再掲載 「こんな「社説」は読みたくない =2= 」

 2007年8月13日月曜日に書いた一文を再掲載します。
  「読売新聞」が事実上の自民党機関誌であることを示す例を取り上げていました。
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   <これでは民主党政権担当能力はない、と判断されても仕方がないだろう>というのが読売新聞(2007/8/9)の社説の書き出しです。
   「社説」がそう思うのは民主党の小沢代表が前日、トーマス・シーファー駐日米大使に<「ブッシュ大統領は『これは米国の戦争だ』と、国際社会のコンセンサスを待たずに戦争を始めた」「日本は米国中心の活動には参加できないが、国連に承認された活動には参加したい」とも語った>からです。
   わたしには一つの立派な見識を示していると思えるのですが、「社説」によると<この主張は明らかにおかしい>のだそうです。
   なぜなら<海自の活動は(2001年9月の米同時テロ後に採択された安保理決議1368に基づいた)多国籍軍のテロ掃討作戦の一環である>からだそうです。
   「海自の活動」というのは<海上自衛隊多国籍軍への洋上給油活動を継続する>ということです。
   問題はこの“多国籍軍”がだれかということです。
   小沢代表は米大使に<国連安保理決議1386に基づくアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)への参加は可能だ>と語り、対イラク戦争は「国連安保理決議1386」の対象外だという考えを伝えていました。
   それが「社説」は気に入らなかったようです。<日本にとって、現実的な選択肢ではあるまい>と思うからです。
   ですが、「社説」は「現実的」という言葉で、アメリカが単独“先制攻撃”で始めた対イラク戦争と、本来はこちらが“主戦場”であるべきだった対アルカイーダ・タリバン戦争とを一まとめにし「国連安保理決議1386」の趣旨を拡大してあてはめようとしているばかりか、対イラク戦争開始時には「イラクがアルカイーダやタリバンを支援しているという証拠はまったくなかった」という事実を隠蔽し、ブッシュ政権の主張に、自民党政権ともども、盲従しています。
   ちなみに、インターネット百科辞典「ウキペディア」を覘いてみましょう。
   《国際治安支援部隊(こくさいちあんしえんぶたい International Security Assistance Force )は、国連平和維持活動(PKO)のひとつ。略称ISAF。部隊は6500人ほどからなる。国連安保理決議1386号に基づき、2001年12月に設立された。ターリバーン、アルカーイダ、地元の軍閥勢力に対抗し、アフガニスタンのカブール及び近郊のバグラム空軍基地の治安維持を支援することに目的にする》とあります。
   これに基づいてブッシュ政権による対イラク戦争に加担できると「社説」は主張しているのです。
   「社説」がいう「多国籍軍」というのは<アフガン国内で米英仏加韓など約20か国が、インド洋では日米英仏独パキスタンなど8か国の17隻がそれぞれ活動している>ことを指しています。しかし、これが国連決議が定義しているものと明らかに異なっていることは言うまでもありません。
   読売新聞の「社説」がしばしば論理性を欠いていることは、これまで何度か指摘してきました。この論調も“良識ある新聞”のものというよりは、ほとんど「自民党機関紙」のものです。
   それと比べると、小沢代表の論理は一貫しています。一つの政党の主張として十分に耳を傾けることができます。
   「政権担当能力」がないというのは、たとえば、選挙でなぜ惨敗したのかの分析が党としてできず、党首がその惨敗の責任を取らないような政党のことをいいます。ブッシュ政権に盲従して日本の真の国益を考えないような政党のことをいいます。
   ところで、小沢代表が今回、ブッシュ政権への戦争協力を部分的に拒否したことで、民主党が政権をとった場合に「日米関係が悪化する」ことを憂える論調があります。
   憂える必要はありません。そんな“脅し”に耳を傾ける必要もありません。
   対イラク戦争はいまや、アメリカ国内でも、アメリカの戦争ではなく「ブッシュ政権」による戦争だと思われています。昨年の中間選挙民主党が圧勝したのがその証拠です。それで足りない人は最近の世論調査をみてください。
   単なるブッシュ政権の政策への反対を「日米同盟の危機」のように大騒ぎするのは子供じみたことです
   小沢代表の今回の対応は、アメリカの次の大統領に感謝されることになるかもしれません。ブッシュ政権による愚かな戦争の終結を早める役割の一端を担ったとして。
   デマゴーグを得意技とするのを読売新聞の「社説」には是非ともやめてもらいたいものです

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