安倍晋三が日本を破壊し続けている  10

 

  過去の記事から : 自己表現力が不足しているという点では、日本の政界も負けていません。日本はいまだに国際政治というものが分かっていません。勢いが余って排他的な愛国主義に走ってはなりませんが、言うべきことを言わずに相手の顔色をうかがっているだけ、というのは国際政治ではありません。

  実際に、国際社会のどういう場面で何を口にするべきかを熟知している政治家の名をすぐに挙げることができる国民が日本に何人いるでしょう?…不幸なことです。

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 再掲載 

第81回 受信料不払いの理由=NHK古森重隆経営委員長!! 2008/04/21

  ずっと日本国外で暮らしてきましたから、NHKの受信料については、それを最後に払ったのがいつかさえも覚えていません。
  (NHKのホームページで調べれば簡単に分かることでしょうが)現在の月額受信料がいくらなのかも知りません。

  受信料の徴収率をどう上げるかが再び大きな問題になったのは昨年でしたよね。
 あのころ、受信料を払わない人びとがどれぐらいの割合でいるのか、それぞれどんな理由で支払いを拒否しているのか−などについて、NHKは国会にちゃんと報告していたはずですが(自分には関わりのないことと、関心が薄かったのでしょうね)その資料を見た記憶もありません。
  つまり、NHKに受信料を支払わないのがどんな人びとなのかについては見当もついていなかったわけです。
  ところが…。

  NHKには経営委員会というのがあるのですね。一般企業の役員会に当たるのでしょうか。
  その委員会の委員長をいま務めているのは、富士フイルムホールディングス社長の古森重隆という人物だそうです。
  古森委員長についても事前の知識はまったくありませんでしたが、最近の報道を見る限り、この人は、どうも、受信料不払い者に新たに不払いの理由を与えることを趣味にしている人物のようなのです。

  東京新聞によると…

  まず昨年九月 : <選挙期間中の放送について「歴史ものなど微妙な政治的問題に結びつく可能性もあるため、いつも以上にご注意願いたい」と発言し、これに当時の橋本元一会長が反発。識者らも「編集権への介入」と指摘するなど物議を醸した>といわれています。

  ことしになって : 海外向け国際放送は「国益を主張すべきだ」と発言したことに絡んで呼び出された国会で3月、<国際社会では『あなたの意見は何ですか』と言われる。(国際放送で)外国の人が知りたいのは、日本が国家としてどう考えているかということ>と主張しています。

  さらに、上の主張を支えるものとして : <「国益と言うとナショナリズムに結び付きやすいが、国民の大多数のためになること」と説明。また、「個別の番組について言っているわけではなく、あくまでも一般論」とし、編集権への介入には当たらないとの考えを強調した>そうです。

  この古森という人物には<報道の中立性を保つ>という考え=思想がまったくありません。
  それがないから、経営委員長が番組内容に口出しして影響を与えようとしていることの弊害がまったく見えていません。
  <微妙な政治的問題に結びつく可能性>というのは、結局は、現政権のものとは異なる=野党寄り、あるいは、外国寄りの=考えや思想をその“歴史もの”の中で表現されてはかなわない−ということにほかなりません。
  番組内容に介入しようという姿勢がここには“これ以上はない”というほど明らかにされてますよね。

  この人物はまた、“国益”ということをごく矮小化させて考えています。それがいかに長期のものであろうと、一政権の政策はあくまでも一時的な政策であって、“国益”そのものを反映しているとは限りません。
  政権が変われば変更されるような政策を“国益”を代表するものだと強弁するのは国家(民族)主義者の危険な得意技です(共産党が一党支配する中国が党の政策を“国益”と同一視して反対者の存在を許さない姿勢を思い出せば分かるでしょう)。
  現に<国際番組基準の第一章一般基準の2には、「内外ニュースを迅速かつ客観的に報道するとともに、わが国の重要な政策および国際問題に対する公的見解ならびにわが国の世論の動向を正しく伝える」と規定されている>ということです。これを曲解しようというのが古森委員長の基本的な(地位を利用した悪質な)姿勢です。

  <日本が国家としてどう考えているかということ>というのもおかしな考えですよね。
  まず第一に、“国家”の考えというのはすでに憲法に規定されています。その精神を国際社会に伝える−ということなら異を唱える理由はありません。
  ですが、古森委員長の頭にあるのは、そうではなく、あくまでも“現政権の政策”にとどまっています。この人が憲法の“け”の字にさえ言及していないことでそれが分かります。
  第二に、<日本が国家としてどう考えているか>などということがNHKに分かると古森委員長は本気で信じているのでしょうか?そんなことをNHKが決めていいと?

  <国益と言うとナショナリズムに結び付きやすいが、国民の大多数のためになること>ですって?
  国家(民族)主義者は、歴史上、常に<国民の大多数のためになる>と主張して悪政を正当化してきました。
  一政党(政権与党陣営)の政策=国益=国民大多数のため?
  古森委員長の考えはほとんどファシストのものです。
  公正で自由な報道という考えとはまったく相容れないものです。
  少数意見の尊重などという考えは微塵もないのです。
  報道に関する考えは現中国政府と同類なのです。

  予算を承認してもらうという形で国会(多数政党)に従属させられる危険がNHKには常にあります。そのNHKがいま、古森というような、現政権べったりの国家(民族)主義者を経営委員長にしているのです。
  国際放送だから−と軽く見てはいけません。ここでこんな介入を許すと、国内放送でも似たことが遅かれ早かれ起こります。
  こんなあからさまで悪質な“介入”を見過ごしてはなりません。

  受信料をNHKに払わない人がいる…。
  その理由の一部が分かったように思えます。