きな違和感を抱きます。
  しかしながら、筋を通して物事を考えるという姿勢を貫いていれば、世界をどんな角度から見つめていようと、偽物・まがい物・粗悪品=ここでは亡国者=というのは見分けられるものなのだと、いま、改めて感じています。
  渡部昇一氏。櫻井よしこ氏。長谷川三千子氏。百田尚樹氏。…ああ、こう並べてみると、この偽愛国者=亡国者たちはみんな、産経新聞を拠りどころにして妄言・暴言を吐きつづけているのですよね。
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  それに…ワガ内閣総理大臣安倍晋三氏。
  さて、さて、浅薄な“卑怯者の史観”に骨の髄まで捕らえられている亡国者たちを身の回り集めて日本の軍事国家化に向かって邁進するこの人物をどう評価したものか…。
  ・得票数は過半には及んでいないのに議席数で野党を圧倒したというので、その数を頼んで、ここぞとばかりに傍若無人な振る舞いをつづけるゴロツキ政治家?
  ・A級戦争犯罪人(被疑者)で祖父・岸信介元首相の“威光”から抜け出すことができない“擬似ファザーコンプレックス”のお坊ちゃん?
  ・原子力発電や米軍沖縄基地に反対する者たちの顔を札びらでひっぱたくジアゲヤ政治家?
  ・地方の“政治的名門”という家庭に口から先に生まれてきた天性のウソツキ?
  ・単なる「お手軽」保守でしかないのに“愛国者”を気取る自己陶酔症患者?
  明白なのは、安倍首相は、中国や北朝鮮に倣って国民の基本的人権を奪いつづけなければ“強い日本”は築くことができないと妄信している、危険極まりないオロカモノだということです。
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  危ない、危ない。
  偽物の“愛国者”(実は亡国者)たちの跋扈をこれ以上許していては、日本はただただ傾いていくだけです。
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