安倍晋三が日本を破壊し続けている 4

【第50回 安倍首相の辞書には<セクハラ>はない・・・】

  いえ、安倍首相に限らず、<従軍慰安婦>問題で<日本軍による具体的な強制はなかった>とする人たちの論理では<この世界に“セクハラ”は存在しない>ことになってしまいます。どういうことかといいますと…

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  <朝鮮日報>のインターネット版(2007/6/28)にこんな記事がありました。見出しは「TV出演中の日本人女性、大学講師からセクハラ受けていた」です。

  フィリピンのケイブルTVで韓国のKBSインターナショナルが見られます。チャンネル・サーフィンをしていて、これまでに何回か行き当たった番組の一つに、世界各地から韓国に来ている外国人女子留学生を10人以上集めて様々な質問をし、意見を述べてもらうというものがあります。わたしは韓国語が分かりませんが、美しい学生を選んでいるようで、見た目にもなかなか華やかなトークショウです。質問する側の韓国人男性も、スタディオ内の観客もずいぶん楽しんでいます。日本語にすると『美女たちのおしゃべり』というタイトルになるそうです。

  さて、上の記事によると、ある大学講師が、このショウに出演していた日本人留学生(22)に番組の中で「大学講師から一緒に寝ないかと言われた」ことがあると暴露されて、勤務先の大学に辞表を提出したということです。その後、講師は「セクハラを行った事実関係を認め」解任されています。

  女子学生はこの番組への出演を取りやめ、間もなく日本に戻るそうです。

  「解任?たったそれだけのことで?」「寝ないかと言っただけだろう?」と感じるあなたは安倍首相や多くの自民党国会議員と同類です。産経新聞もここに加えていいでしょう。

  上の一件が“セクハラ”になるのは、相手(ここでは女子留学生)の意思を無視して、この講師が性的関係を迫ったからです。講師には、この学生の成績を評価し、単位を与えるかどうかの“権限”(権力)があったからです。事実上、この“権限”を背景にして<関係を迫った>からです。

  同じ<朝鮮日報>によると、産経新聞は先月18日、「(従軍)慰安婦は<雇用契約>を交わしていた」という米軍報告書が存在する、と報じ、「報告書に慰安婦の雇用条件や契約条件が明記されており、慰安婦の女性が一定額の借金を返せば解放されるという条項があるという点で、当時の米軍当局が日本軍の“強制徴用”や“性奴隷”とは違った認識を持っていた証拠になる」と強調している、ということです。

  「ソウルで金品と引き換えに徴募され、ビルマ(現ミャンマー)のミイトキーナ(現ミッチナ)地区にあった<キョウエイ>慰安所で日本軍を相手に売春行為を行っていた朝鮮人女性20人と、慰安所を経営していた41歳の日本人男性が、米軍の捕虜と」なり、とられた調書にそういう記録があったというわけです。

  ところで、刑事事件では、いまでも、“自白の強要”があったとして後に無罪になるケースがあります。警察や検察がその“権力”を背景に“強要”を繰り返し、“誘導”を行えば、警察・検察に都合のいい自白は容易に得られるということですね。

  「金品と引き換え」であろうとなかろうと、全体の<慰安所>制度の背後には日本軍の“権力”がありました。

  上の大学講師が、かりに、高価な贈り物を女子学生にしていた(女性学生はそれを断りきれずに受け取っていた)としても、それがこの学生の意思に反する限り、この講師が自らの“権力”にモノを言わせて関係を迫ったことに変わりはありません。

  従軍慰安婦制度は日本軍が(少なくとも)容認していた“事業”です。たとえ、女性たちをその手で連れ出したのが民間人であったとしても、背後に日本軍の“権力”があって初めてそれは可能だったのです。ミャンマーまで連れ出した「朝鮮人女性20人」を強要・誘導して<契約書>にサインさせるのは簡単なことだったはずです。

  そんな<契約書>にどんな価値があると産経新聞は言うのでしょう?

  しかも、その米軍報告書は「米軍が主に日本人経営者に対する尋問を行って作成した」ものだといいます。公平な調書だとは思えません。

  そんなものがあったからといって、日本軍の関与がなかったかのように主張するのは愚かなことです。自らの思考力のなさ、善意の欠如を証明するだけです。

  上の大学講師は「現実には、わたしは彼女と性関係を結んでいない。それがなんでセクハラなのだ」というような愚かなことは言っていません。

  産経新聞や安倍首相、自民党国会議員などよりは“権力”の意味が分かっていたようです。

  セクハラは“権力”が犯す罪なのだ、ということが。

  日本が<バブル景気>に沸いていたころ、多くの日本企業がアメリカに進出してきました。ロサンジェルス・タイムズ紙に何度も、日本企業でのセクハラが報じられたものです。

  民主的な社会では(企業内であろうとなかろうと)“権力”というものがどういうふうに受け取れているかが分かっていない企業・経営者がそれほど多かったのです。

  “権限”(権力)を有するあなた(男女を問わず!)が、その“権限”が及ぶところで(あなたとは異なる性の)相手に、その意思を無視して、性的関係を求めるか、性的言動を繰り返して示せば、それはセクハラと認定されるということが理解できていなかったのです。現実に性的関係を結んだかどうかはここでは問われません。

  安倍首相と多くの自民党国会議員、産経新聞はそこのところがまったく分かっていません。

  日本軍が直接手を出して“強制連行”したかどうかをこの人たちは問題にしたがっていますが、ここでの<悪の根源>は、当時の日本軍が持っていた“権力”なのです。問題にされているのはそこなのです。

  その、“権力”があって初めて成り立ったこと、“権力”なしには成り立ち得なかったことの一つが<従軍慰安婦>制度です。

  安倍首相や多くの自民党国会議員、産経新聞などがいかにも使いそうな「そんなことを言われたって、相手は俺からの贈り物を受け取ったりもしているんだよ」などという言い逃れは、セクハラ事件では通用しません。“権力”にモノを言わせて受け取らせた可能性が高いからです。

  ですから、産経新聞、<契約書>があったなどと愚かなことを言わないように!

  当時の日本軍の“権力”を後ろ盾にしていれば、そんなものは簡単に作り上げることができたはずです。

  <従軍慰安婦>制度で日本が問われているのは“権力の悪”を日本がどうとらえるかということです。

  日本と日本軍がかつて犯した“権力の悪”による罪をいまの日本がどこまで、どう反省しているかを世界は見ているのです。

  底の浅い言い逃れを世界はすでに聞き飽きています。そんなものはもうくり返してほしくないのです。真実の謝罪を求めているのです。

  米下院の外交委員会は27日、旧日本軍の慰安婦問題について日本は十分に反省していないとして、非難決議案を39対2で可決ました。下院本会議でも7月中には可決される見通しです。

  それを受けて安倍首相はこう発言しています。

  「米議会ではたくさんの決議がされている。そういう中の一つ」「コメントするつもりはない」

  この人はいったい何を考えているのでしょうね?

  自分に分かること以外は何も考えていない?考えることができない?

  こういう無能で無責任な人物を首相にしていることを日本人は「恥ずかしい!」と思わなければなりません。

  自分が唯一頼りにしているアメリカの議会の下院委員会が圧倒的多数で決めたことをここまで軽んじたことが持つ深刻な意味も、安倍首相はまったく理解していません。

  参議院議員選挙が近づいています。

  この選挙は、まっとうな日本人が安倍首相の愚劣な政治を拒否する、またとない機会です。

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