第166回 社民党はいまや消滅寸前

  こんな記事がありました。
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  参院選敗北の社民に打撃=辻元氏の離党意向 (時事 2010/07/27)
  <福島党首は参院選を控えた5月末、当時の鳩山政権が米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の県内移設の方針を決めたことに反発。党内を説得し、社民党は連立政権から離脱した。当時、辻元氏は連立維持派だったものの、離脱に伴い、国土交通副大臣を辞任したが、「辞めるのはつらい」と涙を流した>
  <しかし、参院選社民党は改選3に届かない2議席にとどまる敗北。前回から比例票を39万票減らすなど、党勢の退潮傾向に歯止めを掛けられず、福島党首の責任を問う声が党内にくすぶっていた>
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  <苦言熟考>はことし4月25日に、次の文章を含む、福島党首を批判するエッセイを掲載しました(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20100425/1272145582)。
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  次の参議院議員選挙社民党が“惨敗”するような気がしています。いえ、基になる議席数が少ないのですから、“惨敗”といっても、議席数の上では大きく目立つようなことはないのかもしれませんが(略)…。
  さて、そういう気がする第一の理由は、言うまでもなく、沖縄の普天間米軍基地の移設に関して、社民党が連立政権与党の一つとしてまったく機能していないことにあります。移設を可能にするための現実的な情報収集や調査などにはいっさい手をつけないまま、基地の<国外への移設>を叫ぶだけで(この問題の複雑な現実の前で自らの方針がいつまでも決められない)“友党”民主党をいっそう混乱させたばかりか、連立政権のイメッジをすこぶる傷つけてしまいました。党の存在を世間に訴える好機会と捉えて<溺れかかっている人=民主党=の足を水底から引っ張る>ことしかしてこなかったのが社民党と福島党首です。“万年野党”の思考パターンから一歩も抜け出られなかったわけですね。前の衆議院議員選挙で社民党候補に投票することで、結果として、自民党から政権を奪った有権者が、政権政党としては失格者であることが明らかになった、こんな“わがまま”社民党に満足しているとはとても思えません。
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  その参院選社民党は<改選3に届かない2議席にとどまる敗北。前回から比例票を39万票減らすなど、党勢の退潮傾向に歯止めを掛けられ>ませんでした。予想したとおりの“惨敗”です。
  沖縄県民には理想的な案だと社民党が信じた「普天間基地の県外・国外への移設」案について、その実現のためにあれだけ「がんばります」と福島党首が繰り返したのに、沖縄選挙区ででも、社民党が支持した山城博治候補は自民党の候補に勝てませんでした。どう“がんばる”かについて何も語らない、具体性を欠く、子どもじみた、あんな野党色丸出しの“筋”の通し方では、沖縄県民の支持を得るには、やはり、十分ではなかったわけですね。
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  野党乱立の時代になっています。与党の政策には反対だと主張する以外には独自性が出せない社民党はいま“風前の灯”といった状況の中にあります。社民党は、民主党との連立からの離脱過程で、現実的な政策立案ができない政党だという烙印を自らに押してしまいました。参院選での“惨敗”のあとのこの危機に「党執行部の一新」という手垢混じりのやり方でしか対応できないことを誰の目にも明らかにしてしまいました。
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  日本の政治状況はますます悪くなっています。
  国民=有権者、特に(いわゆる)“無党派層”は自らの“浮つき”に気づいていません。“定見”を欠いているために、その時の単なるムードに流され過ぎます。気が短すぎます。長期的な視野を持っていません。
  そのムードを、無責任に、マスコミが一丸となって醸成し、広め、強めます。マスコミは事の枝葉末節をほじくり返すだけで満足しています。そうすることを“正義”だと思い違いしています。
  マスコミの影響力を過大評価する政党は、批判されることを恐れて萎縮してしまい、場当たりの政策や他党批判しか思いつかなくなっています。創造力を失くしていまい、建設的な思考ができなくなっています。
  いえ、いえ、元凶は政党自身なのですよ。
  そもそも、政権を担っている民主党を含めて、どの政党も、日本の確固とした未来像をいまだに国民=有権者に描き示していません。十年後、五十年後の日本をどういう国にするのかという構想を持っていません。そんなことでは、国民=有権者が“定見”を持つことはありえません。
  社民党が“風前の灯”の状態にあるというのは実に象徴的なことです。自党をどういう政党として確立したいかという議論を行う前に熱心に“党内抗争”をしているようなところに未来はありません。
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  ところで、7月30日の東京新聞によると−−
  <民主党は二十九日午後、参院選惨敗を総括する両院議員総会を国会近くの憲政記念館で開いた><所属議員約三十人が意見表明。「枝野幹事長、安住淳選対委員長は当然だが、菅首相も責任を取るべきだ」(中津川博郷衆院議員)、「戦争で大敗北した責任を最高司令官が取るのは当たり前だ」(川上義博参院議員)と、十人前後から執行部に退陣を要求する意見が相次いだ><一方で「首相や幹事長に責任を押しつけるのは気の毒だ。前執行部の小沢一郎氏らも連帯責任だと感じる」(石井一・前選対委員長)と現執行部を擁護する意見も出た>そうです。
  民主党、お前もか−−。
  菅首相の<「消費税をめぐる不用意な発言で、厳しい選挙を強いることになったことに心からおわびする」>という(どこがどう“不用意”だったかについてはまったく言及しない)底の浅い“反省”からも分かるように、民主党も、社民党と変わらない程度に、自党が置かれている状況が理解できていません(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20100715/1279195296)。
  経済も財政も、社会保障も教育も−−。あらゆる分野で日本は危機的な状態に陥っています。そんな状態を好転させる道筋を示すことができない政党に存在理由はありません。
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  醜い党内抗争に精力を費やしている時ではありません、いまは、どの党も。
  何をしたら国民=有権者にそっぽを向かれるのか、何をどう実現していったら国民=有権者に信頼されるのかぐらいのことは、もうそろそろ、すべての政党に真剣に考えてもらいたいものです。