第371回  「つなげられない」症候群 : 第二弾

  「苦言熟考」は二年ほど前に、こんなことを書いています。
  【第313回 こんな悪文を書いているようでは…】 2014-05-21 (http://d.hatena.ne.jp/kugen/20140521/1400616891
  <報道機関が、恥ずかしがりもせずに、世に垂れ流しつづけている“悪文”について、また書くことにしました> <“悪文”は、その書き手が論理の上で破綻していることの明確な証(あかし)だと考えるからです> <一つの文の前後を正しくつなぐことができないような粗雑な頭脳では、たとえば政治の、複雑な状況を正確に、間違いなく把握・理解することができるはずがないからです。何事についても、まともに筋が通ったことをいえるはずがないからです>
  そんな悪文の最たるものとして、次の例を挙げていました。
  【岡崎が15点目 日本選手最多得点更新】 NHK 5月11日 (2014年)
  <マインツ今シーズン、リーグ7位となり、岡崎選手は34試合中33試合に出場し、シーズン15得点はドイツ1部リーグの得点ランキングで7位となる成績を残しました>
  <「マインツは」「岡崎選手は」「シーズン15点は」……ですって。“主語(に当たる語)”が次々と三つも!>
  <脳の構造が分裂している記者が書いた記事だとしか思えません> <厳密にいえば、この「シーズン15得点」はだれのものかが指定されていませんしね。…「マインツ」のものででもありえる、実に不細工な流れになっているでしょう?> <この文のポイントはあくまでも「岡崎選手」にあるべきなのですから、たとえば《今シーズン、リーグ7位となったマインツで34試合中33試合に出場した岡崎選手は、ドイツ1部リーグの得点ランキングで7位となる15得点をあげる好成績でシーズンを終えました》の方がまともな書き方だと思いませんか?>
  そんな例をもとにこうも書いていました。
  <“悪文”は粗雑な頭脳から生まれます> <粗雑な頭脳の持ち主たちに報道機関が乗っ取られているような現状を見逃していてはなりません> <だって、政界・官界に棲む“賢い”連中の悪行を、その粗雑な頭脳のせいでチェックすることができないようでは、報道機関はその存在理由を失ったも同然なのですから> <報道機関には、まずは、自分たちが“悪文”まみれになっていることを知ってほしいものです。そのことに気づいて、まともな文を書き上げようとする努力をすぐに始めてほしいものです。日本をいま以上に悪くしないために。日本人を不幸にしようと躍起となっている“無法者”安倍自民党政権にこれ以上はだまされつづけないために> <これは報道機関に限られる問題ではありません。「すっきりとした」文を書くことができない頭では、人びとを誑(たぶら)かしにかかってくる“頭脳明晰な”誰かの虚言・妄言・暴言などの“悪”を見破ることができません。そんな誰かに簡単に騙されてしまいます>
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  参考資料として【第320回 「…いて」症候群の蔓延を防がねば】 2014-08-10 (http://d.hatena.ne.jp/kugen/20140810/1407629436)にも目を通してください。
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  さて、報道機関の「一つの文の前後がちゃんとつなげられない」症候群の2016年での現状はどうなのでしょう?
  次の記事を見てください。
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  社説 【米乱射事件 許せぬヘイトの凶行】 朝日新聞 2016年6月14日 (http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=com_gnavi
  特にこの個所を: <現場のクラブは、同性愛者の社交場として知られ、容疑者は日ごろから同性愛者への嫌悪を公言していた>
  問題の“症候群”はまだ治癒されてはいませんね。ここでも、一つの文に「現場のクラブ」と「容疑者」という“主語に当たる語”が二つ、互いに論理的につながらない状態で、並べられています。
  「社交場として知られ」のあとには、「現場のクラブ」に関する説明(述語)が続かなければ、この個所は完成しません。たとえば、「現場のクラブは、同性愛者の社交場として知られ、これまでにもたびたび、同性愛嫌悪者に営業を妨害されていた」などといったふうに。
  文の中に、“主語に当たる語”としてどうしても「容疑者は」を入れたかったら、たとえば、「日ごろから同性愛者への嫌悪を公言していた容疑者は、同性愛者の社交場として知られていたこのクラブを特に狙って大量殺人に及んだものと見られている」とでも書けば、論理的ですっきりした文ができあがります。
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  同じ社説の中の次の文はどうでしょう?
  <容疑者はアフガニスタン系の米国人で、現場で銃撃戦の末に射殺された>
  ここでは“主語に当たる語”は「容疑者は」だけですから、上の例文とおなじ欠陥は避けられています。
  しかしながら……。この書き方では、「容疑者」が「射殺された」のは、この人物が「アフガニスタン系」だったからという、事実に反する印象を読者に与えることになってしまいかねません。
  そんなふうに読まれたくなかったら、たとえば、「現場で銃撃戦の末に射殺された容疑者はアフガニスタン系の米国人だった(ことが捜査当局のその後の調べで分かった)」というぐあいに書くべきだったでしょう。
  朝日新聞の社説もまだ「一つの文の前後がちゃんとつなげられない」症候群の毒されているということです。
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  日本の報道機関の“安倍自民党政権べったり”ぶりがますますひどくなってきています。
  以前は比較的に独立性を保っていると見られていた新聞社・テレヴィ局を含めて、日本の報道機関が全体として安倍自民党政権に屈服させられ、正しく必要な情報を国民に伝えられなくなった原因の一つは、悪化する一方の“「一つの文の前後がちゃんとつなげられない」症候群”にある、と「苦言熟考」は考えています。
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  参議院議員選挙に突入します。さて、これからも安倍自民党が振りまくはずの膨大な量の嘘に報道機関はどう対処するでしょうか? −−第370回【嘘つき、恥知らず、安倍首相 ・ 第二弾】を再読してください。
  安倍自民党政権の嘘や欺瞞についてはほとんど何も報じない、論じないという形の“偏向報道”にすでに慣れ浸りきっている日本の報道機関に“良心=本来持っているべき報道精神=の回復”を求めることはもうできないのでしょうかね?
  いやいや、報道機関がどうであろうと、結局は、「個々の国民が“筋を通して考える”ようにならなければ!」ということですよね。
  「卑劣・卑怯な主張で国民を煙に巻くことが政治の本道だと狂信している“世界の笑われ者”安倍晋三自民党の政権にこれ以上はたぶらかされないように、国を愛する日本国民は、なんとしても、ならなければ!」ということですよね。
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  【第313回 こんな悪文を書いているようでは…】(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20140521/1400616891
  【第272回 “悪文”が日本人をおかしくする】(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20130330/1364597242
  【第266回 「つなげられない」症候群】(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20130129/1359413241
  【第253回 日本語が貧弱になりつづけている】(http://d.hatena.ne.jp/kugen/20120928/1348785449
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