2010年7月13日の東京新聞によると…
<北沢俊美防衛相は、首相の「消費税率10%発言」について「戦略的に使い損なった。首相自ら発信するのは少し失敗だった」と、敗因を指摘>してるそうです。
<蓮舫行政刷新担当相は「消費税が影響したことは否定しないが、政治とカネの問題などで失望を抱かせたことが前提としてあった><比例代表で当選した直嶋正行経済産業相は「(消費税で)説明不足の面があり、国民の多くの反発が出たのではないか」と述べた>と述べているということです。
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こんな程度の反省と分析ですむと民主党員は本気で信じているのでしょうかね?信じているとすれば、この政党にも“明日”はありません。
<首相自ら発信するのは少し失敗>ですって?
<説明不足の面>?
ではなぜ<首相自ら発信>するようなことになったのでしょうか?
何のどこが<説明不足>だったと言いたいのでしょうか?
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選挙の敗因を消費税に求めるのなら、日本の今後の経済財政運営と税制のどこに、どういうふうに消費税引き上げを位置づけるかという大きな視点が必要だったのでは?その視点から国民=有権者に論理的かつ丁寧に説明すべきだったのでは?
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いや、そもそも、民主党にその視点がなかったことが初めから大問題だったのです。
なかったから、首相が自ら発信するという愚策を選ぶことになったのです。なかったから、ちゃんとした説明ができなかったのです。
何かほかに<戦略>があったかのように言うのはまやかしです。もっとやろうと思えばまともな<説明>ができたかのように言い繕うのは不正直の極みです。
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この参院選で、極端に分かりやすいことを、とにかく大声で明確に言う、という小泉元首相に倣った手法で“大躍進”した<みんなの党>にもその“意欲的な”政策を具体化する道筋はなさそうですが、それが国民=有権者に許されたのはこの党が少数野党だからです。
政権政党はそうはいきません。当たり前なことです。
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日本の政党と政治家は“伝統的に”(報道機関と同様に)論理的な思考ができません。口にすることに論理的な道筋をつけることができません。
<苦言熟考>はそのことをこれまでに何回も指摘してきました。
民主党も例外ではありません。敗因を消費税言及に安易に求めようとするところにその弱点が典型的に表れています。
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<官僚依存からの脱却>はどこへ行ったのか?
<地方主権>はどこに消えたのか?
いえ、昨年の衆院選挙でこしらえたマニフェストのすべて項目を実行するべきだとの小沢前民主党幹事長の極論を支持する国民=有権者は少数派でした。
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資料:7月7日の読売新聞 <読売新聞社が実施している「参院選ネットモニター」の第5回調査結果が6日、まとまった。民主党の小沢一郎前幹事長が、子ども手当の満額支給など昨年の衆院選政権公約を修正した党執行部を批判していることに、回答者全体の75%、民主党支持層でも68%が「評価しない」と答えた>
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つまり、国民=有権者はすこぶる現実的に各党のマニフェストを捉えているのです。
衆院選での民主党のマニフェストには、よいところも悪いところもあったのです。民主党ははそこのところの見極めに完全に失敗しました。
端的に言えば、それが敗因です。
たとえば、<行政にかかる無駄の徹底的な排除>がいまでも国民=有権者に強く支持されていることは<みんなの党>の大躍進が証明しています。民主党は前の選挙でのマニフェストを徹底的に分析しておくべきでした。何が是で何が非かを党内でとことん検討しておくべきでした。
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民主党は、参院選挙で大敗北したのは消費税の扱い方が悪かったから、という分析ですべてをすませてはなりません。
それは民主党の“死”を意味しています。
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どの政党でもかまいません。長期的な視野に立った大きな日本像をだれかに描いてもらいたいものです。
そうするのが政党の国民への義務だとどの政党にも考えてほしいものです。